料理研究家・栄養士の小田真規子さんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)にゲスト出演。難しいテクニックを使わずにうまさを増幅させる“放置料理”、白米と卵の正しい調理方法、小田先生が好きでよく作るという酒のつまみの作り方などを紹介した。
小田さんは誰もが作りやすく、健康に配慮した、簡単でおいしい家庭料理をテーマに、『オレンジページ』『ESSE』などの生活雑誌にオリジナルレシピを紹介。分かりやすいレシピが好評で、NHK「きょうの料理」「あさイチ」の料理コーナーに定期出演している。
上柳:先生の著書『放っておくだけで、泣くほどおいしい料理ができる』(ダイヤモンド社)の帯に「放置」=「うまさを増幅させる最強の方法」と書いてありますね。
小田:みなさん、ちゃちゃっと簡単にできておいしいものを、と思うんですけど、たっぷりの量を長い時間煮たり、たっぷりの量を長時間そのまま置くことで、意外とその素材の味わいや深みが増す、ということを提案しています。
上柳:はい。
小田:例えば、薄切り肉ではなくて塊肉を使ったら、肉をしっかり焼いたり、じっくり煮込んだりしている間に、大きい肉の塊の繊維がほぐれ、香りが出ます。同じ素材や調味でも、味わいがおいしくなっていくのが放置料理です。
上柳:それはどういう状態で置いておくのでしょうか?
小田:刺身の場合、切り身をそのまま食べると思いますが、表面をさっと湯引きして、「しょうゆ」「みりん」に漬けておきます。そうすると出来立てよりも、ちょっとじっくり馴染んだ方が、刺身のタンパク質がぷりっと固まって、食感がねっとりします。作りたてでは味わえないおいしさですよね。
上柳:どれくらいの時間、どういう状態で漬けておくといいんですか?
【刺身の漬けの作り方】
・刺身の表面をサッと茹でる。
・「しょうゆ」「みりん」1対1くらいのものを絡める。
・保存容器に入れ、冷蔵庫で半日以上放置。1~5日目ぐらいまでそのままで大丈夫。
上柳:保存容器はどういう物を用意すればいいですか?
小田:ジップ式の袋でもいいし、タッパーみたいなもので大丈夫です。冷蔵庫の中で寝かせるというか、あまり触らずに低温の中に放って置く。放置することで、冷たい冷蔵庫の中で調味料がじっくりじっくり馴染んでいくと、香りが変わったり、繊維がほぐれたり、それから全体的に水分が出てきたり。
上柳:はい。
小田:そうすることによって、食感や味わいが変わって、しっかりと味が馴染みます。やっぱり大きい塊の物はすぐに味が入らないので。1日目、2日目、3日目とぜんぜん味が変わっていきます。
上柳:へえ!
小田:冷蔵庫の中にいた時間と、じわじわとほぐれていく肉の繊維の力。こういったものを活用するとおいしくなります。
上柳:おいしそう! 食べ比べもしてみたいですね。
小田:時間がおいしくしてくれたっていうのを、一番実感しやすいと思います。
■米を洗う理由、冷蔵庫保存を勧める理由
上柳:「米」の話を伺っていきたいと思います。
小田:米は炊飯器が炊いてくれるもの、って思いがちですが、米の研ぎ方、水の温度、米の種類の選び方によっても味わい方が違います。
上柳:はい。
小田:米を上手に保存することも凄く大事で、米って乾燥物と思われがちですが、生鮮物なんです。精米した後の米の表面は凄く酸化しやすかったり、乾燥しやすかったり、米同士が擦れて粉っぽいんです。なので、そのまま炊いてしまうと、酸化した味になるので、それを落とすために米を洗います。
上柳:なるほど。
小田:それをあまりしない為に、冷蔵庫の中で保存することが大事です。
上柳:米を空いたペットボトルに入れて、冷蔵庫の中で保存するといいと、よく聞きますね。
小田:米の表面に付いている油みたいなものの酸化を防げるし、ペットボトルならこすれないので変な粉も出ません。それから冷蔵庫の中に置くと米自体が冷たくなりますよね。
上柳:はい。
小田:米が冷たければ、炊飯する時、米の表面の温度がゆっくり上がり、おいしく炊けますます。
上柳:ほう。
小田:最近は精米技術が発達しているので、米を研ぐというよりは、落とすだけで大丈夫です。
上柳:昔はワシャワシャと米も洗っていたイメージですが、ゆっくり回すくらいでいいのですね。
小田:表面の粉を落としてほしいので。粉があるとどうしても粘ってしまって水の温度がゆっくり上がりにくくなるんです。こうしたことに気を付けて、いつも通り炊飯しただけで、おいしく炊き上がりますよ。
■正しい卵の混ぜ方は「横、横、横……」
小田:卵は1個のものだと思われがちですが、卵黄と卵白の2種類の素材の組み合わせです。
上柳:確かに、言われてみればそうですね。
小田:卵黄は油分が多く、卵白は水分が多い。ですから、火を通したり混ぜ合わせたりする時にポイントがあるので、そこをマスターすると卵料理が上手になるしおいしくなります。
上柳:そのポイントとは?
小田:卵を混ぜる時、わーっと泡立てるようにする人が多いですが……。
上柳:ちゃっ、ちゃっ、ちゃっと、手際がいい感じにね(笑)
小田:はい(笑)。ですが、あまり泡立てると空気が入って、火の通りが不均一になります。なので、「泡立てないように混ぜる」ということがポイント。
上柳:卵の正しい混ぜ方、教えてください。
小田:「スクランブルエッグ」や「卵焼き」とかも全部この混ぜ方がおすすめで、ボールに卵を割り入れたら、卵黄を箸先でツンツンと崩します。そうすると卵黄の油分と、卵白の水分が融合し始めます。そうしたら、箸先をボールの底に付けて、だいたい30~40回ぐらいを目安に、横、横、横……と混ぜます。
上柳:回して混ぜないのですね。
小田:こうすれば空気が入らないので、均一に焼けます。
上柳:へえ!
小田:それから調味料について。卵を割りほぐしたら、すぐに塩や砂糖を入れてしまう方が多いですが、そうすると調味料が混ざりきりません。
上柳:はい。
小田:卵黄と卵白をちゃんと均一に混ぜてから、塩や砂糖を入れると、いつもの卵焼きの焼き色が均一に付いたり、味が馴染みます。最初の混ぜ方で結構味が変わりますよ。
■小田先生が好きな酒のつまみ「焼き野菜」
上柳:ちなみに、先生は何料理が得意なんですか?
小田:私が一番得意なのはつまみです(笑)
上柳:おいしそうなおつまみ、作られそうですね(笑)。何か簡単にできそうなものってありますか?
小田:今一番作ることが多いのは「焼き野菜」です。
上柳:焼き野菜!
小田:今の時期(春)って、キャベツ、菜の花、ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜がとっても増えていて。私はおつまみを食べる時も『体にいいか』『お酒を飲みながら肝臓を労われるかどうか』と考えることが多いんです。
上柳:なるほど。
小田:そうすると野菜が欠かせなくて。ベータカロテン、ビタミンC、ビタミンE、食物繊維が取れると思うと、焼き野菜に限ります!
【焼き野菜の作り方】
・フライパンを温める前に、お好みの油(サラダ油、オリーブオイル、ごま油など)を入れる。
・「キャベツ(くし切り)」「菜の花(そのまま)」「ブロッコリー(小房に分ける)」などの野菜を用意して、フライパンに乗せる。
・「塩」を少し振り入れる。
・蓋をして中火で2~3分ぐらい焼く。
・野菜に焼き色が付いたら蓋を開け、野菜の反対側も焼く。
・お皿に盛り付け。
・カレー粉、柚子胡椒、粒マスタードなど好きな調味で召し上がれ。
小田:特にアブラナ科の野菜は焼くとおいしくて。菜の花の葉っぱはちょっと韓国海苔みたいな感じになるし、キャベツも焼くと香ばしいし、水分が脱水されるので食感が増します。
上柳:うん、うん。
小田:焼き野菜がちょっと冷めてしまったら、例えばレモンとかを絞って食べたり。長時間自分を飽きさせないでお酒を飲めますよ。
今回、小田先生が教えてくれたことはどれも、特別な材料や、難しいテクニックは不要。混ぜ方、保存方法、調味料を入れるタイミングを改めて見直したり、肉や魚を味付けして“放置”するだけで、うま味や香り、食感も変化して格段においしくなったりする。アドバイスを参考に、さらなる料理上手を目指してみては。
料理研究家・小田真規子さんと、上柳昌彦アナウンサーの詳しいトーク内容は、「食は生きる力今朝も元気にいただきます」特設コーナーHPから、いつでも聞くことが可能だ。
番組情報
「上柳昌彦 あさぼらけ」内で放送中。“食”の重要性を再認識し、「食でつくる健康」を追求し、食が持つ意味を考え、人生を楽しむためのより良い「食べもの」や「食事」の在り方を毎月それらに関わるエキスパートの方をお招きしお話をお伺い致します。
食の研究会HP:https://food.fordays.jp/