中国とロシアのコンセンサスがなければ国連憲章は改正できない 「陣取り合戦」の時代に入った国連

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日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が9月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理の国連総会出席について解説した。

中国とロシアのコンセンサスがなければ国連憲章は改正できない 「陣取り合戦」の時代に入った国連

言葉を交わすロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席(ウズベキスタン・サマルカンド)=2022年9月16日 AFP=時事 写真提供:時事通信

岸田総理大臣が国連総会に出席

岸田総理大臣は9月19日からアメリカのニューヨークを訪問し、国連総会に出席した。一般討論演説を行う他、「核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)」の記念行事や、SDGsサミットなどの行事にも参加する。

飯田)国連総会の演説において、「核なき世界」への取り組み強化を表明しました。今回はG7議長国でもありますよね。

ロシアのウクライナ侵略以来、機能しなくなった国連安全保障理事会 ~「自分がいい形勢をつくらなければいけない」というゲームの時代に入った

秋田)国連総会は、私も政治部で首相官邸や外務省を担当していた当時、また、ワシントンに駐在していた時代に何度も取材しました。しかし、2022年から国連総会の意味が激変してしまったと思います。

飯田)2022年から。

秋田)国連安全保障理事会という中枢の場所で、侵略しているロシアとそれを支持している中国が拒否権を握っているという意味では、国連安全保障理事会は機能しなくなっているのです。

飯田)そうですね。

秋田)そんな国連に出て何をするかと言うと、理想的には「みんなで協力して一致点を探る」ことも行うべきだとは思います。それ以上に、囲碁や将棋のような盤上にみんなが出かけて行き、「自分がいい形勢をつくらなければいけない」というゲームの時代に入ったのでしょう。何かが決まるのではなく、国連とはそのような場所だということです。

飯田)陣取り合戦のような。

秋田)岸田総理が出席し、当然、ウクライナを侵略しているロシアと、それを擁護している中国、その他の国々に対して「ウクライナへの侵略を止めなければいけない」という視点から外交を行うのだと思います。日本としても、核兵器の使用は決してあってはいけないという立場から、陣取り合戦の外交をすると思われます。

中国とロシアという常任理事国のコンセンサスがなければ国連憲章は改正できない ~今後は国連が機能しないまま、陣取り合戦の時代が続く

飯田)安保理が機能しないなかで、日本は非常任理事国でもあり、国連改革を昔から訴えています。この辺りも盛り込まれるのではないかと言われていますが。

秋田)安保理の常任理事国で拒否権を持つ国は5ヵ国あり、中国とロシアはそのうちの2ヵ国ですから、放っておいたら何も決まりません。アフリカやアジアなどの国々も入れて、幅広い議論で何かを決められるような体制にする必要がある。その意味で国連改革を訴えているのだと思います。

飯田)日本などが。

秋田)ただ、中国とロシアという常任理事国のコンセンサスがなければ、国連憲章は改正できないのです。憲章が改正できないと改革もできません。会社で言えば、常務会の決定なしでは重要なことは決められない。常務会のメンバーが5人いて、そのうち2人が中国とロシアであり、残りはアメリカ・イギリス・フランスですから決まらないと思います。今後は国連が機能しないまま、陣取り合戦の時代がずっと続いていくかも知れません。

グローバルサウスの国々をどのようにして西側に引き寄せるか

飯田)ロシアのウクライナ侵略に対する非難決議なども、1ヵ国1票で投票すると白黒がはっきりして、大勢は見えますよね?

秋田)国連総会でみんなが一斉に投票すると、どれだけロシアに批判的な票が増えたか、どれだけ支援する国があるのかがわかる。それが何かの決定につながるわけではないのですが、「悪いことはできない」という圧力にはなります。その意味では、グローバルサウスと言われる途上国や新興国を、どう西側に引き寄せるかが重要だと思います。

グローバルサウスをどのようにこちら側に引き寄せるのか ~中国・ロシアの周りを陣取りして、自分たちに有利な陣形をつくるために途上国・新興国を引き寄せていく

飯田)9月の頭にはインドを議長国としたG20が開かれ、アフリカ連合を入れようという話にもなりました。ただ、「アフリカには中国が入り込んでいる国も多いので、不利なのではないか?」という指摘もありましたが、いかがですか?

秋田)私は先週まで旧ソ連のジョージアのトビリシに行き、その後は大西洋を越えてニューヨークを訪れ、それぞれの国際会議に出ていました。

飯田)そうなのですね。

秋田)トビリシの方はウクライナ問題が中心でした。ニューヨークの方はイギリスのシンクタンクが主催した会議で、アングロサクソン系の元高官や識者が多く参加していました。「2泊3日で世界の問題を討論する」という合宿形式で、50人くらいの少人数で行いました。

飯田)少人数で。

秋田)印象的だったのが、「グローバルサウスをどうやってこちら側に引き寄せるのか」という内容が重要なテーマとしてあり、そこに議論が集中していたことです。なぜかと言うと、世界のいまの国際政治は「碁」です。陣取り合戦のような状態になっていて、中国やロシアと交渉しても、いまは戦争になってしまっているから、なかなか埒が明かない。ですから、碁のように周りを陣取って、自分たちに有利な陣形をつくるために途上国・新興国を引き寄せていく。

アフリカ連合をG20に入れて関与できるのは西側にとってもいいこと

秋田)中国とロシアも中東、アフリカ、中南米に出て行って、親中・親ロシア国を増やそうとしている。そういうゲームなのです。

飯田)なるほど。

秋田)我々がASEANと呼んでいるような、東南アジア諸国と協力してきたのと同じような時代になっている。アフリカ連合という、アフリカのASEANのような事務局をG20に入れて関与するのは、西側にとってもいいことだと思います。

飯田)単独で置いておくと、いろいろなところから来てしまうけれども。

秋田)そっくりそのまま、それがロシア・中国側に行ってしまったら、もっと問題になります。

中東、アフリカ、中南米は3つのグループに分かれている ~ルワンダやケニア、ナイジェリアなど、欧米と協調

秋田)6月にはアフリカのルワンダに行き、国際会議にも出ました。印象的だったのは、参加者のほとんどがグローバルサウスの人でした。

飯田)ルワンダの国際会議では。

秋田)いろいろと話していると、中東、アフリカ、中南米は3つのグループに分かれていると感じます。1つ目のグループは、どちらかと言うとアメリカや欧州と協力し、何かをやっていこうとする国々です。ルワンダ、ケニア、ナイジェリアなどがそれに近いです。欧米と協調しながら動いていくという意味で、ロシアの侵略についても国連決議でそのような立場を取っている。

反米的な中央アフリカやマリ、ブルキナファソ。南アフリカ、ブラジルも反米左派的な立場を取っている ~3つ目は親欧米と反米の中間

秋田)逆に反米的な勢力もあって、ワグネルが浸透してしまっている中央アフリカやマリ、ブルキナファソなどです。大きなところでは南アフリカやブラジルも民主国家ではありますが、どちらかと言うと反米左派的な立場を取っている。3つ目がその中間で、この3つに分かれている感じです。

親欧米的なアフリカ、中東、中南米にまず関与して、そこから中間の国々に関与していく ~インドやインドネシアとの協力が大事

飯田)その辺りもASEANの塗り分けと本当に似ていますね。

秋田)ASEANも中国に近いカンボジアやラオス、逆側のフィリピン、中間のインドネシアなどに分かれています。これからは親欧米的なアフリカ、中東、中南米にまず関与して、そこから中間の国々に関与していくのがいいと思います。

飯田)関与の入り口として、事務局的なものを取り入れていくことが大事なのですね。

秋田)あとは、やはり第1グループの親欧米に近いような筆頭がインドとインドネシアなので、そのような国々との協力が大事だと思います。

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