職場で「熱血指導」する時代ではない パワハラとなる可能性「大」
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東京都医師会副会長で「ひらかわクリニック」院長の平川博之氏が5月11日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。職場のメンタルヘルスケアについて語った。
甥っ子や姪っ子を育てるような距離感で部下に接する
飯田浩司アナウンサー)部下に健康問題、メンタルヘルスのサインを見つけた場合、どう話を聞いたらいいのか、傾聴の方法について伺います。傾聴といっても話を聞いているつもりが、つい自分の話をしてしまうことがよくあります。
平川)それがごく普通ですよね。
飯田)部下、特に若手の方たちに精神的な病のサインを見つけた場合、どのように話を聞いたらいいのでしょうか?
平川)多くの社員の方の場合、残念ながら飯田さんの若いころとは違っているので、当時の常識をそのまま通用させるのは難しいです。親戚の甥っ子や姪っ子を育てるくらいの距離感がいいかと思います。
若い部下を支援しているつもりでできる限り丁寧に教える ~「熱血指導」はパワハラと取られる場合も
飯田)どうしても「自分たちのころとは違うな」というところが目立ってしまうのですよね。
平川)最近はネットを通じて情報を得ていますから、この人は物知りなのかなと思っていたけれど、「こんな根本的なこともわからないのか」と驚くこともあります。
飯田)調べればいろいろなことがわかると言われても、「頭でっかちだな、もう少し動けよ」と思ってしまうのですが、それを飲み込んで……。
平川)思ったとしても、言ってしまってはまずいでしょうね。間違っていることに対して、「お前ら違うぞ」とは言わない。「これも多様なやり方の1つなのだな」と思うくらいにしておかなければなりません。
飯田)そういうことなのですね。わかったような顔をしているので、しばらく放っておくと、今度は大穴を開けてくるようなこともあります。
平川)見た目はしっかり者のように見えていても、意外なところが抜けているのです。その場合、抜けていることについカッとしてしまいますが、できる限り丁寧に教えていく。指導するというよりは、支援しているつもりで。
飯田)支援するつもりで。
平川)そのくらいの気持ちの方が伝わりやすいです。あまり強く言ってしまうと、熱血ぶりがパワハラに受け取られてしまいます。その辺りは上手くやらなければいけないと思います。
飯田)なるほど、こちらから下手に出ると。というより、「下手に出る」という感覚がそもそもいけないのかも知れませんね。
平川)「いいね」ではありませんが、承認で自分を保つという方が多いので、よかれと思って注意するのではなく、「大丈夫だよ」と声をかける。「自分は放置されていない、見てもらっている、手をかけてもらっている」というような意識を感じてもらうことが大事です。
「大丈夫?」を安売りしない
飯田)よく「大丈夫?」と聞くと、「は、はい」と答えるのですが。
平川)日本語の特徴ですね。「大丈夫?」と聞かれて、「大丈夫ではない」とはなかなか言えません。反応的に「大丈夫です」と言ってしまうときがあるので、あまり大丈夫を安売りしてしまうのはよくないと思います。
飯田)なるほど。聞き方としては、「いま辛かったよね?」というような形ですか?
平川)そうですね。「どう?」という聞き方でもいいですよね。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます