キャスターの辛坊治郎が7月12日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。戸籍上は男性だが性同一性障害で女性として生活する経済産業省の50代職員が勤務先の庁舎で女性用トイレの利用を制限しないよう国に求めた訴訟の上告審判決で、最高裁が11日、制限を「適法」として職員の逆転敗訴とした2審判決を破棄し、制限を行った国の対応は「違法」とする判断を示したニュースに触れ、「この人が省内で受けた扱いは、ひどい」と指摘した。
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【経産省トイレ利用制限起訴最高裁判決後の会見】最高裁判決後、会見する原告=2023年7月11日午後、東京都千代田区の司法記者クラブ 写真提供:産経新聞社
経済産業省に勤めるトランスジェンダーの職員が職場の女性用トイレの使用を制限されているのは不当だと国を訴えた裁判で、最高裁は11日、トイレの使用制限を認めた国の対応は違法だとする判決を言い渡した。2019年に開かれた1審でトイレ使用制限は違法と判断したが、21年の2審は適法だとする判決を言い渡していた。
辛坊)この判決は、かなり特殊な事案だと思います。
訴えていたのは、戸籍上は男性ですが性同一性障害で女性として生活する経済産業省の50代職員です。この職員は、2010年に省内で同僚への説明会などを経て、女性の身なりで勤務を始め、ホルモン治療も受けてきました。ですから、既に10年以上も女性としての省内で勤務しているわけです。私としては、勤務するフロアとその上下1階にある女性用トイレの使用を制限し、上下2階以上離れたフロアの女性用トイレを使うよう指示したことは、当時の上司による嫌がらせに近いと私には感じます。
使用制限については、勤務しているフロアやその上下1階の女性用トイレを使用すると、顔見知りの女性とトイレ内で顔を合わせる可能性があるので、他の職員の性的羞恥心に配慮するためという理由だったようです。どうやら、説明会に出席した同僚女性職員の中に、この50代職員と顔を合わせることに違和感を訴えた人がいたようです。
しかし、上下2階以上離れた女性用トイレなら顔見知りではない職員が使用するから、この50代職員の事情を知らないので、いいだろうという感覚が私にはよく分からないですね。嫌がらせに近いと思います。
私が最初に特殊な事案だと申し上げたのは、こうしたことからです。ですから、今回の最高裁判決を普遍的な話につなげるには、いささか無理があるのではないでしょうか。私の感覚ですと、この50代職員が省内で受けた扱いは、ひどいと思います。
トランスジェンダーを巡って今後、同様の訴えが起こされた際には、最高裁判決は将来にわたって効果があります。ですから、同じようなトラブルが起きる可能性のある職場では対応を迫られるだろうと思います。
ちなみに、私の経験でいうと、20年ほど前に中国へ行った際には、公衆トイレの中に仕切りがないことに驚かされました。隣の人と顔を合わせながら大便をしなければならないんです。こうした中国のトイレを世界的には「ニーハオ(こんにちは)・トイレ」と呼び、評判が悪かったです。
ところが、5年前に中国へ行った際には、かなりの田舎に、男性用と女性用、それにLGBT用の3つの公衆トイレがあることに衝撃を受けました。つまり、世界はそういう潮流になっているんです。その認識を持ったほうがいいと思います。
日本の現状で「自分たちの常識が正しいんだ」というふうに突っ張っていたら、次々に訴訟を起こされ、とてもではないですが勝てる状況ではありません。世界はトランスジェンダーに配慮するのが当たり前の世の中になっているわけですからね。
嫌がらせは論外ですが、嫌がらせではなくても嫌がらせと受け取られることもあります。そうした世界の状況を踏まえたうえで、「現状のままではいけない」という問題意識は共有したほうがいいと思います。