料理研究家・荻野恭子さんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)にゲスト出演。世界各国の料理、中でもウクライナやロシアの料理が大好きだという荻野さんが、それぞれの食文化、ビーツの栄養について紹介した。
荻野さんは各種の料理学校で“世界の料理”を学び、1974年からはロシアをはじめ、イラン、トルコ、中国、韓国など、ユーラシア大陸の50か国以上を訪問。現地の家庭で料理を習い、食文化を研究している。
■世界の食文化に魅了されて
上柳:“世界の料理”と聞くと、イタリア料理とかフランス料理とかを思い浮かべますが、荻野さんは、「あの時代に、女性があそこに行ったの!?」というような国に行っていらっしゃって。
荻野:そうですね(笑)。日本ではもちろん、日本料理、西洋料理、中華料理も学んで。ある程度の基本がないと、他の国に行っても困るのでね。
上柳:なぜ秘境に行かれたんですか?
荻野:パリとかニューヨークに行っても、あまり日本と変わらないかなと思って。でも、秘境なら生活の知恵が凝縮しているだろうなと思って行きました。
上柳:世界65か国の食の旅を続けている荻野さん。最初に行ったのはハワイだそうですが、その次からは中国・河北省とか、ちょっと珍しい所に行って。30代ではソ連に何回も行って、ソ連からロシアに変わった後も何回も訪ねたそうですね。
荻野:旧ソビエトは15か国あって何回も周りました。
■料理の先生は、現地の“主婦”
上柳:中学の先生に連れて行ってもらったロシア料理店の「ピロシキ」と「ボルシチ」に感動して、そこからロシア料理にハマったのだそうですね。
荻野:本物のボルシチとピロシキってどんなものなのかな? と思って。あちらの主婦の方に料理を教わって。
上柳:えっ! 一般の方々の生活に入って、現地の食を学んだのですか?
荻野:はい、だからホームステイまでさせていただいて。とにかく、その食のルーツを知りたいというのが目的でした。
上柳:そんな、大好きなロシア料理が……。ロシアのウクライナ侵攻があって、ちょっと悲しいですよね、自分が好きだった国々がそういう風になっているのは。
荻野:そうですね、凄くお世話になったから、ロシアとか、ウクライナとかっていう感情ではないんですよね。皆さんにお世話になったので。
上柳:今は国境線があって土地の取り合いをしているけれど、荻野さんにとっては、豊かな食文化を生み出してくれた一つの広い地域ですものね。
■“ヨーロッパの食料庫”ウクライナ
荻野:ウクライナは本当に食材が豊かでおいしくて。「ヨーロッパの食料庫」と言われているぐらいですから。クリミア半島はぶどうがたくさん取れて、甘口のワインがおいしいです。
上柳:はい。
荻野:ハーブとかビーツは地中海沿岸の作物なので、オスマン帝国がウクライナ侵攻した時、おそらく入って来たと思うんです。陸続きなので、取ったり取られたりという長い歴史があって。
上柳:もちろん、取ったり取られたりというのは、そこに住んでいる人にとってはえらい迷惑な話だけど、いろんな食文化が入ってきたのですね。これまでに荻野さんが訪ねて行った地域が、戦場として活字で見たりしたんじゃないですか?
荻野:そうですね。昔、ウクライナのオデッサという所で、普通の家庭で料理を教わりました。
上柳:写真で見ましたが、きれいな街ですよね。
荻野:そう、そうなんですよ。ウクライナは凄くきれいな街で。キーウもきれいでした。豊かで食べ物もおいしく、私がずっとユーラシアを歩いて、ライ麦パンが一番おいしいなと思ったのはウクライナでした。
■料理を通じて触れた各国の人びと
上柳:ウクライナやロシアの主婦の方々と、料理を通じて一緒に過ごして。今は皆さんどうしているんだろうなと思いますよね。
荻野:そうですね、元気でいてくれればいいなと思います。
上柳:国民性といいますか、ウクライナの方はどんな感じの方々でしたか?
荻野:優しいし意外と穏やかで。
上柳:ロシアの方は?
荻野:同じなんですよ、そんなに変わらないです。市民の人達はね、あくせくしていないし。広い大地で育っているのでね。
■栄養たっぷり! 世界中で人気の野菜「ビーツ」
荻野:「ビーツ」は地中海沿岸の作物で、形はカブみたいなんですけど、実は大根で。砂糖大根(テンサイ)と同じ仲間です。そのまま生で食べたら、ちょっと土くさい。
上柳:どうやって食べるのですか?
荻野:海外では、一個丸ごと茹でて「マリネ」にしたり。「ボルシチ」では、生のビーツをスライサーでカットして入れます。私はずっとユーラシアを歩いて食べていましたが、なんか体が軽くなるような気がするんですよね。ビーツはものすごく人気で、世界中で食べられていますよ。
上柳:日本にビーツはあるんですか?
荻野:最近は関東近郊でも作っているんですよ。あと、乾燥された“ビーツのドライチップ”があります。
上柳:このビーツのドライチップは、どうやって使うのですか?
荻野:もちろんボルシチにも使えるし、ドレッシングにしてもいいですよ。あと、ポリポリとそのままでも食べられますよ。
上柳:(試食して――)あっ、ちょっと甘みがあるんですね!
荻野:オリゴ糖の甘さがあるからおいしいですよね。生で食べるとちょっと土くさいですけど。
上柳:ああ、だんだんと土の香りがしますね。
荻野:ドライチップならそのまま食べられるので、『ちょっと栄養不足かな?』みたいな時に結構いい素材だと思います。
上柳:ビーツは栄養としては、「ビタミン」「ミネラル」が豊富で「葉酸」も取れる。
荻野:貧血の方には特におすすめです。
上柳:そして「食物繊維」もたくさん入っているから腸にもいい。「ポリフェノール」もたっぷり入っているそうです。
■ウクライナの郷土料理「ボルシチ」とロシアの郷土料理「シチ」
上柳:中学の時に「ボルシチ」と出合って感動したそうですが、どういう料理なのですか?
荻野:「ボル」は“赤いビーツ”のことで、「シチ」は“キャベツの漬物”乳酸発酵漬けのことをいうんですよ。
上柳:ほう。
荻野:ロシアの郷土料理というと、「シチ」というキャベツ乳酸発酵漬けのスープ。で、ウクライナの郷土料理が「ボルシチ」という赤色のビーツのスープなんです。
上柳:どうやって作るのですか?
荻野:ビーツチップを使えば簡単です。水の中にベーコンなどの肉系の食材を入れて、キャベツ、玉ねぎ、にんじん、ビーツチップを入れて煮込み、塩とコショウで味付け。ヨーグルトやサワークリームを入れると、コクと酸味が出ておいしいです。あとは、「ディル」というハーブも入れたり。さらっとしていて食べやすく、なかなかおいしいですよ。
荻野さんは、世界各地の食文化について、また、ビーツの栄養について詳しく解説してくれた。
料理研究家・荻野恭子さんと、上柳昌彦アナウンサーの詳しいトーク内容は、「食は生きる力今朝も元気にいただきます」特設コーナーHPから、いつでも聞くことが可能だ。
番組情報
「上柳昌彦 あさぼらけ」内で放送中。“食”の重要性を再認識し、「食でつくる健康」を追求し、食が持つ意味を考え、人生を楽しむためのより良い「食べもの」や「食事」の在り方を毎月それらに関わるエキスパートの方をお招きしお話をお伺い致します。
食の研究会HP:https://food.fordays.jp/