衆議院解散…デジタル化と「政治とカネ」の問題

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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第388回)

解散翌日の国会議事堂 選挙後、どれだけの人が戻ってくるのか……

解散翌日の国会議事堂 選挙後、どれだけの人が戻ってくるのか……

10月9日、衆議院が解散されました。首相就任から8日後の解散、26日後の投開票はいずれも戦後最短です。怒号が響く中、“恒例”の万歳のタイミングはバラバラ。いささか歯切れの悪い解散シーンとなりました。

解散に先立ち、国会周辺はこの日、慌ただしい動きを見せました。午前は自民党が選挙対策本部会議で、いわゆる「派閥裏金問題」に関係したとされる計12人の議員の非公認を決定。一方、野党はそのほかの30人は公認されていると指摘し、立憲民主党の野田佳彦代表は午後開かれた党首討論で「国民感情から到底理解することはできない」と批判しました。これに対し、石破茂首相は「最終的に主権者たる国民が判断する。甘いとかいい加減とか一切考えていない」と反論。野田代表は「裏金隠し解散」と断じました。

一方、石破首相は解散後の記者会見で、今回の解散を「日本創生解散」と名付けました。「国民の納得共感なくして政治を前に進めることはできない」と、信を問う理由を説明。選挙の勝敗ラインは「自民・公明両党で過半数=233議席」としました。12人の非公認については「党でいかなる処分を受けたか、どのような金額であったか、それぞれの選挙区においてどれだけの信任を得ているかを総合的に判断した」と述べています。会見ではそのほか、地方創生の再起動、自衛隊の処遇改善に向けた関係閣僚会議の設置などが明らかにされました。

石破政権でひとつ気になるのは、デジタル化、DXへの取り組みです。所信表明演説ではデジタル田園都市国家構想実現会議の発展、教育改革へのデジタル技術の活用に言及していました。また、党の選挙公約では「暮らしを守る」の中に「デジタル」の項目が設けられ、「世界一AI フレンドリーな国を実現する」と明記されました。デジタルそのものを前面に押し出すというより、これを地方創生や教育改革に活用するという姿勢が見えてきます。

ただ、これまでの政権で強調されていたデジタル化、DXという言葉がややトーンダウンしているように見えます。マイナ保険証の扱いについて、石破首相はかつて現行の健康保険証との併用を「選択肢として当然」と語っていましたが、10月7日の衆議院本会議の代表質問では「健康保険証の新規発行終了について、法に定められたスケジュールによる進めていく」と明言。デジタル化については、負の部分の追及を避けるために、あえて目立たせていないとも考えられます。

とは言え、いずれは進んでいかざるを得ないデジタル化です。これについて指摘しておきたいことが一つあります。それは「政治とカネ」の問題との関係です。一見関係がないように思えますが、経済学者の野口悠紀雄さんが以前、ニッポン放送の取材に対し、このように話していました。

「国民が国に対して信頼を持つことが、マイナンバーカードが拡がる絶対に必要な条件だ。国に対する信頼は簡単に形成できるものではない。国民が“国は悪いことをしない”という信頼を持てるかどうか……一番基本的な問題だ」

政治とカネの問題が今後、どう処理されていくのか……国と国民との信頼関係構築のためには重要な視点です。どんなに優れたシステムがあろうとも、この信頼関係がないと、デジタル化は国民の理解を得られず、「画餅」に帰すことになります。自民党も、追及する野党もこうした視点での認識は乏しいかもしれません。

各党はすでに街頭演説に走るなど、事実上の選挙戦に突入しています。自民党派閥の裏金事件を受けた政治改革、物価高に対応する経済対策が主な争点になりますが、特に「政治とカネ」の問題がどう決着するのか、有権者に納得のいく説明ができるのか……ことによると、デジタル化進展の分水嶺になるかもしれません。そんな視点でも衆議院選挙の帰趨を見守っていきたいと思います。

(了)

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