【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1101回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画・ドラマを発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、現在公開中の『スクロール』と『金の国 水の国』をご紹介します。
映画館で観たい!『スクロール』 ~過去とは、遠ざかっていくだけのものなのだろうか……
YOASOBIの大ヒット曲「ハルジオン」の原作者としても知られる橋爪駿輝の作家デビュー作「スクロール」。
5作品からなる短編集は現代を生きる若者たちのリアルな感情が描き出されており、若い世代からは「自分たちの小説」だと共感を呼んでいます。
そんな人気青春譚が、ついに実写映画化。理想と現実のギャップに悩む4人の若者による青春群像劇が誕生しました。
『スクロール』のあらすじ
就職はしたものの、上司のパワハラに鬱屈とした日々を送る<僕>。<僕>の学生時代の友人で、「毎日が楽しければそれでいい」と刹那的に生きているユウスケ。
2人のもとに、友人の森が自殺したという報せが届く。突然の出来事をきっかけに、“生きること”、そして“愛すること”について見つめ直す2人。
やがて、<僕>のSNSへの書き込みに共鳴する<私>や、ユウスケとの結婚を望む菜穂の思いも交錯していき……。
『スクロール』のみどころ
<僕>役は北村匠海。そして、ユウスケ役は中川大志。映画・ドラマへの出演が途切れることなく活躍している人気俳優が、ダブル主演を務めました。
旧知の仲でありながらも、本格的な共演は今作が初めてという2人。自らの前に立ちはだかる“絶望”に触れ、それでも人生のなかに“光”を見出していく様はとても生々しく、そのエモーショナルな演技は必見です。
また、<僕>とユウスケに絡んでいく女性を演じた<私>役の古川琴音、菜穂役の松岡茉優も、実に魅力的。社会の抑圧のなかでもがきながらも、いまを懸命に生きようとする4人の姿が、鮮やかに繰り広げられます。
短編集をひとつの作品として再構築することで、物語同士のつながりがより明確になった感がある本作。その風合いは、まるでスマートフォンのカメラロールをスクロールするように、彼らの人生の断片に触れているよう。
こうした映画体験に、これまでの映像作品とはひと味違った新鮮味を覚える人も多いのではないでしょうか。
青春の出口に立った登場人物たちが見つけ出す、“明日への入り口”とは。是非スクリーンで、彼らの人生を体感して。
コチラも映画館で観たい!『金の国 水の国』 ~おっとり姫とお調子者青年が結婚!?
「このマンガがすごい!」で2017年・オンナ編1位に輝いた、岩本ナオの人気漫画が、待望のアニメーション映画となりました。
舞台は、100年もの間、断絶している2つの国。“金の国”に住むぽっちゃりお姫様サーラと、“水の国”で暮らす貧乏建築士ナランバヤル。2人は国の思惑に巻き込まれ、“偽りの夫婦”を演じているうちに、恋に落ちてしまう。
そして彼らがついた“やさしい嘘”は、やがて国の未来をも変えていくことに……。
どんな状況下に置かれても、自分ではなく周囲の誰かのことを思う。そんな主人公たちの清らかさが、観る者の心を清々しいまでに浄化してくれる本作。ドロドロの人間関係に疲れた人、いますぐ癒されたい人に超オススメの感動作です。
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『スクロール』
2023年2月3日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
出演:北村匠海、中川大志、松岡茉優、古川琴音、水橋研二、莉子、三河悠冴、MEGUMI、金子ノブアキ、忍成修吾、相田翔子
監督・脚本・編集:清水康彦
脚本:金沢知樹、木乃江祐希
原作:橋爪駿輝「スクロール」(講談社文庫)
主題歌:Saucy Dog「怪物たちよ」(A-Sketch)
配給:ショウゲート
(C)橋爪駿輝/講談社 (C)2023映画「スクロール」製作委員会
公式サイト https://scroll-movie.com/
『金の国 水の国』
大ヒット公開中
声の出演:賀来賢人、浜辺美波、戸田恵子、神谷浩史、茶風林、てらそままさき、銀河万丈、木村昴、丸山壮史、沢城みゆき
原作:岩本ナオ「金の国 水の国」(小学館フラワーコミックスαスペシャル刊)
監督:渡邉こと乃
脚本:坪田文
音楽:Evan Call
テーマ曲(劇中歌):「優しい予感」「Brand New World」「Love Birds」
Vocal:琴音(ビクターエンタテインメント)
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)岩本ナオ/小学館 (C)2023「金の国 水の国」製作委員会
公式サイト https://wwws.warnerbros.co.jp/kinnokuni-mizunokuni-movie/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/