3月26日のダイヤ改正を前に「はまなす」の廃止をもって、定期列車が無くなったJRの「急行」。
この「急行」が5月14・15日の2日間、静岡県内で「復活」しました。
急行「トレインフェスタ」号と名付けられたこの列車は、両日に静岡市内で開催された「グランシップトレインフェスタ2016」に合わせた臨時列車。
トレインフェスタ1号~4号」まで、熱海~静岡間、東静岡~浜松間でそれぞれ1往復ずつ運行されました。
さあ、5月14日朝8時半過ぎ、この「トレインフェスタ」号に充当されるJR東海373系電車が3両編成で東海道本線・熱海駅の3番線に入ってきました。
ヘッドマークも特別に「トレインフェスタ号」オリジナルのものが用意されました。
列車名の由来になった「グランシップトレインフェスタ」は、毎年静岡市内の「グランシップ」で開催されている日本最大級の鉄道イベントで、今年で17回目。
「静岡ホビーショー」と同時開催されており”ホビーのまち・静岡”を代表するイベントとして、例年多くの人を集めています。
年を追うごとに盛り上がりも大きくなり、今年はついに全車指定席の「臨時列車」の運行が実現!
私も1か月前の発売日に「トレインフェスタ」号の指定急行券を購入、久しぶりの「急行」列車に乗車してみました。
今回乗車したのは、5/14(土)に運行された急行「トレインフェスタ1号」。
始発・熱海駅の電光掲示にも「急行トレインフェスタ」の文字が表示されました。
1号は熱海8:37発で途中、三島、沼津、吉原、富士、東静岡に停車し終点・静岡に9:46の到着。
停車駅は東海道線との接続路線がある駅と、会場の最寄り駅・東静岡。
ダイヤは2007年まで運行されていた特急「東海1号」のスジに近く、停車駅は前身の急行「東海」を彷彿とさせるのもファン心をくすぐります。
現在は特急「ふじかわ」「伊那路」を中心に活躍する373系電車のシートに腰掛け、列車が走り出すと程なく丹那トンネルへ・・・。
373系電車は本来、特急用車両ですので、昔の急行のようなボックスシートとは違って、リクライニングも効いて快適そのものです。
合わせて購入したのが、週末の静岡エリアを”乗り鉄”する時に使える「休日乗り放題きっぷ」。
東海道本線(熱海~豊橋間)、御殿場線(国府津~沼津間)、身延線(富士~甲府間)が2,670円で1日乗り放題になるきっぷです。
熱海~静岡間の往復(2,640円)+αで元が取れ、東京方面からは熱海駅・新幹線乗換改札脇のきっぷうりばで購入可能です。
373系電車には、車端部に4人掛けボックスシートの「セミコンパートメント」席があります。
今回の「トレインフェスタ」号では、一部のコンパートメント席は発券されず、記念撮影スポットになっていました。
列車の乗務を担当する浜松運輸区の皆さんによる手作りのボートのようです。
合わせて「トレインフェスタ」に出展している静岡県内の私鉄各社の沿線案内などもあり、接続駅では各社線の紹介放送も行われました。
「トレインフェスタ」が各社の垣根を超えて”静岡の鉄道まつり”となっている様子が伺えます。
「トレインフェスタ」号は身延線と接続する富士を9:10に出ると、東静岡までノンストップ。
「富士川(ふじかわ)」の橋梁を渡って、静岡県の中部地方に入っていきます。(読みはふじ「か」わと濁らないのが基本)
富士川は電気の境になっていて、ココから東が50ヘルツ、西が60ヘルツで電力会社も変わります。
現在は、静岡県富士市と富士宮市が富士川の両岸に跨っており、同じ市内でも違う電気が混在しています。
なお、鉄道写真でよく使われる東海道新幹線の富士川橋梁は、さらに下流を渡っています。
富士で概ね席が埋まったところで、乗車記念のポストカードが配られました。
JR東海をはじめ遠州鉄道、天竜浜名湖鉄道、大井川鐵道、静岡鉄道、岳南電車、伊豆箱根鉄道、伊豆急行のうち5社分のポストカードが1セットに・・・。
せっかくの臨時列車、乗車記念のグッズがもらえるのは有難いですよね。
合わせて「トレインフェスタ」のJR東海ブースへ足を運ぶと、別のポストカードもゲットできる「引換券」兼アンケートも。
この日は「トレインフェスタ」に合わせて開催された「さわやかウォーキング」の案内チラシも配布されました。
由比~興津間は、静岡の東海道本線では貴重な駿河湾が見える区間。
国道1号を走るクルマと並走する区間でもあります。
この日は霞んでいましたが、対岸の伊豆半島もうっすら見えました。
今は静岡市の一部となっている由比は、駿河湾の名産「サクラエビ」が水揚げされる港町。
やっぱり、こういった区間を走ると「駅弁」が恋しくなってくる頃ですよね。
「トレインフェスタ」は、年1度の静岡県内の駅弁屋さんが集結する機会でもあります。
実は静岡、知る人ぞ知る「駅弁王国」!
JRに入っている駅弁屋さんだけで伊東駅「祇園」、沼津駅「桃中軒」、新富士駅「富陽軒」、静岡駅「東海軒」、浜松駅「自笑亭」の5社もあります。
このほか私鉄各駅で売られている駅弁もあり、1つの県でこれだけ「駅弁」が暮らしに定着している県は47都道府県随一と思われます。
今回は「トレインフェスタ」に出展した5社を、1日1社ずつ紹介。
トップバッターは、先ほどの車窓に見えた伊豆半島からの出展、「4/23」の記事でもアップした伊東駅弁「祇園」です。
「祇園」は「トレインフェスタ」に、名物の「いなり寿し」と「おにぎり弁当」を出品。
加えて伊東を代表するお茶「ぐり茶」のペットボトルと、昔懐かしい土瓶のお茶も販売していました。
「いなり寿し」はその製造過程を含めて紹介しましたので、今回は「おにぎり弁当」をいただきました。
包装はいわゆるランチボックスのような造りになっていて、紙容器のミシン目を持ち上げると持ち手が現れ、開封口もあります。
ロゴはおむすび弁当ですが、名称は「おにぎり弁当」が正式のようで、ウェブ等の紹介も「おにぎり弁当」となっています。
おにぎりは「しゃけ」「わかめ」「梅干し」の3種類、特に「梅干し」の白いご飯の塩加減が絶妙です。
これに鶏の唐揚げ、卵焼き、タタキゴボウなどのシンプルなおかずが加わります。
味わっていただきたいのが、もう1つの祇園の名物となっている「鶏のから揚げ」。
やや大きめの鶏肉にガブリと喰らいついた時、ジュワッと口の中に広がる肉汁が駅弁トップクラスの秀逸さ。
安価にこの”ジュワッ”が体感できるのは、何とも言えない「幸せ」です!
「トレインフェスタ」本編に先駆けて、伊東駅の駅弁を紹介しましたが、急行「トレインフェスタ」号は、定刻通り9:38に東静岡駅に到着。
東静岡は「トレインフェスタ」の会場でもある「グランシップ」のオープンに先駆けて1998年に開業した駅で、東海道本線の中では新しい駅の1つです。
静岡駅から1駅ということもあり、これまで定期、臨時を含めて特急、急行が停車したことは無く、今回が初めてのコト。
共に設定された浜松始発の急行「トレインフェスタ2号」は東静岡行として運行、東静岡が「終着」となった列車も初めてなんだそうです。
JR東海静岡支社によりますと、2日間にわたって運行された急行「トレインフェスタ」号、およそ1000人の方が利用したということです。
東静岡駅に初めて停車した急行列車「トレインフェスタ1号」は、少し長めに4分ほど停車。
乗っていた”鉄分濃いめ”の皆さんも一旦ホームに降りて、その”歴史的瞬間”をカメラに収めます。
ココで下りて「トレインフェスタ」へ向かうことも出来ましたが、今回は終点・静岡まで乗車。
「トレインフェスタ」に合わせた”サプライズ”イベントも開催されることが分かり、急きょ参加することに致しました。
その模様は、また次回・・・。
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/