今年4月デビューした新潟県の第3セクター「えちごトキめき鉄道」の観光列車「えちごトキめきリゾート・雪月花」。
定員わずか45人・2両編成の鮮烈な「赤い列車」が、週末を中心に上越妙高~糸魚川間を1往復しています。
雑誌「自遊人」、人気の宿「里山十帖」でおなじみのクリエイティブディレクター岩佐十良さんが企画・プロデュース。
六本木のレストラン「Ryuzu」の二つ星シェフがプロデュースしたフレンチが食べられるなど、早くも話題沸騰!
1等車クラスの居住性をウリに日本のみならず海外のTV局が取材に入るなど、世界的にも注目を集めている列車です。
(参考:設計担当・川西康之氏HP「イチバンセン」)
「雪月花」は徹底して「新潟産」にこだわった列車でもあります。
「前回」ご紹介したように、車内で出される食事は、食材が新潟県産なのは当然。
新潟産のオリジナルワインが飲める2号車の「さくらラウンジ」では、床の安田瓦にも注目。
「安田瓦」は新潟県阿賀野市で作られている伝統の瓦で光沢のある鉄色が特徴、もちろん鉄道車両に「瓦」が使われるのは初めてです。
ちなみに「雪月花」の車両も「新潟トランシス」製なので、れっきとした「新潟産」です。
*こちらの記事でも詳しくご紹介しています。↓↓
二つ星シェフの技+駅弁屋さんのハイブリッドフレンチ!~えちごトキめきリゾート・雪月花「上越妙高駅発・雪コース」(14,800円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】
1号車は2号車と変わって「越後杉」が使われた黄色ベースの明るい雰囲気の車両。
1人利用や「食事なし」(6,000円)のコースで申し込んだ人はこの「1号車」となります。
景色の美しいほうを向いて座れる席もあり、気軽に楽しむにはちょうどいい車両かも。
ちなみに、この越後杉を表紙に使ったメモ帳が車内で販売されているので、お土産におススメ!
1号車の展望ハイデッキは「フリースペース」なのが有難いところ。
上越妙高10:19発の列車では、コチラが先頭になることが多いので、誰でも運転士気分に浸れます。
特に最初の「上越妙高→妙高高原」間は25パーミルの登り坂が続くこともあり、ぐいぐい登る感じがいい気分!
ちなみに”宿泊経験者限定”のあるある感ですが「椅子」のチョイスが「里山十帖」っぽい感じ。
人気のポジションなので、私・望月も二本木駅の停車時間中にちょびっと座ってみました。
妙高高原を11:27に発車した「雪月花」は「妙高はねうまライン」を直江津へ・・・。
始発の上越妙高はスルーして日本三大夜桜で有名な「高田」では、新潟からの特急「しらゆき」と交換。
「しらゆき」は上越妙高で北陸新幹線に接続して、北陸エリアと新潟を結ぶ役割を担っています。
なお「しらゆき」に使われているJR東日本のE653系電車、元は「フレッシュひたち」だった車両です。
夜桜の高田、謙信の春日山と過ぎて、いよいよ直江津・・・直江津駅で待ち受けていたのは!!!
なんと、直江津駅弁「ホテルハイマート」の立売りの方でした!
「雪月花」の登場に合わせて、直江津駅に「駅弁の立売り」が復活していたのです!!
嬉しくて思わず涙が出そうになりました!!!
今や駅弁の立売りがあるのは、全国でも下今市(栃木)、美濃太田(岐阜)、折尾(福岡)、人吉(熊本)くらい。
「雪月花」に乗ることで、数えるほどしかない貴重な風景が見られるようになったのは、本当に喜ばしいことです!
直江津駅では、長年「ホテルハイマート(以下ハイマート)」と「ホテルセンチュリーイカヤ(以下イカヤ)」の2社が駅弁を販売していました。
元々、直江津は信越本線と北陸本線が接続する交通の要衝で、新幹線開業まで「はくたか」「北越」といった特急が頻繁に発着。
日中、列車が発着するホームでは、2社が程よい距離感を保って台車売りをしていました。(画像は2003年、筆者撮影)
片方で「駅弁」を買ってしまうと、もう片方のお店は「お土産に駅弁はどう?」と呼び掛けてきたりするのが直江津駅の日常でした。
ところが「イカヤ」は、平成20(2008)年に事業の見直しに伴って駅弁から撤退。
残った「ハイマート」は、厳しい吹雪の日も直江津駅のホームに台車を出して、直江津駅の駅弁を守り続けてきました。(画像は2013年、筆者撮影)
しかし、北陸新幹線の開業に伴って「ハイマート」も、販売のメインを上越妙高駅に移すことに・・・。
直江津駅では改札前に小さな台車を出す程度になっていたのですが、そこへ昔懐かしい「立ち売り」が復活したわけですからこれはスゴイこと!
立ち売りが行われるのは「雪月花」が直江津駅に停車している間、上越妙高発では週末の12:28~12:38の10分間となります。
訪れた日「ハイマート」の立ち売りの方が持ち合わせていた直江津駅弁は・・・?
「鱈めし」「磯の漁火」「甘海老天丼」「海の幸弁」「ほたてごはん」「かにずし」・・・とほぼフルラインナップ!
実はこの立ち売り、「雪月花」1号車の食事なしコース(6,000円)で乗車した人向けに行われているものです。
「雪月花」のパンフレットにも「ハイマート」の駅弁を食事なしコースの方へおススメ・・・とあります。
さらに「昔ながらの立売りスタイルで販売します」とまで書かれているんです。
望月は食事付コースで乗っていましたので、すでにお腹いっぱいですが「立売り」から駅弁が買えるのなら、それは「別腹」というもの!
全国探してもまず出来る体験ではありませんから、土産代わりでも「立売りから駅弁を買う体験」をしておいて全く損はありません!!
ココまでくると「雪月花」って、駅弁好きのためにあるような列車です。
食事付コース(2号車)では「イカヤ」が調理した弁当、食事なしコース(1号車)では「ハイマート」の立ち売り駅弁。
長年、直江津駅弁で切磋琢磨した2社の「食」というものにちゃんと着目してくれるなんて・・・感慨もひとしおというものです。
立ち売りの方から買い求めたのは、ハイマートの看板駅弁「鱈めし」。
直江津(上越妙高)で迷ったら、何はともあれ「鱈めし」を選んでおけば間違いなし!
JR東日本エリアでは毎年秋に「駅弁味の陣」という駅弁コンテストをやっています。
最優秀駅弁は「駅弁大将軍」と称されますが、その初代・平成24(2012)年の大将軍に輝いたのが、この「鱈めし」。
発売開始は平成4(1992)年ということで、発売から20年で輝いた栄冠でした。
実は初回の「駅弁味の陣」はJR東日本の大宮、高崎、新潟、長野支社エリアだけで行われました。
でも、高崎エリアの「峠の釜めし」「だるま弁当」など、数々の名駅弁を抑えての1位ですから十分な実力派です。
(画像は2013年、直江津駅にて筆者撮影)
ハイマートが誇る「鱈めし」のツボは、棒鱈の甘露煮と塩たらこによる「味のハーモニー」。
甘いのと塩辛いのがちょうどいい塩梅なんです!
もちろん「棒鱈の甘露煮」は骨まで柔らかく煮込まれており、煮込まれた骨の部分をかじる時のコリッ!がクセになります。
塩たらこも中の赤みがちょいと残った絶妙な仕上がり。
さらに上越産米を使った「塩昆布の炊き込みご飯」と「鱈の親子漬」が脇を固めて、食べる者の箸を休ませません!!
ハイマートの「鱈めし」は東京駅「駅弁屋・祭」をはじめ、首都圏の駅弁屋さんでもしばしば見かける駅弁です。
でも、調製工場のスグそば・直江津駅で現地の空気を吸い、風を感じながら「立ち売り」の方と直にお金をやり取りして買った「鱈めし」はより格別!
お腹だけでなく、心まで満たしてくれるのが「立ち売りの駅弁」なのです。
最近は上越妙高駅の新しい店舗に「山崎屋」という昔の屋号も復活させている「ホテルハイマート」。
加えて「立ち売り」も復活させてくれたのは、駅弁文化の継承という点でも素晴らしいことだと思いました。
そのきっかけとなった観光列車「えちごトキめきリゾート・雪月花」。
「えちごトキめき鉄道」の本社のある駅に、新たな「トキめき」が生まれたと言っていいでしょう。
もしも「食事付」コースが取れなくても、これは十分に乗る価値アリです!
「雪月花」の旅は次回も・・・。
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/