アルツハイマー新薬を国内申請 「現行の健保制度を圧迫する恐れ」辛坊治郎が指摘

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キャスターの辛坊治郎が1月17日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。製薬大手エーザイが16日、アメリカのバイオジェンと開発した認知症のアルツハイマー病新薬「レカネマブ」の製造販売承認を厚生労働省に申請したことをめぐり、「現行の健康保険制度を圧迫する恐れがある」と指摘した。

アルツハイマー新薬を国内申請 「現行の健保制度を圧迫する恐れ」辛坊治郎が指摘

エーザイと米バイオジェンが開発し、米国で「レケンビ」の名称で発売するアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」[エーザイ提供] 写真提供:時事通信社

製薬大手エーザイはアメリカのバイオジェンと開発したアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」の承認を厚生労働省に申請した。年内の承認取得を目指している。

辛坊)高齢者にとっては朗報ですね。ただ、「朗報」だけでは済まされないと思います。現行の健康保険制度を圧迫する恐れがあるからです。

認知症の一種、アルツハイマー病は脳内に蓄積したタンパク質「アミロイドベータ」が原因で進行します。新薬レカネマブは、既にアメリカでは承認され、アメリカでの標準的な価格は1人当たり年2万6500ドル(約340万円)とされます。体重に応じた量を点滴で投与し続けるのですが、1年半後に症状の悪化を27%抑えられたそうです。微妙なところです。つまり、原因であるアミロイドベータの蓄積を完全に止められるわけでも、認知症が治るわけでもないからです。

とはいえ、現実的にはアルツハイマー病だと診断されれば、何としてでも進行を抑えたいと思うでしょう。抑止効果の有効性は認められているわけですから、ワラにもすがる思いになるはずです。ただ、日本でアルツハイマー病の高齢者は百万人単位で存在します。その人たちに年間約340万円かかる新薬レカネマブを健康保険制度でまかなうとなると、その財政的な圧迫はこれまでの薬とは次元が異なることが想像できます。

ちなみに、アメリカでは基本的に民間の医療保険で運用されていますから、新薬レカネマブが対象となっているような医療保険に入っている人は使ってもらえます。ところが、多くの人はそうした医療保険には入っていませんから、使ってもらえないわけです。もっと極端なことをいうと、ヨーロッパなどには医療費無料の国があります。しかし、医療費無料の国ではそもそも高額医療は適用になりません。日本でもかつて、肺がんの特効薬が認可されましたが、使用は自費でした。

新薬レカネマブを開発したエーザイは、この薬が高額であることについて、症状の進行を遅らせることにより、薬以外でもかかる費用などが軽減できると主張しています。しかし、そうした数字は厳密に計算できるのでしょうか。また、費用対効果だけで議論を進めてよいかも疑問に思います。

日本では今、新薬レカネマブに限らず、さまざまな新薬が開発され始めています。患者やその家族は健康保険が適用できるようにしてほしいと思うでしょうが、果たしてその全てを適用できるのでしょうか。そこには、日本の健康保険制度が維持できるかという議論が出てくると思います。

新薬レカネマブは、おそらく年内にも国内承認されるでしょう。ただ、今回の新薬レカネマブの国内申請は、これからの高額な新薬の費用対効果をどのように考えるか、そして健康保険適用の可否・是非など、皆が悩む時代の突入を告げるニュースだという認識を持っていたほうがいいと思います。

番組情報

辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!

月~木曜日 15時30分~17時30分 

番組HP

辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)

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