東京都医師会理事で「目々澤醫院」院長の目々澤肇氏が8月17日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。東京における医療DXの現状について解説した。
2つの病院で異なるIDを持つ患者を一致させる「名寄せ」に関わるサーバーを新たに用意
飯田浩司アナウンサー)電子カルテや電子データのシステムというと、「大きなサーバールームなどを用意しなければいけないのか」という発想になる方も多いと思いますが、いかがですか?
目々澤)東京総合医療ネットワークでは、各メーカーの既存のデータセンターでデータを集め、共有化しようとしています。名寄せに関わるサーバーが新たに1つ用意されました。
飯田)名寄せに関わるサーバー。
目々澤)名寄せというのは、「A病院の110番」というIDを持った患者さんと、「B病院の35番」というIDを持つ患者さんが同じ場合、それを「一致させること」です。名寄せが上手くいかなかった例が昔の年金です。
名寄せのサーバーによってそれぞれの病院の電子カルテ情報が共有できる ~患者から同意書にサインをもらう
目々澤)名寄せが上手くできれば、あとはすんなり情報が流れます。そのため、新たに用意したのは名寄せのためのサーバーだけなので、極めて低コストかつ持続可能性のある形だと思います。
飯田)名寄せが上手くできれば。
目々澤)病院側では、既にお医者さんの前にある電子カルテのなかで、情報を共有できることも大きなメリットです。やらなければならないのは、同意書の整備です。
飯田)同意書の整備。
目々澤)患者さんから、「このネットワークで情報共有されます」という同意書にサインをいただく。このサインをいただくことが「東京総合医療ネットワーク」の最初の入り口になります。
診察する側が見ることができるのは同意書のある患者の電子カルテだけ
新行市佳アナウンサー)お医者さんは電子カルテを自由に見られるということですか?
目々澤)実は、そういうわけではないのです。見られるのは同意書にサインをいただいた患者さんの情報だけという仕組みになっています。
飯田)ネットワークにつながっているからといって、あまねく患者さんの情報が見られるわけではないのですね。
目々澤)そのようなものではありません。
飯田)同意をもらった人の電子カルテのみ見ることができる。
目々澤)そうです。
緊急の場合の「事前閲覧」
新行)同意がなければいけないという話ですが、緊急の場合はどうなるのですか?
目々澤)緊急の場合は「事前閲覧」を考えています。電子カルテを「見ようとする病院」と「見せてあげる病院」が、まず電話で連絡を取り合うのです。
飯田)緊急の場合。
目々澤)見る側が「それを電子カルテで見せてください」とお願いし、見せる側は「この患者さんは何番です」と答える……というやり取りを行って、「電子カルテを見にいく」というボタンは、特定のドクターやその場の責任を持った人だけが押せるという仕組みで運用しようかと考えています。これは私が決めることではなく、「それぞれの病院でどんな仕組みをつくるか」に関わってくると思います。
飯田)救急搬送されたときは、時間との戦いになってきますよね。
目々澤)病床に空きがあったとしても、「本当にその患者さんをうちで受け入れられるか見極めたい」というのが救急の先生たちのリクエストです。
新行)受け入れる設備が自分たちの病院にあるのか、ないのか。
飯田)それが整備されれば、もっと救える命も……。
目々澤)増えると思います。
病院・診療所が「東京総合医療ネットワーク」に参加するには
飯田)目指す形としては、あまねく病院に対応することですか?
目々澤)そのような形になります。「患者さんを紹介する側の診療所や中小病院からも、自分の患者さんのデータを見られるようにする」という整備が2022年に終わり、参加する病院・診療所の募集を何回も出しました。
飯田)募集しているというお知らせを。
目々澤)しかし、なかなか手が挙がりません。「うちの診療所も見てみたい」というところがあったら、ぜひ我々に問い合わせしてください。
飯田)ネットワークに参加する診療所・病院は。
目々澤)東京都医師会が東京都病院協会に運営を委託していますので、東京都病院協会へお問い合わせいただければけっこうです。もちろん、東京都医師会の方にご連絡いただいても、つなぐことは可能です。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます