東島衣里アナウンサー、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を学ぶ

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4月30日(火)、ニッポン放送アナウンサーの東島衣里とパラレルシンガーの七海うららが、女性ならではの健康やカラダのことについて正しく知り、日々を明るく前向きに過ごせるよう応援するスペシャル番組『東島衣里と七海うららのヘルスアップデート!~知っていますか?HBOCのこと~』(ニッポン放送・11時~12時)が放送された。

東島衣里アナウンサー、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を学ぶ

サブタイトルにもあるHBOCとは「遺伝性乳がん卵巣がん」のことで、一般の人よりも乳がんや卵巣がんなどの発症リスクが高まる体質のことを指す。番組では、“HBOC”の特徴や診断について、がん研究会有明病院・臨床遺伝医療部 部長の植木有紗医師が詳しく解説した。

東島:まずは、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)とはどんな病気なのか教えていただけますか?

植木:遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)とは、BRCA1BRCA2という遺伝子に、
生まれつき病気の原因となりうる変化をもつことで、乳がんや卵巣がんのリスクが高まる体質のことです。遺伝性腫瘍とよばれるもののひとつで、名前に「乳がん」や「卵巣がん」がつきますが、男性では前立腺がん、男女問わずに膵臓がんなどのリスクが高まることが知られているんです

東島:HBOCは、一般的ながんとは何が違うのでしょうか?

植木:一般的ながんとの違いは、生まれつきの遺伝子の変化が背景にあるかどうか、という点です。だれでも遺伝子はワンペア・2本持っています。お父さんから一本、お母さんから一本引き継ぐことでワンペア・2本になるわけですが、もし片方にがんの原因となる遺伝子の変化があると遺伝性の病気と考えます。ある遺伝子が癌を防ぐ役割を持つときに、もし片方が上手に働かなくなったとしても、もう片方が頑張っている間は、病気にはなりません。しかし、さらにもう片方にも働かないような変化が入ってくると、遺伝子の機能が失われてしまい病気の発症につながると考えられています。HBOCでも同様に、うまれつき片方の遺伝子に病気の原因となる遺伝子の変化があることによって、通常2回の変化が加わることでがんの発症につながるものが、1回の変化が加わるだけでがんの発症につながると考えられます。それによって、一般の人より若くしてがんになったり、同じ人が何回もがんになったりするという、HBOCの特徴につながります。

東島:遺伝子の変化というのは引き継がれることもあるんですね。

東島衣里アナウンサー、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を学ぶ

植木:そうなんです。遺伝子の変化というのは上の世代から脈々と引き継がれることが多いので、家族の中で同じようながんを経験している方が多い、いわゆるがん家系という特徴もあります。

東島:今お話された「がん家系」という言葉は私もよく耳にしますが、がんと遺伝の関係について改めて教えてください。

植木:がんが多い家系というのは、昔からも知られていました。その中には、HBOCのように遺伝子の変化を共有することでがんのリスクが高まる方々もいらっしゃれば、
似たような生活習慣をご家族で共有するためにがんのリスクが高まる方々もいらっしゃいます。日本人の二人に一人はがんになる、と言われる時代ですので、血縁者にがんと診断される方がいらっしゃるのは決して珍しいことではありません。我々が遺伝子の変化を原因とするがんを疑うきっかけとしては、一般的ながんの発症年齢に比べて若いことや、家族の中で同じようながんを経験する方が多いこと、そして同じ人が何回も様々ながんを経験されることが挙げられます。

東島:遺伝子の変化が原因の方の割合はいかがでしょうか?

植木:がんと遺伝の関連は様々考えられていますが、一般的にはすべてのがんの中で生まれつきの遺伝子の変化が関わっていらっしゃるのは全体の5%前後くらいではないかといわれています。裏を返すと、残りの90%以上の方は遺伝的な背景ではなく、加齢や生活環境などの要因が関連すると考えられているわけです。

東島:この数字を踏まえて改めてお聞きしますが、乳がん・卵巣がんの方の中でHBOCはどれくらいの割合でしょうか?

植木:乳がんや卵巣がんを経験された患者さんでHBOCと診断される割合は報告によって異なりますが、乳がんでは4%〜5%、卵巣がんでは10%〜15%という報告が一般的です。がん研有明病院では年間約800名の方が、この遺伝子の検査を受けられますが、全体で10%くらいの方に病気の原因となる遺伝子の変化が検出されています。とくに卵巣がんでは他の臓器のがんに比べて、BRCA1BRCA2の遺伝子が関わっていることが多いと推測されています。

東島:このHBOCはどうやってわかるんでしょう?
植木:HBOCの診断はおもに、医療機関で遺伝子を調べるような遺伝学的検査で行います。具体的には採血をして、白血球からDNAを抽出して、遺伝子の変化があるかどうかを調べます。乳がんや卵巣がん、前立腺がんや膵臓がんの患者さんの中には、保険で検査を受けられる方もいらっしゃいます。遺伝子の検査をして、BRCA1BRCA2の遺伝子に病気の原因となる遺伝子の変化が報告された場合に、HBOCと診断されます。

東島衣里アナウンサー、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を学ぶ

東島:なるほど、医療機関の検査により診断があると。ただ、診断されても必ずがんになるというわけではないということですね。

植木:その通りです。もし親や兄弟といった血縁者にHBOCと診断された方がいらっしゃる場合、遺伝学的検査によって、病気を発症する前に遺伝子の変化を知り、その後の対策に結び付ける方法もご提示できます。遺伝子の検査の意義は、患者さんご本人の治療や今後のがんのリスクを正しく見積もって対策を講じること、さらには血縁者の方々にも同様のリスクがあるか正しく評価して、もしリスクが高いのであれば早く見つけて、早く治療につなげる対策を行っていくところにあります。

植木医師はさらに、診断された後HBOCとどのように付き合っていくかや医師の対応などについても詳しく語った。この模様は5月7日(火)までradikoのタイムフリー機能で聴くことができる。

さらに、「世界卵巣がんデー」である翌日の8日からは、植木有紗医師によるHBOCの解説の“完全版”が『ニッポン放送PODCAST STATION』 他、各種PODCASTサイトで配信される予定だ。
健康診断も多いこの季節、番組をリスナーのあなたの健康を見直すきっかけにしてほしい。

 

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