『キリエのうた』岩井俊二監督最新作、アイナ・ジ・エンドを歌姫に迎えた音楽映画

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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1142回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

今回は、現在公開中の『キリエのうた』と『ザ・クリエイター/創造者』をご紹介します。

岩井俊二監督インタビュー

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映画館で観たい!『キリエのうた』 ~その歌声には、生きる希望が宿っている

国内外を問わず表現の場を広げ、世界中に熱狂的なファンを持つ岩井俊二監督。最新作となる『キリエのうた』は、盟友・小林武史氏とタッグを組んだ音楽映画です。

壮絶な運命の元に生きる主人公・キリエの歌声が紡ぐ13年にもわたる愛の物語は、いかにして生まれたのでしょうか。岩井俊二監督に、お話を伺いました。

『キリエのうた』

『キリエのうた』

『キリエのうた』のあらすじ

歌うことでしか声が出せない路上ミュージシャン、キリエ。そんなキリエの歌に心を動かされて、彼女のマネージャーを買って出る謎めいた女性、イッコ。

行方不明になったフィアンセを探し続ける青年、夏彦。そして、傷ついた人々に慈愛の心を持って寄り添う教師、フミ。

石巻、大阪、帯広、東京。時代や社会に翻弄されながらも、別れと出会いを繰り返す4人の人生が交錯していく……。

岩井俊二監督インタビュー

岩井俊二監督インタビュー

『キリエのうた』 ~岩井俊二監督が語る、音楽、映画、震災

アイナ・ジ・エンドを歌姫に迎え、魂の救済の物語を描き出した『キリエのうた』。本作を語るにおいて外せないのは、やはり圧巻の歌声を披露しているアイナさんの存在です。

「キリエ(アイナ・ジ・エンド)とイッコ(広瀬すず)は、まだ未発表の小説に登場するキャラクターなんですけれど、あるとき、彼女たちを主人公にしたら、小さな映画をつくることができるかも……と、思い立ったんです。その物語を書き進めているときに、アイナ・ジ・エンドさんがライブで歌う姿を目撃してしまって。もう、自分が書いている主人公とアイナさんがピタリと重なってしまって、この人で映画を撮りたいと。

新たな音楽映画をつくりたいという思いは、以前からありました。(音楽プロデューサーの)小林武史さんとも『次はこんなコトをやりたい!』といったことは、よく話していましたし。でもアイナさんの存在がなかったら、『キリエのうた』はここまで壮大な物語にはならなかったでしょうね」

岩井俊二監督インタビュー

岩井俊二監督インタビュー

これまでにも『スワロウテイル』(1996年)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)など、音楽映画の名作を生み出している岩井俊二監督。本作の制作中、岩井監督は「自分がつくる音楽映画について、新たな発見があった」と語ります。

「今回の『キリエのうた』は、音楽映画だったがゆえに、ここまで壮大で重いテーマを内包してしまったのかなと。振り返ってみれば『スワロウテイル』では移民問題、『リリイ・シュシュのすべて』では、少年犯罪やいじめの問題。社会問題を提起した重量級のテーマを持ち合わせています。

音楽って、その歌詞にしっかり耳を傾けてみると、世の中の無情や、心の闇を歌い上げているものが少なくない。いや、むしろ時代に呼応する形で、そういった楽曲が年々増えているようにも感じられます。口当たりのいいカクテルのような存在であると同時に、劇薬でもあるのでしょうね。だから音楽を主とした映画にすることで、観客にとって間口が広がり、難しいテーマも伝わりやすくなるのではないかと。

これまでは自分の作品のなかで“音楽映画”と分類されるものには、必ず社会的な問題が題材に含まれていると感じていたんです。でも実はその逆で、音楽映画だからこそ、問題提起したい社会問題に触れているのだということに気づきました。そう考えると、すべての辻褄が合うんですよね」

『キリエのうた』

『キリエのうた』

これまで発表した音楽映画と同じく、今作にも地域や家族が抱える社会的問題が落とし込まれています。そのなかでも強く印象に残るのが、震災について。

岩井俊二監督の故郷である宮城県を含む東北地方で、未曾有の出来事が起こってから12年。これまでにも震災や災害にフォーカスした作品を発表されている岩井監督ですが、この12年間でご自身の創作活動に変化はあったのでしょうか。

「日本という国をもう一度見つめ直して、“いまの日本”を自分なりに描きたいという衝動に駆られたというのは、偽りない真実です。ひょっとすると、震災がなかったら日本に戻ってきていなかったかも知れませんし。『花は咲く』という楽曲の詞も、映画『ラストレター』(2020年)や『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016年)も、震災の延長線上から生まれた作品です。

この『キリエのうた』でも、震災については、主人公のバックグラウンドに多少盛り込んではいました。でも、ここまで具体的に、“震災とその後の日本”を描くことになった原動力は、やはりアイナ・ジ・エンドさんというアーティストの存在があったからこそ。そういった意味でも、アイナさんの歌声が生み出した、奇跡の作品だと思っています」

『キリエのうた』

『キリエのうた』

傷ついた者たちが、歌を通じて“つながる”ことで再生していく物語。

キリエ、夏彦、フミ、イッコ。別れと出逢いを繰り返しながら、自分の足で力強く歩いている彼らの姿に、生きる希望を見出さずにはいられない。

音楽映画の新たな名作を、是非、あなたの目に耳に焼き付けて。

『ザ・クリエイター/創造者』

『ザ・クリエイター/創造者』

コチラも映画館で観たい!『ザ・クリエイター/創造者』 ~ギャレス・エドワーズ監督が描く、人類とAIの戦い

舞台は、いまから50年後。“ニューアジア”と呼ばれる近未来。人類を守るためにつくられたはずのAIが、ロサンゼルスで核爆発を引き起したことをきっかけに、人類とAIの戦争が激化する。

元特殊部隊のジョシュアは、人類を滅ぼす兵器を創り出した“クリエイター”の潜伏先を見つけ、暗殺に向かう。しかしそこにいたのは、純粋無垢な超進化型AIの少女アルフィーだった……。

監督を務めたのは、『GODZILLA ゴジラ』で注目を集めたギャレス・エドワーズ監督。渋谷や新宿をイメージさせる都市の様子やカタカナ表記など、そこかしこにエドワーズ監督の日本愛が垣間見え、その映像美に魅了されること間違いなし。

日本が誇るハリウッドスター、渡辺謙の活躍も見逃せませんよ。

『キリエのうた』

『キリエのうた』

『キリエのうた』

大ヒット公開中
出演者:アイナ・ジ・エンド、松村北斗、黒木華、広瀬すず、村上虹郎、松浦祐也、笠原秀幸、粗品(霜降り明星)、矢山花、七尾旅人、ロバート キャンベル、大塚愛、安藤裕子、鈴木慶一、水越けいこ、江口洋介、吉瀬美智子、樋口真嗣、奥菜恵、浅田美代子、石井竜也、豊原功補、松本まりか、北村有起哉

原作・脚本・監督:岩井俊二『キリエのうた』(文春文庫刊)
音楽:小林武史
主題歌:「キリエ・憐れみの讃歌」Kyrie (avex trax)
企画・プロデュース:紀伊宗之
製作プロダクション:ロックウェルアイズ
配給:東映
(C)2023 Kyrie Film Band
公式サイト https://kyrie-movie.com/

『キリエのうた』

『キリエのうた』

『キリエのうた』

文春文庫から発売中
著:岩井俊二
ページ数:288ページ
判型・造本・装丁:文庫判
ISBN:9784167920616

「あの日」から13年の月日を経て岩井俊二が辿り着いた、心に棘が突き刺さる、忘れられない物語。

関連URL https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167920616

『ザ・クリエイター/創造者』

『ザ・クリエイター/創造者』

『ザ・クリエイター/創造者』

2023年10月20日(金)から全国ロードショー
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、渡辺謙、ジェンマ・チャン、アリソン・ジャネイ、マデリン・ユナ・ヴォイルズ
監督・脚本:ギャレス・エドワーズ
日本語吹き替え版:田村真、堀越麗禾、森川智之、恒松あゆみ、小宮和枝
原題:The Creator
(C) 2023 20th Century Studios
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
公式サイト https://www.20thcenturystudios.jp/movies/thecreator

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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