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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
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LiLuさん人生初のレコーディング
10月は「乳がん啓発ピンクリボン月間」です。日本では毎年9万人以上が新たに「乳がん」になっており、女性がかかる「がん」のなかでもトップです。
30代から増え始め、40~60代が乳がんになるピークで、他のがんと比べて若い世代にも多いのが特長です。それでも早期発見すれば、90%以上の方が治る病気だと言われています。
今回ご紹介する歌手のLiLu(リル)さんは、30代で乳がんになりました。LiLuさんはライブ配信を職業とする「ライバー」の1人で、本名・年齢は非公開で活動されています。神奈川県の出身で、長年事務の仕事をされていました。
そんなLiLuさんが30代前半のころ、乳房にカルシウムが沈着する「石灰化」が見つかります。多くは問題ありませんが、なかには乳がんが原因で生じる場合があります。LiLuさんは「少し短い間隔で定期的に検診を受けてください」と医師に言われており、乳がん検診を受けていました。
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手術前の姿を撮影してもらったLiLuさん
ところが2021年、コロナ禍で人々が病院に行くことを避けていた時期、LiLuさんも検診を半年ほど先延ばしにしてしまいます。
ある日、セルフチェックしていると「おや?」と違和感を覚えます。1年ぶりに診察を受けたところ、がんが進行していて、状態はステージ2の「A」。悪性度が高く、2021年9月に左胸の全摘手術を受けました。
退院後、抗がん剤治療によって長い髪はすべて抜け落ち、年が明けた2月になっても副作用に苦しみます。それでも「早く職場に戻りたい」と、3月末の復帰を目指し、職場の上司に勤務時間などを相談しました。すると、思わぬ言葉が返ってきます。
「病気になる前よりも、もっと多くの仕事をしてください」
乳がんの治療をまったく理解しない上司に返す言葉もなく、LiLuさんは「ここで働くより、自分の体を大切にしよう」と退職を決意しました。
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自宅でスマホに向かって配信するLiLuさん
仕事を辞めて、これからどうやって生きていけばいいのか……落ち込んだ気持ちだったLiLuさんは、家族や友達に相談します。
すると、昔一緒にカラオケに行った友達から「LiLuちゃんは歌が上手だから、ライブ配信をやってみたら?」と勧められます。それがライブ配信アプリ「pococha(ポコチャ)」との出会いでした。
DeNAが運営するライブ配信アプリで、楽しいトーク、モノマネ、お絵描き、カラオケなども配信できます。約1万曲から選べる「pococha」のカラオケ配信で、LiLuさんは2022年6月からライブ配信をスタートしました。
配信する勇気を出すため、明るい色のウィッグをかぶり、初めてのカラーコンタクトレンズをつけて出演します。
「新しい自分に出会ったような感覚で、すごくワクワクしましたね。初めての配信は100人ほどのリスナーさんが私の歌を聴いてくれたんですよ」
LiLuさんの歌に「涙が出た」「元気をもらった」「癒された」などのコメントがあり、「私の歌がこれほど多くの人に届くんだ」という喜びと共に、とある悩みが膨らんでいきました。
それは、自分が乳がんを患ったこと。ウィッグの下は抗がん剤治療のため、髪が生え揃っていないこと。それらを告白すべきかどうかでした。
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坊主頭のときは、いろいろなウィッグをつけ配信
「『同情を引こうとしているんじゃないか』とか、『ネガティブな話だから聞きたくない』など、離れる方がいたらどうしようと思い、とても不安で怖かったですね。でも告白することで、定期的な検診の大切さをたくさんの人に伝えることができると思い、配信を始めて2ヵ月後に決意しました」
告白してみると、人が離れるどころか、応援するリスナーがさらに増えていきます。
「歌はもともと大好きだけれど、自分の歌が仕事になるんだろうか?」
そんな心配をよそに、リスナーからの「アイテムギフト」……いわゆる「投げ銭」の収入で、「専業ライバー」として何とか生活できるようになりました。
いまでは1日あたり4~6時間・週5日のスケジュールで、歌謡曲、ポップス、演歌、アニメソング、洋楽など、あらゆるジャンルの歌をカバーし、ライブ配信で披露しています。「いつかは自分のオリジナル曲を持って、たくさんの人に歌とメッセージを届けたい」という夢もあるそうです。
そんなLiLuさんが大切にしている言葉をご紹介します。
『幸せなときも、辛いときも、常に「いま」がベスト』
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初めてのバンドライブ(銀座バーブラ)
■LiLu(lit.link)
https://lit.link/liluliryu
■「銀座バーブラ」(LiLuさんがライブ活動を行うバー)
https://ginza-barbra.com