それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
ニッポンの技術を支える町工場が集まった、東京・大田区。区役所がある蒲田の商店街には、職人さんの胃袋を満たす餃子やとんかつなど、ボリュームたっぷりで庶民的な美味しい飲食店が軒を連ねます。そんな商店街や多くの地元の方に支えられたバスケットボールチームがあります。
チーム名は「アースフレンズ東京Z」。東京の城南地区をホームタウンに、10年前の2014年からプロチームとなり、2016年のシーズンからはBリーグに参入。去年(2023年)の秋から始まったいまのシーズンは、B3リーグに所属しています。
チームの立ち上げから現在に至るまで、チームを運営する会社で代表を務めるのは、山野勝行さん・48歳。20代後半でバスケットボール・トップリーグの試合を初めて観戦した山野さんは、その試合展開と選手の特徴に感激したそうです。
「なんて点が入るんだ! しかも多少は背が低くたって、スターになれる可能性がある。“小が大を倒す”のって面白いなぁ」
バスケットボールへの思いが抑えきれなくなった山野さんは、「自分でバスケットボールのチームをつくろう。夢は大きく、世界を目指す。そしてスポーツで世界とつながっていく。地球は友達、アースフレンズだ!」と考えるようになります。
最初は神奈川を拠点に、社会人のサークル感覚で始まったアースフレンズですが、2010年代前半に思わぬ幸運が舞い込んできます。バスケットボール界再編のなか、当時の2部リーグに属していた大田区のチームが、チーム事情から山野さんにこんなことを申し出てくれたそうです。
「アースフレンズにプロチームの権利を譲りたい。世界を目指しているんでしょう?」
またとないチャンスに山野さんも決心しました。勤めていた会社を辞め、自らチームを運営する会社を立ち上げます。アースフレンズは世界を目指すプロチーム「アースフレンズ東京Z」と名前を改め、新たなスタートを切ることになったのです。
世界を目指そうと立ち上がった「アースフレンズ東京Z」ですが、あくまでも手に入れたのはプロチームになれる「権利」だけでした。プロで通用する選手も監督もいない、全くゼロからのスタートだったのです。そのため何とか有名な監督を迎え入れ、少しずつ力のある選手を集めていきます。
ところが、肝心の本拠地が決まりません。Bリーグで活動するには、3000人以上が入る体育館が必要でした。その条件を城南地区で満たしていたのは「大田区総合体育館」だけ。しかし、まだほとんど活動実績のないチームには、なかなか使用許可が下りません。
「そうだ! 大田区の体育館なのだから、地元の皆さんに応援してもらおう」
そう考えた山野さんは、大田区の商店街組合や町内会の役員を務める方のもとを、1軒1軒訪ねていきました。そんな商店街の1つ、蒲田東口商店街で現在、副理事長を務める藤田義行さんは、当時は期待と不安が入り混じっていたと言います。
「チャレンジャーだなと思いましたが、『地元のチームにしたい』と言うので。蒲田から世界的な選手が生まれるかも知れない……そんな夢も広がりました。そうなると、『アースフレンズを応援しよう』という気持ちになりますよね」
チームと地元の皆さんが一緒になった情熱は、行政を動かします。「アースフレンズ東京Z」は晴れて大田区総合体育館を本拠地とし、Bリーグへの参入を果たしました。
地元のプロチームができたことで、町の風景も変わり始めます。アーケードにはアースフレンズを応援するフラッグが掲げられました。商店街が開くイベントにもプロ選手が参加することで、地元の中学生・高校生や子ども連れの若い家族の姿が日に日に増えていきました。
いま、4月上旬の最終節に向けて大詰めの戦いが続くB3リーグ。「アースフレンズ東京Z」は、1つ上の「B2」昇格への望みを何とかつないでいます。3月22~23日には「岐阜スゥープス」を迎え、今季最後のホームゲームが行われます。山野さんをはじめとするスタッフの皆さん、商店街をはじめとした地元の皆さんも、試合では声を揃えてチア「Zgirls」の皆さんと、「GO! Win! Z!」という声援を送るそうです。
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