ガソリン補助金制度「延長」の背景にある 岸田政権を取り巻く「これだけの事情」

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中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也と元経産省官僚で政策アナリストの石川和男が8月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。自民党が提言案をまとめたガソリン補助金制度の延長・拡充策について解説した。

ガソリン補助金制度「延長」の背景にある 岸田政権を取り巻く「これだけの事情」

※画像はイメージです

ガソリン補助金制度延長

自民党は8月29日、党本部で政調全体会議を開き、ガソリン補助金制度の延長・拡充策を盛り込んだ提言案をまとめた。9月末までとする期限を年末まで延ばし、支給額の拡充を求める。レギュラーガソリンの全国平均小売価格はリッター185円台と、過去最高の水準に迫っている。

飯田)170円台を目指すということです。3ヵ月延長は小刻みのような気もしますが。

石川)国際的な原油市況に始まって、石炭も天然ガスもすべて上がっていますが、実はロシアによるウクライナ侵略が始まる前からそうなのです。

飯田)ウクライナ侵略の前から。

石川)コロナ禍から回復してきて、徐々に景気が上がり、エネルギー価格も高騰してきました。日本国民に対してはガソリン代や電気代も含め、補助金があるではないですか。

ガソリン補助金は6兆2000億円 ~消費税率に換算すると1.5%

石川)どのぐらい補助されたかと言うと、ガソリンについては2022年1月~2023年9月までで、約6兆2000億円と言われています。

飯田)6兆2000億円。

石川)6兆2000億円と言われても、そんな数字は見たことがないので、みんな「何それ?」と思いますよね。それをわかりやすくするために、指標として私がよく使うのは消費税率です。

飯田)消費税率。

石川)約21ヵ月間で6兆2000億円ということは、消費税率に換算すると1.5%なのです。

電気料金の補助金は消費税率に換算すると1.8%

石川)そのくらい負担が軽減されている。我々が納めた税金が返ってきています。また、電気代は今年(2023年)の1月~9月までで約3兆1000億円という予算枠です。

飯田)3兆1000億円。

石川)約9ヵ月で3兆1000億円というのは、消費税率に換算すると1.8%です。つまり、そのぐらいの負担軽減がなされており、影響は大きいのですよ。

補助金を止めるとなれば政権はもたない ~選挙を行えば負けてしまう

石川)だから、これを「止める」と言われても困るわけです。そうなれば政権がもたないかも知れません。選挙を行えば負けますよ。

飯田)選挙になれば。

石川)3ヵ月という数字ですが、国際市況がどうなるかわからないので、何年も設定しておくと、下がったときに予算の無駄になってしまいます。だから3ヵ月に刻むというのが1つの目安なのだと思います。

飯田)3ヵ月ということは。

石川)「四半期ごと」が1つの目安なのだと思います。結論から言うと、「ガソリン価格を1リットル当たり170円台に抑える」とあるでしょう。でも、前の補助金のときは160円台なのです。

飯田)以前のときは。

石川)そうなると、補正予算をやると思うので、国会審議になります。そこでどういう審議がなされるのか。もっとも、その前に予備費で少しやると思いますが、最終的には補正予算できちんと対応しないと、長期的なエネルギー価格の低減策としては仕方がない。賛否両論あると思いますが、仕方ないと思います。

減税となると省庁がにわかに「うちに持ってくるな」となる ~役所の利害が見えやすい

野村)やり方の問題があると思います。「卸売りを補助することで、小売価格に反映されるのか」という議論がありましたが、そういうやり方に対して、「買うところで減税したらいいのではないか」という話もあるわけです。これはいわゆるトリガー条項の話です。

飯田)ガソリン税の。

野村)ガソリンそのものを、例えば半分ほど減税してしまえば小売価格は「グン」と下がるのだから、そうしたらいいのではないかという意見もあります。しかし、このようなやり方の問題が出てくると、省庁がみんな「うちの方に持ってくるな!」というような話になるのです。

飯田)なるほど。

野村)この問題を見ていて面白いのは、役所の利害がものすごく見えやすいということです。

飯田)補助金なら楽だけれど、減税となると難しい。

岸田政権が「トリガー条項」を発動しない本当の理由

石川)ガソリン税はいま、54円近くあるわけです。そのうち上乗せ分……もともと28円ぐらいだったけれど、いろいろと上乗せされて合計53円ぐらいなのですが、その上乗せ分を下げるというのが昔の民主党政権で導入されたトリガー条項です。この発動が難しいのは、民主党政権で行ったものだから、いまの自民党政権ではやらないのでしょうね。

飯田)そういうものが未だに残っているのですね。

野村)残っているのです。

一旦、税率を下げると上げることができない ~減税には財務省だけでなく、国交省も反対している

石川)政策的に言うと減税は、一旦、税率を下げると上げられないので困ってしまうのです。ガソリン税を使って何をするかと言うと、いまは一般財源として何に使ってもいいことになっていますが、もともとは「道路特定財源」です。いわゆる国土交通省の道路関係の予算に使うもので、いまもそうです。

飯田)いまもそうなのですね。

石川)つまり、おそらく道路関係のところで「こんなに減税したら使えないではないか」というような話になってしまい、できないのでしょう。

野村)まさにそこがポイントであり、財務省が減税に反対しているように見えますが、実は国交省も反対しているのです。

飯田)「うちの地元の道路が通せなくなってしまうのか。それはまずい」などと言うような先生方が出てくる。

ガソリンだけ減税してしまうと、電気・ガスとの並び上都合が悪い

石川)もう1つ、ガソリンにはガソリン税があります。だからガソリン減税もあるのですが、電気とガスはそんなに税がないわけです。電気とガスに同じような税があるかと言うと、ありません。そのため、ガソリンだけ減税になってしまうと「横並び上、困るので補助金だ」という話になる。官僚としてはこういう理屈を立てて、減税に反対しているのでしょうね。

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