医師で作家の鎌田實(みのる)先生が、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)にゲスト出演。日本人が不足している野菜やタンパク質を簡単にとるための工夫や、絶品レシピ、野菜の健康効果を聞いた。
鎌田先生は、東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任。30代で院長となって潰れかけた病院を再生、長野県を長寿で医療費の安い地域へと導いた。現在は諏訪中央病院名誉院長、地域包括ケア研究所所長をする一方、チェルノブイリ原発事故後の1991年より100回を超える医師団を派遣し、約14億円の医薬品を支援。2004年からはイラクの4つの小児病院への医療支援を実施、 難民キャンプでの診察を続けている。
番組では、鎌田先生の著書『医師が考える 楽しく人生を送るための簡単料理 鎌田式 健康手抜きごはん』(集英社)を参考に、栄養バランスのとれた料理を簡単に作るコツを聞いた。
上柳:先生は本の中で「肉豆腐」のレシピを紹介していますが、こんな簡単においしそうに作れるとは思っていなかったです。
鎌田:そうでしょう?(笑) 実はこれ、黒柳徹子さんにも教えたんですよ。
上柳:そうなんですか!「肉豆腐」というと、なかなかいろんな準備をして作るのが大変そうに思うのですが、これが簡単なんですよね。
鎌田:そう! 「牛肉の大和煮缶」を使うから簡単で。
上柳:先生は牛肉の大和煮缶が相当お好きですよね。
鎌田:牛肉の大和煮を丸ごと使って、汁まで捨てないことが大事です。
【肉豆腐の作り方】
・「牛肉大和煮缶」「高野豆腐」「カットしめじ」「カットごぼう」「カット小ねぎ」を耐熱容器に入れる。
・水大さじ2、「チューブのおろし生姜」を好みでかける。
・ラップをかけて電子レンジ(600W)で2分温める。
・高野豆腐をひっくり返して、もう一度ラップ。余熱で3分蒸らしたら出来上がり。
鎌田:高野豆腐を使うところもポイントで、高野豆腐はタンパク質の塊なんですよ。しかも「レジスタントプロテイン」と言って、悪玉コレステロールや血糖値を下げてくれる作用があります。
上柳:人間ドックに行って気になる項目ですよね。
鎌田:生姜も、おろし生姜のチューブを。これ、便利ですよね。男性なんかは、しょうがをすると聞くだけで料理が嫌になっちゃうんです。でも、カット野菜とかを入れて電子レンジでチンするだけなのに、これがうまいんですよ!
上柳:飲み屋さんでこれが出てきたら、「うわあ~、女将さんいいのを作るね!」って感じの見た目ですよね。
鎌田:一人でご飯を食べる時とか、奥さんが今日はどこかへ行くという時とかにこれを作って、半分はビール一本飲む間のお供に。残りはご飯の上にこの肉豆腐をドンと入れると、肉豆腐の汁がしみてね、おいしいですよ。
上柳:これが3分でできるの? って思いますよね。奥さんも「あなた、これをよく作ったわね」って言いそうですよね。
■料理は「手を抜いてもいいんだよ」
鎌田:私がこの本を作った一つの根拠に、男性が定年退職したら、奥さんも週1回は主婦の定年退職をしたらいいんじゃないかって。
上柳:子育てとか、料理を毎日作っていた奥様も休ませてあげよう、と。
鎌田:「今日は俺が作るよ」と言ってこういうのを作ってあげたら、奥さんもびっくりして感動するし、本当に優しい男性だったら「友達と食べに行っておいでよ。俺は今日、自分の事をやるから」とか言ってみるとか。
上柳:定年退職した時ではなくても、早い段階から、若い頃からそういうことをやってもいいんでしょうね。
鎌田:そうですね。それから、料理は「手抜きでもいいんだよ」と。手抜きというのは現代の知恵で、罪悪感を持つ必要はないと思っています。自分の時間を作るために、手を抜く日があってもいいのではないかと。
上柳:おそらく先生は、この本はご高齢の方とか、ご夫婦二人で食事をすることが多くなった方々のために書いたのだろうと思いますが、一人暮らしをしている若者にも勧めたいなと思いました。
■みんな「タンパク質」が足りていない!
鎌田:実はこの「肉豆腐」、1人分でたんぱく質を40.5グラムもとれます。
上柳:本にもたんぱく質量が書いてありますね。
鎌田:これがね~、医師の僕が料理本を作った一番の狙い。タンパク質が足りない!
上柳:はい。
鎌田:厚生労働省は、1日でだいたい、壮年者は50グラム、老人が60グラムのタンパク質が必要だって言っています。そこまで食べられていない人が結構いるんですが、この肉豆腐なら40.5グラムものタンパク質をとれます。
■野菜の「抗酸化力」
上柳:自宅にいる時間が増えると炭水化物の食事が多くなっちゃって、野菜はどうしても不足しがちで。
鎌田:最近は「認知症、うつ病も脳細胞の慢性炎症じゃないか?」って言われていて。例えば“がん遺伝子”というのが見付けられていて、その遺伝子を持っているにも関わらず、がんにならない人がいるんです。
上柳:はい。
鎌田:最後のトリガー、引き金を引いているのは慢性炎症じゃないのか、と。がん遺伝子があるだけじゃなくて、さらにそこに慢性炎症が加わるとがんになっていくのではないかと。で、それを防ぐためには「抗酸化力」が大事で、野菜は「抗酸化力」というのがあります。野菜をとるかどうかが、多くの生活習慣病に関係しているわけです。健康のためには「野菜を1日350グラムとりましょう」と提唱されています。
上柳:野菜350グラムって結構な量ですよね?
■「具だくさん味噌汁」「野菜ジュース(無糖)」で野菜をとる
鎌田:そう、だから工夫が必要なわけです。僕が勧めているのは「具だくさん味噌汁」。あと、「野菜ジュース」。みなさん、ジューサーとかミキサーを買っても、初めは使うんだけどみんな途中で嫌になってしまうようで。
上柳:掃除がちょっと面倒くさいな、ってね。置いたままになるんですよね(笑)
鎌田:それをもう1回取り出してほしいですね。僕は今日も野菜ジュースを自分で作って飲んで来ました。だいたいコップ1杯分の野菜ジュースで、野菜220グラムくらいになります。そこに「オメガ3」の油を入れたり、少しヨーグルトを入れたり。野菜はその時の気分でプラスするんですけども、朝の野菜ジュースで220グラムとればあとは簡単。煮物
上柳:ほう。
鎌田:朝に具沢山味噌汁か野菜ジュースを飲めば、野菜1日350グラムをとりやすいですよ。
上柳:朝の野菜が大事だと。市販の野菜ジュースでもいいわけですか?
鎌田:はい。砂糖が入っていないことだけ確認できればOKです。
上柳:野菜だけの甘さでおいしい野菜ジュース、最近はいっぱいありますもんね。
中高年の食事の欠点について「タンパク質、野菜が足りていない!」と述べた鎌田先生。ただ、私たちは健康的でおいしいものを作ろうとすると、どうしても難しく考え、手間暇かけて作り、そして料理が苦痛に感じることも。先生が「手抜きでいいんだよ」「手抜きというのは現代の知恵で、罪悪感を持つ必要はない」と語っていたように、いつものレシピをちょっと見直して工夫して、料理を楽しんでみては。
医師・鎌田實先生と、上柳昌彦アナウンサーの詳しいトーク内容は、「食は生きる力今朝も元気にいただきます」特設コーナーHPから、いつでも聞くことが可能だ。
番組情報
「上柳昌彦 あさぼらけ」内で放送中。“食”の重要性を再認識し、「食でつくる健康」を追求し、食が持つ意味を考え、人生を楽しむためのより良い「食べもの」や「食事」の在り方を毎月それらに関わるエキスパートの方をお招きしお話をお伺い致します。
食の研究会HP:https://food.fordays.jp/