車窓も駅弁も2度美味しい!~浜松駅「ひつまぶし」(1,650円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

By -  公開:  更新:

bl160529-1

浜松から東海道線で豊橋方面へ10分あまり、東海道線は浜名湖に浮かぶ島「弁天島」に差しかかります。
浜名湖にかかる鉄橋は、東海道線を代表する撮影ポイントとして有名。
東海道新幹線も並行しており「浜名湖」が見える車窓は、東海道随一の景色のいい区間です。
今回は弁天島駅の1つ先、江戸時代は関所があった新居町駅から徒歩15分、バス停2つ分ほど戻った西浜名橋付近を訪問。
6両編成の313系電車が西日を浴びながら、豊橋方面へ向かって勢いよく渡っていきました。

bl160529-2

一方、同じ静岡県内の東海道線・金谷~菊川~掛川間は、特に茶畑が多い区間を走ります。
特に5月は新茶の季節、緑が眩しい中を列車が走り抜ける様子は、見応え十分です。
画像は2013年5月、ニッポン放送の番組で「相良油田」の取材中に出逢った静岡方面行の上り普通列車。
この時間帯は313系電車+211系電車併結の5両編成で、茶畑の中を走り抜けていきました。
さあ、東海道線を代表する「浜名湖+茶畑」の車窓で思い出す駅弁といえば・・・?

bl160529-3

「うなぎとお茶」の組み合わせ、浜松駅弁「自笑亭」の「ひつまぶし」(1,650円)!
浜松周辺は県庁所在地・静岡市周辺より、名古屋の影響が強い地域ですので「ひつまぶし」のような名古屋めし駅弁があっても違和感がありません。
しかも「自笑亭」の「ひつまぶし」は、温かい缶の緑茶もセットになっているのが嬉しいもの。
浜松駅の売店では本体のみが陳列されていて、頼むと手渡しする直前に保温器からお茶を取りだしてくれます。
ちなみにセットになっている有名ブランドの「おーいお茶」も。実は静岡県富士市の工場で作られているんですよね。
(参考:伊藤園ホームページ)

bl160529-4

「ひつまぶし」といえば、1杯目は「そのまま」、2杯目は「薬味」を添えて、3杯目は「茶漬け」でいただくのが基本。
ただ「自笑亭」の駅弁版「ひつまぶし」では、3度ではなく「2度」で味わうことが推奨されています。
前半はそのまま「うなぎ飯」として味わえるように「たれ」と「山椒」が付いています。
後半は粉末の「昆布茶」を振りかけ、お茶を適量かけてお好みで山葵を添えて「うなぎ茶漬け」に・・・。
案内のしおりには、鰻の風味が損なわれないよう「お茶の掛け過ぎ」に注意する旨も丁寧に書かれています。

bl160529-5

面白いのは、わさび菜漬けと紅しょうがの間にある「うなぎの肝の佃煮」。
肝が苦手な人のために、蒲焼のたれで煮込んで食べやすくしたそう。
しおりには、肝に多く含まれるとされる「ビタミンA」の成分と人間の「目」に関する説明書きも・・・。
ビジネス需要の高い東海道新幹線、最近は電源コンセントが設置された車両も多くなり、車内でスマホを見たりPCを立ち上げる人も多くいます。
目を酷使する人にとっては、ちょっと耳寄りな話も!?

bl160529-6

さあ、薀蓄はこの程度にして、いよいよいただいていきますよ!
まずは香ばしい匂いを漂わせながら「たれ」をかけて「うなぎ飯」。
合わせて山椒も振りかけたら、列車の中で早くも「うなぎ屋さん」気分です。

bl160529-7

半分ほどいただいたところで昆布茶などを振りかけ、久しぶりにパカッと缶の茶を開けてドバドバっと・・・。
「うなぎ飯」って味わいとしては単調なので、こういったアレンジの付け方を考えた人は改めて凄いなぁと思ったり。
一方、新幹線の中でも、普通に折詰の駅弁を開いている人はいるのですが”調理”をする人はあまりいないもの。
ある程度の乗車時間があれば、こういった「作業」がある駅弁は、退屈な時間を楽しい時間に変えてくれます。
他の人があまりやっていないことでもあるので、ちょっとした優越感にも浸れそうです。

bl160529-8

「うなぎ茶漬け」用にスプーンが付いているので、サラサラっとかきこんで一丁上がり。
口の中もサッパリして、心地よい満足感に溢れます。
東京~浜松間は、東海道新幹線「ひかり」でおよそ1時間半。
浜松から上り「ひかり」に乗り込めば、「ひつまぶし」を食べ終わるとちょうど富士山くらい。
お腹いっぱいウトウトすれば、きっと多摩川を渡っていることでしょう。

bl160529-9

名古屋周辺の快速列車の中には、浜松まで直通運転する列車もあります。
訪れた日は豊橋~岐阜間で快速運転を行い、滋賀県まで直通する新快速・米原(まいばら)行の313系電車が停車中でした。
在来線の東海道線では、ダイヤも車両も”東西の境目”となる「浜松駅」。
浜松から東は、普通列車中心、ロングシート車両がメイン。
浜松から西は、快速列車中心、クロスシート車両がメイン。
そんな東西の「鉄道文化」の違いを感じながら、東海道の旅を楽しむのもまた一興です。

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

Page top