悪質なコメント投稿者が「半分しか減らない」ヤフコメの「構造」 ~電話番号登録制にしたものの

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ジャーナリストの佐々木俊尚が3月1日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。電話番号登録制の導入で悪質な利用者が半減したヤフコメについて解説した。

悪質なコメント投稿者が「半分しか減らない」ヤフコメの「構造」 ~電話番号登録制にしたものの

ヤフーのポータルサイト=2009(平成21)年8月19日、東京都(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

電話番号の登録制で悪質なヤフコメ投稿者が半減

ヤフーは2月27日、「Yahoo!ニュース」のコメント欄への投稿について、2022年11月に電話番号の登録を必須化した結果、悪質な利用者が56%減ったと発表した。もともと不適切な投稿を繰り返すアカウントに対して投稿できなくする「投稿停止措置」を取っていたが、同じ利用者が複数のアカウントを使い分けるケースがあり、対策を強化していた。

電話番号登録制にしても悪質なコメント投稿者が半分しか減らない

佐々木)逆に言うと、電話番号を登録しても半分しか減らないということですね。残り半分は電話番号を登録したまま、悪質なコメントを書き続けている。

新行)そうなりますね。

佐々木)「Yahoo!ニュース」のコメントが荒れやすいのには理由があって、それは反論されないからです。

制御が効くツイッター ~間違った非難をすると非難している側も批判されてしまう

佐々木)ツイッターでも誰かを非難して炎上させるようなことはあるのですが、一方で非難する側がおかしなことを言っていると、非難している側も批判されるではないですか。

新行)ツイッターでは。

佐々木)ツイッターでは自分のアカウントを持ちますし、常に巻き込まれるのです。ですから、あまり迂闊なことを言えない。自分が誰かを非難しているつもりでも、気付いたら逆に自分の方が炎上しているケースもあるわけです。

匿名で間違ったコメントをしても基本的に反論されないヤフコメ ~「はてなブックマーク」や「Amazonレビュー」も同じ構造

佐々木)ツイッターも日本で普及して10年くらいになりますが、だんだん制御が効くようになっているところもあるのです。ところがヤフコメは、電話番号を登録したとしても匿名であり、どこの誰だかわからない。だからコメント上では批判されるかも知れないけれど、基本的には、ほとんど反論されることはないのです。

新行)ヤフコメの場合。

佐々木)そういう構造だと荒れやすい。同じような構造なのが「はてなブックマーク」です。「株式会社はてな」が運営していて、いろいろな面白い記事をみんなでピックアップし、コメントを付けられるサービスなのですが、ここも荒れまくっています。

新行)はてなブックマークも。

佐々木)もちろんいいコメントもありますが、わけのわからない罵倒が山ほどあります。もう1つが「Amazonレビュー」です。Amazonの書籍などのレビューも酷い。Amazonでいい本を探すには、「星5つ」と「星1つ」が両方あるのを選んだ方がいいなどと言われているくらいで、批判されている方が面白い本が多いということですね。

新行)そうなのですね。

佐々木)自分の本については、「Amazonレビュー」は一切見ないようにしています。以前、星1つが付いていたので、何を書かれているのだろうと開いてみたら、「届いたのに本が破れていました」と書いてあったのです。それは私の責任ではありません。

新行)本の中身について書いて欲しいですね。

佐々木)「Amazonレビュー」も「はてなブックマーク」も「ヤフコメ」も、反論されないので書きたい放題という構造になっています。書きたい放題できるところに集まって、書きたい放題している。

なぜ電話登録してまで悪質な投稿をするのか ~ほとんどの投稿者は「自分が悪質だ」とは思っていない

佐々木)電話登録してまで、どうして書きたい放題するのかと思うのですが、本人は自分で悪いことをしているつもりはないのですよ。「悪質な投稿者が半減」とヤフーは発表していますが、投稿している人は概ね、「自分が悪質だ」とは思っていないでしょう。だいたいは正義の味方だと思っているのです。「自分は正しいことを言ってやった。これで悪い奴を成敗したぞ」と。

新行)本人は。

佐々木)そのくらいの気持ちでいるのです。その人たちに「悪質な投稿をやめてください」と言ってもなくなりません。なぜなら悪質だと思っていないから。「自分は正義の鉄槌を下しただけなのだ」と考えている。

新行)自覚していない。

佐々木)インターネット上での炎上や非難の応酬は、ほぼ100%そうです。誰も自分が悪いことをしているとは思っていないのです。

「自分はいいことをしている」と思っている人を直すのは難しい

佐々木)悪意があって悪いことをする人は、自覚しているから直しようがあります。「悪いことはやめなさい」と言えばやめる可能性があるし、「悪いことなのだから犯罪になるよ」と言えばやめるかも知れない。

新行)「悪いことをしている」という自覚があれば。

佐々木)でも、悪いことをしている人がいて、本人には自覚がなく、「自分はいいことをしている」と思っている人を直すのは、とても難しいですよね。「犯罪に抵触するかも知れないよ」と言っても、「何を言っているんだ。俺は正しいことを言っているのに、どうして犯罪になるのだ」と思い込んでいるのです。

悪質なコメントを防御する仕組みが必要

佐々木)防御する仕組みが必要ですね。ツイッターのような仕組みでも、投稿は見られるけれど、それに対してリプライ(返信)する権利はある程度、評価が高くないとできないなど。

新行)なるほど。

佐々木)ヤフコメは誰でもリプライできてしまうではないですか。そうではなく、ある程度複数の人から「この人のコメントは真っ当である」と評価を得られて、初めてコメントが多くの人に見られる。そうではない段階だと、コメントしても少人数のフォロワーにしか見えないなど、そういう仕組みをつくる方がいいのではないかという議論は以前からあります。

「悪質な投稿は恥ずかしいから無視しましょう」というリテラシーを育てる

新行)SNSを使う側のリテラシーを育てるということでしょうか?

佐々木)リテラシーも、「悪質な投稿はやめましょう」というリテラシーを育てるのは難しいのです。それよりも「悪質な投稿は恥ずかしいから無視しましょう」というリテラシーを育てた方がいいと思います。

新行)なるほど。

佐々木)私がよく例に挙げるのは、電車のなかで酔っ払ったおじさんが、若い大学生に対して「何だよお前!」などと怒鳴っているとしたら、それに対して「そうだそうだ」と言う人はいないではないですか。

新行)そうですよね。

佐々木)普通は、おじさんの行動をやめさせるか、もしくは遠巻きにするかのどちらかでしょう。でもいまのツイッターやヤフコメを見ていると、おじさん側に加勢している人が多いのです。おかしな構造になっている。「酔っ払って大きな声で誰かを苛めるのはおかしい」という認識が世の中に広まることが、いま必要なリテラシーではないかと思います。

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