日本の政治報道がワンパターンである「2つの理由」
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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が1月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。欧州やアメリカなど、岸田総理の5ヵ国歴訪について解説した。
岸田総理が現地13日にバイデン大統領と会談へ
岸田総理大臣は現地時間1月13日午前(日本時間14日未明)、ワシントンのホワイトハウスでアメリカのバイデン大統領と会談する。日米同盟の深化を確認し、経済安全保障の協力強化で一致する見通し。
飯田)岸田総理はヨーロッパ、北米大陸を歴訪中で、いよいよアメリカ訪問となります。
日本の報道について
宮家)日本の報道はワンパターンでしょう。総理が訪米する、支持率がどうした。政権浮揚のためにこれをアピールして金をばら撒く……などということを言っているわけです。しかし、どうでしょうか。なぜこんなことが起こるかと言うと、理由が2つあります。
総理の訪米などを官邸の記者クラブが仕切る ~内政に絡めて外交を報道
宮家)1つは、総理の訪米などはおそらく、官邸の記者クラブが仕切るからです。
飯田)取材はそうですね。
宮家)そうすると外報部、国際部からすれば、「外交の話なのに」と思います。でも政治部の記者からすれば、内政のことの方に関心がある。だから、どうしても外交も内政にひっかけて報じる傾向があるのです。
飯田)政治部の記者は。
宮家)1950年代から同じです。もしかすると明治時代からそうなのかも知れない。そういう流れがずっとあります。
飯田)いまのような報道が。
長編動画である外交・国際情勢を静止画から伝えてしまう日本の報道
宮家)2つ目の理由は、外交は静的なものではないからです。外交問題はもっとダイナミックな歴史の流れがあり、過去の経緯があるものです。私は外交、もしくは国際情勢は長編動画だと思います。そのうちの「何年何月何日の午前中」というように切るでしょう。これが静止画です。
飯田)報道するときに。
宮家)政治部の人たちはきっと静止画を見ているのでしょう。もちろん勉強はしていると思いますが、静止画は大きな流れ、動画のなかの1コマにすぎないということです。その切った静止画を見て「ああでもない、こうでもない」と言うのは、やはり違うだろうと思います。
飯田)違う。
宮家)では、大きな流れを私がどう見ているかと言うと、1945年以来、これほど日本周辺で安全保障環境が激変したことはないのです。しかもこれは元に戻らない。不可逆的に変わってしまいました。そして日本は、たまたまですけれども、サミットの議長国です。広島で行われるから地元がどうのとか、そういう話ではなく。
飯田)そういう国内政治ではなくて。
宮家)それはそれでいいのですが、本筋は何かと言ったら、日本の外交が変わる。そして日本にとっては、国際社会の1丁目1番地として日本に対する理解も持ってもらった上で、リーダーシップを取らなければいけないのです。
飯田)日本がリーダーシップを取る。
宮家)自分たちの周辺でこんなにも安全保障環境が変化しているときに、自分たちが受け身になるなど、あり得ません。日本の問題ですから。
飯田)そうですね。
宮家)ですから、誰が総理になろうと、やらなければいけないことがたくさんあるわけです。手始めは何かと言えば、議長国ですからサミット諸国を回る。これは当たり前の話です。それなのにいままでと同じパターンで、動画の長い流れを見ずに静止画だけでものを書くというのは、いかがなものかとずっと思っていました。
飯田)静止画だけでものを書くことは。
宮家)マスコミ主要社はそんなことはないと信じたいけれども、ネット上にはいろいろなことが書いてあるわけです。もう、そういうことはやめたらどうかと思います。岸田さんがいまやっていることが、外交が日本にとってどういう意味を持つのか。内政の問題ではなく、「日本の長期的な国益のために何をしなければいけないか」というところから切っていただきたいと思います。
過去の積み重ねが結果として出てくる ~その部分を見るべき
飯田)内政の流れのなかで外交を見ようとすると、その場その場で、例えば今回の日米首脳会談では岸田さんが何を取ったというような、「勝った負けた」の話になってしまう。
宮家)何も取らないかも知れないし、何も与えないかも知れません。あくまで静止画なのだから。しかし、動画で考えたら、必ずいまやっていることが何ヵ月後、何年後かに活きるのです。もしくは、いままでやってきたことの成果が出てくる。そうした積み重ねの成果が出てきて「内政の支持率が上がりました」とか、そういう話ではないだろうと思うのです。
飯田)動画で考えれば。
宮家)静止画ではなく、日本が過去の安倍、菅政権や岸田政権も含め、進めてきた積み重ねが結果として出てくるわけです。その部分をきちんと見てもらわないといけません。そうすると政局記事は書けなくなってしまうのかも知れませんが、そうではなく、書くことが他にもたくさんあるだろうと思います。
環境の変化によって「日米2プラス2」に積極的になったアメリカ
飯田)今回の首脳会談だけではなく、前段で何が起こっているかも大事です。直前で言うと、日米2プラス2があります。外務・防衛担当閣僚による「日米安全保障協議委員会」。
宮家)90年代に2プラス2を始めたとき、私は北米局にいたのですよ。
飯田)そうだったのですね。
宮家)あのときは冷戦が終わった形になっていて、日米安保をどうするのかという時期です。
飯田)『歴史の終わり』などという本が流行った時代でした。
宮家)防衛大臣と外務大臣でアメリカの国務長官、国防長官と会談し、新たな動きをつくろうとしていた我々の先輩がいたわけです。当時、2プラス2をつくるのは大変でした。「国防長官が忙しいので副長官でもいいか」などと言われましたが、それでは2プラス2ではなく、2プラス1.5ではないかと。
飯田)確かにそうですね。
宮家)「2プラス2にしてください」と言ったら、「時間的に無理ではないかな」などと言われました。実現すること自体が大変だったのですよ。
飯田)そもそもパートナーとして見られていなかったのですか?
宮家)(パートナーに)なったのだけれど、テロとの戦いの前ですから。冷戦が終わって方向性が変わりつつあった時期なので、そういう状況ではなかったのです。
飯田)超大国アメリカという時代。
宮家)しかし、いまは2プラス2を行うのは当たり前だし、アメリカからは必ず大臣が出てきます。最初のころに比べれば大きく変わりましたね。それだけ日本とアメリカの関係が緊密になった。なぜかと言うと、環境が変わったからなのです。
飯田)東アジア全体の環境が。
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