東京都医師会会長の尾﨑治夫氏が9月28日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。日本と海外の医療へのアクセスの違いについて解説した。
スウェーデンの医療における「039090」ルール
飯田浩司アナウンサー)患者が受診したいとき、自由に受診先を選べるフリーアクセス自体は素晴らしい制度ですが、それによって自己管理の意識が少し違っているのではないかという話がありました。この辺りも含めて、医療へのアクセスについて伺いたいのですが。
新行市佳アナウンサー)海外ではどうなっているのでしょうか?
尾﨑)スウェーデンやイギリスは100%税負担で、国民の負担はありません。そういう意味でも、かなり進歩した制度だと言われています。実際にスウェーデンではどうなっているかと言うと、いまは「039090」というルールがあります。
医療機関にいつでも連絡できるが、対応するのは看護師 ~受診する場合は3日以内に受診できる
尾﨑)最初の「0」は、その日に医療機関に連絡できる体制をつくる。でも、そこで連絡を受けるのはドクターではなく、「トリアージナース」という看護師さんが対応します。
飯田)お医者さんではなく。
尾﨑)病状を聞いて、例えば「あなたは軽い風邪だから、こういうお薬を買って飲んで様子を見てください」と指示する。また、「この人は受診が必要だ」ということになれば、「3」……「3日以内に受診できるようにする」というルールです。
飯田)すぐに受診するわけではないのですね。
入院が必要な場合は90日以内に入院可能 ~手術の場合はさらに90日以内に手術
尾﨑)すぐではありません。次の「90」は受診した結果、緊急の場合は別ですが、「入院してきちんと調べる必要がある」となった際、90日以内には入院できるようにするということです。
飯田)90日、約3ヵ月ですか。
尾﨑)末尾の「90」は、入院していろいろ調べて「手術が必要」となった場合、「3ヵ月以内には手術できるようにする」というルールです。手術が必要な病気が見つかって手術するまでに、最長6ヵ月を要するのです。
飯田)半年。確かに90と90を足すとそうなりますね。
尾﨑)それでも別に抗議デモなどが起きているわけではありませんから、やはり医療体制を守るためには、そのような流れが必要だと解釈しています。
少子化の影響で医療スタッフのキャパシティも減っていくなか、現状の医療体制でいいのか
尾﨑)日本はどこでもすぐに受診できますが、スウェーデンには「039090」のルールがある。また、イギリスでも通常は看護師さんや薬剤師さんが対応するので、ホームドクターがすぐ診ることはできませんし、入院するにも相当、時間が掛かるケースが多いです。
飯田)そうなのですね。
尾﨑)「その日のうちに見てもらうのが当たり前」というのが日本ですけれど、そうではない医療を運営している国はたくさんあります。今後は少子化の影響で、医療スタッフや介護関係スタッフのキャパシティが減るでしょう。そのなかで「どうやって維持していくか」を、いろいろな意味で医療を受ける皆さんとともに考える必要があると思います。
受診する前に相談する「かかりつけ医との相談窓口」のような機能が必要
尾﨑)フリーアクセスという言い方は、どちらかと言うと患者さんが「きょう受診したいから当日受診する」ということです。しかし本来、「あなたは本当に診察が必要ですか?」という1つ前の相談が……。
飯田)前段階でふるいにかけるような。
尾﨑)そうです。相談があって、「やはりあなたはきょう受診した方がいい」、または「あなたはもう少し待てます」など、「かかりつけ医との相談窓口」のような機能が本当は必要なのだと思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます