処理水放出から3か月 ……地元町長が語る風評被害の実態と原発政策
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政策アナリストの石川和男が12月2日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のエネルギーリテラシー」に出演。福島第一原子力発電所の建屋内にある放射性物質を含んだ水を浄化した処理水の海洋放出から3か月が経ち、風評被害などの実状について地元・双葉町の伊澤史朗町長と対談した。伊澤町長は風評被害について「私の感じている範囲では」と断った上で、「あまりなく、意外と平穏。マイナスの影響はそんなになかったと思っている」と述べた。
2011年3月11日に発生した東日本大震災による福島第一原発事故。今年8月、原発建屋内にある放射性物質を含んだ水を浄化した処理水の海洋放出が始まった。廃炉に向けて一歩前進した一方、原発周辺地域では今なお帰宅困難区域が多く残り、時が止まったまま。除染で出た土の処分問題や、使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物「核のごみ」の最終処分問題についても結論が出ないまま、政府は原発の再稼働推進を掲げる。
伊澤町長は処理水放出による風評被害について「私の感じている範囲では」と断った上で、「あまりなく、意外と平穏。マイナスの影響はそんなになかったと思っている」と言及。周辺地域のモニタリングや海産物の検査でも問題のある数値は出ておらず、「震災前に健全な原子力発電所原発が稼働してトリチウム水を流していた。今回流すトリチウム水は、震災前に流していたトリチウム水と違うのかというと違わない。(原発敷地内の)タンクにため続けることで、廃炉作業に与えるデメリットの方が大きい」と、科学的根拠に基づいて処理水放出に至った経緯を語った。
また、除染で出た土については「国との約束ですから、県外で最終処分というのは守って頂かなくてはならないというのは大前提」とした上で、町内に中間貯蔵施設を受け入れた理由について「福島県内にあった1300カ所のフレコンバック(土を入れた黒い土のう袋)の仮置き場を見たときに、福島県民もそうだが全国のみなさんは福島の風評払拭って言っても信用しない」と、野積みになっていた黒いフレコンバックを集約し、街の中から取り除くことを優先させた背景を述べた。「メディアでは“苦渋の判断”なんて言われているが、もっと大変な思いをして引き受けた。どこかが犠牲にならないと、絶対に福島に復興はできない」とも語り、「自分のところに迷惑なものって欲しくないというのは誰も同じ。でも、誰かがその犠牲にならなかったら、復興ってできないんだってことをわかって頂きたい」と理解を求めた。
原発から出る「核のごみ」の最終処分地の事前調査を、北海道寿都町と神恵内村が受け入れていることについては「敬意を表するしかない」と述べた上で、「原発立地自治体は、もうちょっと考えなければならないのではと思う。 “稼働して我々はこれだけ大変な思いしているんだから、(核のごみを)処分をするのは他のところ”という考え方ではなく、みんなで痛みを分かち合うという気持ち。最適の場所かは調べるべきだし、そうなった時に安全に、より問題のないような取り組みをしていく議論を深めることが今後は必要」と指摘し、原発立地自治体も含めた最終処分地の議論を深める必要性を訴えた。
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