車いすバスケットボール「天皇杯」、埼玉ライオンズが悲願の初優勝!
公開: 更新:

車いすバスケットボール「天皇杯」初優勝の埼玉ライオンズ
第51回目の「天皇杯」は、新たな50年への第1歩
3月6日(金)〜8日(日)の3日間、お台場にある「TOYOTA ARENA TOKYO」で、車いすバスケットボールのクラブチーム日本一を決める『天皇杯 第51回日本車いすバスケットボール選手権大会』が行われ、2年連続で準優勝だった埼玉ライオンズが、66対47で、3連覇中の神奈川VANGUARDS(バンガーズ)を下し、初優勝を飾りました。
【車いすバスケットボールのルール】
・ルールは、一般のバスケットボールとほぼ同じ。
・試合は、車いすに乗った5人対5人で行われ、試合時間は、10分間を4クオーター、合計40分で行われます。
・車いすを手で漕ぐ事を「プッシュ」と呼び、ボールを持ちながら、3回以上「プッシュ」をすると『トラベリング』。『ダブルドリブル』はなく、プッシュ2回以内で、再度、ドリブルをすれば、何度でもドリブルができます。
・もっとも特徴的なルールは「選手とチームの持ち点」。選手は、体を動かせる範囲によって、4段階にクラス分けされます。最も重い障害の1.0から、2.0、2.5、4.0、最も軽い障害の4.5まで、0.5刻みの点数を持っています。
チームは、コートに出ている5人の選手の合計点を14点以内にしなければいけません。
このルールによって、すべての選手が平等にプレーをすることができます。
●「天皇杯」の特別ルール
女子の参加(男女混成チーム)の出場が可能
障害の有無にかかわらず、ルール(持ち点制)に従えば、選手として健常者の出場が可能。

埼玉ライオンズ(緑)が、神奈川VANGUARDS(白)を終始押さえる
“4連覇”のかかった神奈川か、“シルバーコレクター”返上なるか埼玉か
決勝のカードは、3年連続となる、神奈川VANGUARDS(バンガーズ)対埼玉ライオンズ。
神奈川は4連覇がかかる戦い、埼玉ライオンズは、2年連続、神奈川に決勝で敗れているため、その雪辱をかけた戦いになりました。
神奈川のスターターは、丸山弘毅(2.5点)塩田理史(3.0点)宮本涼平(1.0点)渡辺将斗(4.0点)持丸英也(3.0点)
埼玉のスターターは、植田紘公(2.5点)北風大雅(4.5点)大山伸明(4.5点 健常者)久我太一(1.5点)古川諒(1.0点)
練習試合をよく行う相手との対戦ということで、手の内を知っている為か、なかなか先制点がはいりません。しかし、埼玉・大山が先制点を挙げると、北風・大山コンビがリズムを掴みます。第1クォーターは、埼玉が19対11とリードして第2クォーターに。
神奈川は、丸山、塩田、持丸を中心に攻めますが、リングに嫌われ、得点が入りません。対して埼玉は、北風、大山、古川を中心に、リバウンドも制し、第2クォーター、第3クォーターでジリジリとリードを広げます。
第4クォーターは、神奈川も意地を見せ追い上げますが、ここぞというところでリードを広げられ〈66対47〉で、埼玉ライオンズが念願の「天皇杯」初優勝を飾りました。
埼玉ライオンズ 中井健豪監督
「優勝して嬉しいんですけど、何か複雑な気分で。嬉しい気持ちもあるし、目標を実現した安堵感もある。でも少し寂しい気持ちもあるし、複雑な気分だなと思っています。
(3年連続、同じ神奈川が決勝の相手になりましたが)因縁の相手ではないんですよ、VANGUARDSさんって。実は1週間前の練習試合もVANGUARDSさんとやっていて。
彼らは、ウチの練習に凄い来てくれるんですよ。だから、ライバルでもあるし、同志みたいな関係で。1週間前も「決勝で会おうね」と話していたので、なんか、感慨深いですね。
今回の大会は、用意をしてきた事をそのまま実行できたので、今日の試合を含めて、想定内のゲームプランをしっかりやってもらえたかなと思います。
今回のスターターは、今年のチームを象徴するラインナップだと思います。特に、植田と久我というのが、今の僕らのチームカルチャーをそのまま表すような選手で、センスがあるかとか、能力が高いのかというと、決してそういう事ではない。とにかく一生懸命頑張って、一つ一つ課題を潰して、成長をしていく。
〈彼らを使ったケミストリーのあるユニット〉というのが、スタートのラインナップです。だから、どういう相手になったとしても、僕はこのメンバーでスタートするぞ!と思っていました。」

チームを鼓舞し続けた埼玉ライオンズの北風選手(左)大山選手(右)が、試合終了の笛で、ガッチリ握手
埼玉ライオンズ・北風大雅選手(Cap 4.5点)
「嬉しいです、うれしい。天皇杯までの道のりは本当に苦しかったので、この苦しかった1年間が報われたなと思います。2年前の天皇杯・決勝で、リードしながらひっくり返されたので、それが脳裏にあって、まくられる可能性もあったので、そこは地に足をつけてがんばりました。
優勝へのプレッシャーはありましたが、それも楽しもうと。昨日の試合(準決勝 対NO EXCUSE)に勝った事も自信になったので、楽しくバスケットが出来ました。
サポーター、ファンの皆さんの熱い声援があったので優勝できました。スタンドの(チームカラーの)緑色を見て、相手に負けていないな!って思いました。」
埼玉ライオンズ・大山伸明選手(4.5点 健常者)
「今日の試合は、ベンチを含めた全員の力で、チームワークでやり切ろうという気持ちでいたので、みんなの良さを引き出せるようにプレーをしました。
昨日の試合(準決勝 対NO EXCUSE)は、限られたメンバーで戦って、本当に苦しい試合だったんですけど、今日は、全員の良さを引き出せましたし、若手には良い経験になったと。
決勝の舞台で、試合を勝ち切ることが出来た。これは、若手の成長の糧になるのかなと思っています。」

神奈川VANGUARDS 丸山選手がドライブで得点を狙う
神奈川VANGUARDS・前田柊選手(Cap 1.5点)
「やりきったなとは思います。自分たちのミスだったり、崩れた訳ではなくて、いままでやってきた事を出し切った結果、相手の総合力が高かったかなと思います。
悔しいですけど、全国で2チームしか立てない舞台に立てた事を、チーム全員で喜びたいと思います。
昨年のチームから、主力3人が海外に挑戦して、その事をよく言われますが、僕らにとってはあまり関係無くて、今日、試合に居た10人が神奈川VANGUARDSなので、今のメンバーで素晴らしい所まで来れたなという事に尽きます。」
神奈川VANGUARDS・丸山弘毅選手(2.5点)
「最終日に、センターコートで、試合が出来た事は嬉しかったです。センターコートでの試合は、最高だったんですけど、やらなきゃという気持ちが強すぎて、前のめりになりすぎて、チームに迷惑をかけてしまったな、という反省がとても大きいです。
(スタンドからの声援は聞こえていましたか?)聞こえていました。ここまで良い雰囲気にしてもらって、感謝しています。」
●「天皇杯」順位
優勝:埼玉ライオンズ
準優勝:神奈川VANGUARDS
3位:NO EXCUSE
4位:千葉ホークス
個人表彰「オールスター5/オールスター5 MVP」
クラス1:宮本涼平(みやもと りょうへい)(神奈川VANGUARDS)
クラス2:丸山弘毅(まるやま こうき)(神奈川VANGUARDS)
クラス3:熊谷 悟(くまがい さとる)(埼玉ライオンズ)
クラス4:朏 秀雄(みかづき ひでお)(NO EXCUSE)
オールスター5 MVP 北風大雅(きたかぜ たいが)(埼玉ライオンズ)

NO EXCUSEの攻撃を引っ張った朏選手(左)香西選手(右)
3位決定戦を制したのは、NO EXCUSE
3位決定戦は、千葉ホークス対NO EXCUSE。どちらも優勝候補の一角に上がっていたチームです。特にNO EXCUSEは、前日に行われた準決勝・埼玉ライオンズとのシーソーゲームを落としているだけに、試合の入り方に注目が集まりました。
千葉のスタメンは、川原凛(1.5点)作田竜哉(4.5点 健常者)植木隆人(2.0点)緋田高大(1.0点)池田鉱平(4.5点)
NO EXCUSEのスタメンは、原田翔平(1.0点)大嶋義昭(1.0点)山口健二(4.5点)朏秀雄(4.0点)香西宏昭(3.5点)
NO EXCUSEは、日本代表にも選ばれる香西・朏(みかづき)を中心にボールを支配、19対11で第1クォーターをとると、第2・第3・第4クォーターも、僅差ながらリードし〈67対50〉で千葉ホークスを下し、昨年に続いて3位となりました。
3位 NO EXCUSE 及川晋平監督
「NO EXCUSEのいつもの強いバスケットが出せたという事で、ベンチのプレーヤーも出せて、良かったかなと思います。
今日みたいな試合で難しいのが、前日出し切って負けたという日に、どうやって試合のスタートを切るかという所で、「朝、前向きに今日の試合を獲りにいく」という気持ちに、チーム全員で切り替えられたのが、スタートの良さに現れたかなと思います。
目標は優勝だったので、3位という結果はあれですが、一番良かったのは、こんな大きな素晴らしい会場で、選手たちの力を凄く引き出せた事かなと。これまでの車いすバスケットで見た事がないようなプレーを、素晴らしい会場で出来たという事が、振り返っての一番の良い事かなと思います。
大歓声の中で、車いすバスケをするという、本当に恵まれた環境を作って頂いて、応援する人が増えてくるという事は、選手達も〈活躍したい〉という気持ちで練習ができるので凄く良いなと、みんなに支えられているなと思います。」
一般社団法人日本車いすバスケットボール連盟のYoutubeチャンネルでは、今回の天皇杯の試合を、視聴する事ができます。
www.youtube.com/@jwbf

机付き車いす用の観戦スペースも両サイドに用意されている。
車いすスポーツでの使用も考えて建設された「TOTOTA ARENA TOKYO」
1970年、駒沢オリンピック公園総合運動場体育館に7チームが集まり「第1回車椅子バスケットボール競技大会」として始まった大会。
昨年は50回という節目の大会が行われ、51回目となる今年は〈新たな50年への第一歩〉と銘打ち、一般社団法人日本車いすバスケットボール連盟に登録するクラブチーム72チームのうち、57チームが今大会のブロック予選会に参加。
そして、開催アリーナを、B.LEAGUE アルバルク東京の本拠地「TOYOTA ARENA TOKYO」とし、車いすバスケットボールの更なる成長を目標として開催されました。
大会前の記者会見で、各チームの選手が楽しみにしていたのが「TOYOTA ARENA TOKYO」という会場でした。
選手の皆さんは、B.LEAGUE・コンサート会場として、最新の設備を持つ「TOYOTA ARENA TOKYO」に興味津々。当初から車いすスポーツでの使用も想定し、バックヤードや観客席での車椅子の使い心地などを、有識者を含め、建設されたアリーナですが、車いすスポーツでの使用は初めて。
その使い心地、雰囲気などを、車いすバスケットボールのレジェンド・宮城MAXの藤本選手に伺いました。

宮城MAXで、若手を引っ張りながらプレーをした藤本選手
宮城MAXの選手で、日本代表、海外では、ドイツ・スペインなどのヨーロッパや韓国でもプレーをしてきた車いすバスケットボール界のレジェンド・藤本怜央選手に、今回会場となった「TOYOTA ARENA TOKYO」について伺いました。
宮城MAX 藤本怜央選手
「去年出来たばかりの素晴らしいアリーナで、エンターテインメント性も高く、選手をプロフェッショナルに引き上げてくれる環境の中でやらせてもらえるのは、本当に素晴らしいなと思います。
できれば、こういう場所で試合をするのが、年1回ではなく、リーグ戦もそうですし、別のリーグ戦のファイナルとかでも行って欲しいと思いますし、全国各地で、車いすバスケットボールを見られるような環境・ムーブメントが、これをきっかけに起きれば良いなと思います。
(TOYOTA ARENA TOKYOの)バリアフリーなところは、とっても感じました。動線も非常にわかりやすいですし、通路のスペースとかも、車いす同士が、道を譲る事なくすれ違えるような広さで、本当に配慮されているなと感じます。
世界の色々な所で試合をしてきましたが、控え室の使いやすさとかも重要で、試合に集中するための一番重要なスペースなので、使いづらいと選手は、結構、ストレスを感じるんです。そういう所に配慮をして頂いているこのアリーナは良いなと感じます。」
と、新しいアリーナについて話してくれました。





