戦略科学者の中川コージが2月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理とウクライナのシュミハリ首相の首脳会談ついて解説した。
日・ウクライナ首脳会談、経済復興で一致
ロシアによるウクライナ侵略から2年となるのを前に、岸田総理大臣は2月19日、ウクライナのシュミハリ首相と会談し、ウクライナ復興に向け官民を挙げた取り組みを連携して推進することを確認した。また、ウクライナのシュミハリ首相は「日本にぜひウクライナの復興のリーダーになって欲しい。実りのある会談、建設的な対話に感謝の意を表したい」と述べた。
飯田)会談に先立ち、日・ウクライナ経済復興推進会議も行われました。ウクライナに対する復興協力ですが、なかなか装備品が出せないため、このような形になったのでしょうか?
中川)日本企業がどれだけ入っていけるかどうかも含めて、安全保障的な観点だけではなく、当然ながら経済的にも悪い話ではないということが大前提なのだと思います。ただ、気を付けなければいけないのは、もともとウクライナは腐敗大国と呼ばれており、戦争を経たからといって腐敗大国でなくなるわけではありません。日本企業がコンプラを重視するなかで、「根を張って継続的に協力できるのだろうか?」という懸念があります。
飯田)継続的に協力できるのか。
中川)ただ、具体的な中身を見ても、いまはまだ表面的なところを言っているだけなので、実際に何が問題なのか、何が上手くいくのかなどを評価する段階ではありません。
気になるのはゼレンスキー大統領のビデオメッセージが出ていないこと
中川)1つ気になるのは、ゼレンスキー大統領がビデオメッセージを出す予定だったのですが、出ていないのです。
飯田)いまのところ、ビデオメッセージが出たという報道はないですよね。
中川)「どうしたのだろう?」という懸念があります。ビデオメッセージ自体はコストが掛かるわけではありません。また、いままでのゼレンスキーさんなら当然、メッセージを送ると思うのです。あれだけ宣伝に長けている人が出していないというのは、少し引っかかります。裏で「出さない」という政治的判断があったのだと思いますが、何が動いているのでしょうか。復興には中国も積極的なので、その辺りがどれだけ入っているのか。
ビデオメッセージを出さない政治的判断には中国の影があるのか
中川)以前、インドネシアで日本が中国に入札云々で負けたことがありましたよね。あのように横取りするようなことを中国はやってきます。ビデオメッセージのことだけでそう考えるのは針小棒大なのですが、中国の動きなどを見ていると、中国はウクライナとも仲よくしているので気になりました。
飯田)確かにそうですね。支援を求めてゼレンスキー大統領はいろいろなところに行き、会談を行っています。先日はドイツのショルツ首相とも会ったばかりで、つい最近までは日本にも来るのではないかと言われていました。
中川)ビデオメッセージはコストがゼロなので、プロパガンダが大好きなゼレンスキーさんがやらなかったことは、重要視した方がいいと思います。
もともとつながりが深い中国とウクライナ
飯田)日本に(メッセージを)出すデメリットを考えると、対中国くらいしか逆に思い付かないですよね。
中川)あまり想像力を逞しくするべきではありませんが、インテリジェンス的な観点から見ると気になりました。
飯田)もともとウクライナは一帯一路の経由国でしたし、相当つながりは深いのですか?
中川)そうですね。中国は武器も輸入していましたし、ベタベタなつながりではありました。また低コンプラ国としても仲がよかったところもあります。常々、外相会談や習近平氏も含めた電話会談を行っており、決してつながりは切れていないのです。
ウクライナ支援に介入するメリットがある中国
飯田)ウクライナの立場を考えると、アメリカからお金が出ないなかで「いっそのこと」という思いがあるかも知れない。
中川)それはあると思います。中国としては、ウクライナという重要拠点に楔を打ち込めるのは相当プラスなので、お金を額面以上に使ってもいいはずなのです。通常の経済貿易以上にお金を使ってもいいことになると、間違いなく介入している。このような前提に立った場合、ゼレンスキー大統領のメッセージがなかったことは、私の立場からすると考えてしまいます。
最後の詰めで政治力学が一気に変わる可能性も
飯田)一方、ミュンヘン安全保障会議で中国の王毅氏が表立って言っていたのは、「いまは和平ではない」ということでした。
中川)決して、ロシアともウクライナとも言っていない。「和平ではない」とだけ言っている。どちらとも言っていないことがポイントです。中国は立場を明確にしており、絶対にどちらとは言わない。しかも、当事者が解決すべきであって、「中国は当事者ではない」と常に明言しています。ウクライナに対しても、「我々は表ではこう言っておくよ」と言える交渉材料にもなりますよね。
飯田)足掛かりはすべて残しておく。
中川)そのようなバックグラウンドを考えると、日本が経済復興で一致したこと自体はいいと思いますが、最後の詰めで政治力学が一気に変わるかも知れない。そこが懸念材料だと思います。
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