朝日世論調査「原発再稼働賛成50%・反対35%」が示す国民の声 女川原発2号機再稼働へ

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ジャーナリストの佐々木俊尚が2月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。女川原発2号機の再稼働について解説した。

朝日世論調査「原発再稼働賛成50%・反対35%」が示す国民の声 女川原発2号機再稼働へ

※原発イメージ画像

女川原発2号機、9月ごろ再稼働へ

東北電力は、2024年5月ごろとしていた再稼働の予定を延期していた宮城県の女川原発2号機について、現在行っている安全対策工事が完了する目処が立ったとして、新たな再稼働の時期が9月ごろになるという見通しを発表した。

飯田)工事そのものは6月に完了する見通しだそうです。

佐々木)女川原発に限らず、国民世論としては「再稼働を支持する」方向にきています。能登半島地震のあとに行われた朝日新聞の世論調査によると、原発の運転再開について賛成50%、反対35%だったのです。15%プラスで賛成が上回っています。去年(2023年)の調査では賛成51%、反対42%でした。賛成は51%から50%でほぼ横ばいですが、反対が42%から35%で7%減っているのです。

最新の世論調査で「原発再稼働反対」は7%減少

佐々木)今回の能登半島地震で、志賀原発では変圧器から油漏れがあったなどと言われましたが、それでも「いまのエネルギー高騰の状況では再稼働するしかない」と国民が考えているのだと思います。バランスの問題です。志賀原発に関しても「変圧器から油が漏れて火事になった」などと大騒ぎでしたが、火事ではなかったのですよね。変圧器も確かに油が漏れたのは事実ですが、一方で3.11のあと、福島第一原発事故の反省を受けて発電機を高台に移しており、多重化もしています。

飯田)電源の多重化。

佐々木)いろいろ対策してきちんと保たれている。変圧器が1つ壊れても、他からいくらでも電源は供給できるので、何の問題もありませんでした。また今回、津波が3メートルに達したのですが、当初は志賀原発側が気付いておらず、翌日から「実は3メートル潮位が上がっていました」と発表した。その際、「また隠している」と大騒ぎになりましたが、実際には震災(東日本大震災)のあと、志賀原発は標高11メートル地点に高さ4メートルの防潮堤などをつくり、合計15メートルの高さがあるのです。そのため、3メートル潮位が上がっても何の問題もない。しかし、この辺りはあまり報道されておらず、「危険だ、志賀原発は大丈夫か」と大騒ぎばかりしています。もう少しバランスの取れた報道ができないものかと思います。

原発が再稼働している九州ではTSMCの新たな工場建設などで経済が活気に満ちている

佐々木)しかし、メディアがいくら大騒ぎしてもエネルギー問題が解決するわけではないので、世論も「再稼働するしかない」と考える。実際に東京電力・東北電力の方はあまり再稼働できていないから、電気代がどんどん上がっています。一方で九州電力は再稼働しているので、電気代がかなり抑えられている。それもあって、台湾の半導体ファウンドリが日本に上陸し、安い電力で工場を稼働させているので、九州の経済は活気に満ち溢れています。

飯田)そのようですね。

佐々木)この背景には安い電力がある。そう考えると、東の方も再稼働させて電気料金を下げ、産業界が活発化する方向に持っていかないと、景気も上向かない。それがようやく国民にも認識されてきたのではないでしょうか。

女川原発がモデルになるくらい素晴らしい原発であることを認識するべき

飯田)既に再稼働している原発は加圧水型のものが非常に多く、女川原発が再稼働することになれば、沸騰水型が再稼働できるようになるかも知れない。

佐々木)女川原発に関して言うと、福島とは全然違って、同じ3.11の被災地でありながら高台にすべて設置しており、津波が起きても何の問題もなかった。なおかつ避難の受け入れ場所にまでなっています。

飯田)近隣の方々がそこに避難しました。

佐々木)ある意味、ここは「モデルになるくらいの素晴らしい原発」だと、もう少し認識されてもいいのではないでしょうか。

飯田)きちんと対策したものに関しては再稼働する。歴代政権も言っていますが、規制委員会も含めてなかなか……。

佐々木)規制委員会の規制が厳しすぎるという話もありますが、「多少厳しすぎるぐらいがいい」という意見もあるので、バランスの問題だと思います。決して、「すべて再稼働すればいい」というわけではありません。ただ、断層の問題などをあまりに言いすぎるのもどうかと思います。九州の川内原発について、「カルデラ噴火が起きたらどうするのだ」という批判がありました。

飯田)カルデラ火山などから。

佐々木)阿蘇山は8~9万年前に大噴火を起こし、九州一帯がすべて焼け野原になるような状態になった。しかし、そんなことが起きたら原発事故どころではなく、国が壊滅するような状況ですから、そこまでのリスクを考慮する必要があるのかどうかという議論はするべきでしょう。原発を稼働させる上でどこまでの対策が必要なのか、もう少し根本的な議論をしてもいいと思います。

今後、イノベーションが進む際、さらに電力が必要になる

飯田)これから先はイノベーション、あるいはサーバーを多用する場合も、相当な電力が必要になると言われています。

佐々木)生成AIはものすごく電力を使用するそうです。また、EVの話もあります。EV化については最近、欧州でもハイブリッドの方が売れているそうですが、最終的にはEVに行きつくでしょう。この調子で普及してすべてがEVになると、電力が足りなくなる。それは再三、トヨタ前社長・豊田章男さんがおっしゃっていました。この問題も考える必要がありますよね。

「原発」「再生可能エネルギー」「化石燃料」をどういうバランスで使うのか

飯田)電力をつくるために化石燃料を使うと、CO2を出すことにもなります。

佐々木)今後は原発、再生可能エネルギー、化石燃料をどういうバランスで使うのか。産業が活発化することと、地球環境を守ること、継続的に電力を供給できる安定性。この3つのバランスのなかで考える必要があります。「再生可能エネルギーだけが素晴らしい、原発は撤廃せよ」と言っているだけでは済まないことを、我々はいい加減学んだ方がいいと思います。

飯田)クリアカットな素晴らしい解決策は、世の中にはそうない。

佐々木)何でも白黒で語ろうとする人が多すぎます。我々の社会はグレーゾーンが多いのです。「真っ白」「真っ黒」などというものは世の中に1割程度しかないことを、もう少し認識した方がいいのではないでしょうか。

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