JR青森駅で発車を待つ701系電車は、津軽線の普通列車・蟹田(かにた)行。
津軽線は、青森駅から青森県の津軽半島(地図の左側)を北上して竜飛崎の手前、三厩(みんまや)まで55キロあまりのローカル線です。
今年3月までは青森~中小国(なかおぐに)間を、本州と北海道を結ぶ特急列車がありましたが、旅客列車は「北海道新幹線」へ移行。
今は本州~北海道間の貨物列車が主役、その合間を縫うように普通列車が走っています。
その意味では、津軽線は今も「本州と北海道の間の物流を支える」大事な路線なのです。
本州と北海道を結ぶ鉄道ですが、実は「下北半島」(地図の右側)周りのルートも1つの案として存在しました。
下北半島の風間浦村(かざまうら・むら)にある「下風呂(しもふろ)温泉」には、今もアーチ橋が残されていて、足湯などが設けられた遊歩道となっています。
この橋、戦前に本州と北海道を最短距離で結ぶ鉄道「大間線(おおません)」として建設されたもので、戦況悪化で建設が中止され、橋だけが残されました。
戦後、この大間線を活かして「青函トンネル」を掘る計画もあったそうですが、地質調査の結果、今の津軽半島ルートに落ち着いたといわれています。
もしも「青函トンネル」が下北半島を通っていたら、下風呂の温泉街を北海道新幹線が通り函館駅へ直接アクセス・・・なんてことになったのでしょうか?
そんな「下風呂温泉」名物といえば「元祖烏賊様(いかさま)レース」。
全長20mの水槽で活いかを泳がせて勝敗を 競うレースで、いかのオーナーとして参加したり、いかの順位を予想する投票でも参加できます。
いかのオーナー料は「600円」、勝イカ投票券(裂きイカ)は「100円」、出走したいかはオーナーへプレゼントされます。
このいか、200円プラスでその場でイカ刺しにすることも可能ですし、「下風呂温泉」に宿泊すれば宿で調理してくれます。
なお、いかのオーナーには、順位ごとに金・銀・銅の「スルメダル」が贈られることになっています。
下風呂温泉の「活イカ備蓄センター」は、いつでも新鮮ないかを提供するための施設。
300パイのいかを常時備蓄できる水槽があり、下風呂の漁港で水揚げされたイカはこの水槽にやってきます。
下風呂温泉の食堂では「いかさし」の注文が入ると、お店の人がバケツを持って水槽にいかを取りに行くのが「当たり前」の風景。
また、この備蓄センターでも活イカの刺身を食べられます。(2016年段階で900円)
早速「いかさし」を注文すると網で水槽の中のいかを捕獲、いかも墨を吐いて必死の抵抗を試みますが・・・。
いかは生きたままバケツへ。
それでもまだ、いかはバケツから逃げようとしていますが・・・。
敢えなく御用!
透き通った身が新鮮さの証ですね。
漁師の奥さん方がテキパキと捌いていきます。
見よ、この透き通った「いかさし」!
噛みしめるほど身が甘くて、まだ生きている吸盤に舌を吸われる新鮮さ!
プルンとして濃厚な味わいのイカの「わた」も美味です!!
望月はあまりいかが好きではなかったのですが、12年前の夏、下風呂の備蓄センターに揚がる「いかさし」を食べて初めていかを好きになれました。
東京から下風呂温泉までは東北新幹線・八戸乗換で「6時間」くらいかかりますが、半日かけても食べに来る価値のある「いかさし」だと思います。
せっかく下風呂温泉まで来たら、路線バスの終点・佐井(さい)まで足を伸ばしたいもの。
佐井港から景勝地「仏ヶ浦」まで「佐井定期観光」の観光船が出ているのですが、例年5月~7月にかけて、ぜひやりたいオプション体験があります!
それが「うにむき体験」(1,620円、1週間前までの要予約)!
およそ1時間半の船旅の後、佐井港の「津軽海峡文化館アルサス」に案内されると、そこは一面の「うに」!!
1人当たり「5個」のキタムラサキウニが提供され、地元の漁師さんたちのレクチャーを受けながら「うにむき」にチャレンジするのです。
「うにむき」のポイントは、この殻を割る瞬間。
「生うにパックリ」という道具をザクッと突き刺し、ハンドルをグッと握ることで、殻をパカッと割るのですが、これが意外と難しい!
ココで割るポイントを外してしまうと、せっかくのうにが、グチャッとしてしまうのです。
手本となる漁師さんたちは、うにの形をパッと見て「生うにパックリ」を刺すポイントをすぐに見つけ、手際よくきれいな形に割っていきました。
うにの殻を割り、内臓を処理して、洗って塩水につけるという行程は、実はすごい「職人技」なんですね。
「うに5個」で、小さなパックも一杯にならないくらいしか採ることが出来ませんでした。
この手間がかかっているから「うには高い」のです。
長年に渡って培われた「うにむき」の手仕事を一般の方にも体験してもらうことで、佐井のウニをさらに身近に美味しく食べてもらいたいという思いから始まったという企画。
正直、今まで「うに」について私は”エゾバフンウニ至上主義”みたいなところがありました。
でも、実際に「うにむき」を体験したことで「キタムラサキウニ」にはムラサキの美味しさがあると改めて気付くことが出来ました。
やはり「食べ物」を好きになるには、現地へ足を運んで、自分のお金で本当にいいものを味わって分かるものですよね!
駅弁もやっぱり現地へ足を運んで、現地の水、空気を感じながらいただくのがイチバン!
今回は青森を代表する食材・ほたてを使った「陸奥湾産ホタテ弁当」(1,080円)を紹介します。
調製元は、青森では有名な工藤パンの子会社「幸福の寿し本舗」。
青森には元々、昭和43(1968)年発売、現在はウェルネス伯養軒が手がける「帆立釜めし」という伝統駅弁があります。
そんな人気商品が1つあれば、同業他社も類似商品を出さずにはいられないというものでしょう。
今回、「陸奥湾産ホタテ弁当」のフタを開いて、いい意味で裏切られました。
なんと「ほたて」の照り焼きだけでなく、青森名物「青森生姜味噌おでん」が、およそ3分の1も入っていたのです。
「青森生姜味噌おでん」は、戦後、青森駅周辺のヤミ市で提供された「おでん」に由来すると言われています。
寒い冬、鉄道から乗り継いで青函連絡船を待つお客さんの体を少しでも暖めようと、味噌に生姜をすりおろしたのだとか。
「生姜味噌おでん」も青森の鉄道食文化の1つと考えれば、「ホタテ弁当」なのにホタテ以上の収穫がある駅弁ではないかと思います。
全国屈指の新鮮な魚介に出逢える、夏の青森・下北半島~陸奥湾。
風光明媚な景色を眺めながら、実際に現地へ足を運んで味わいたい海の幸がいっぱいです!
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)
【ごあいさつ】
はじめまして、放送作家の望月崇史(もちづき・たかふみ)と申します。
ニッポン放送には、昔の有楽町の社屋の頃から、かれこれ20年お世話になっています。
最近では、月~木・深夜24時からの「ミュ~コミ+プラス」で放送された、
「ルートハンター」のコーナーに、5年ほど出演させていただきました。そんな私がライフワークとしているのが「駅弁」の食べ歩き。
1年間に食べる「駅弁」の数は多い年でのべ500個。
通算でも4500個を超えているものと思います。
きっかけとなったのも、実はニッポン放送の番組。
2002年~05年に放送された「井筒和幸の土曜ニュースアドベンチャー」の
番組ウェブサイトで「ライター望月の駅弁膝栗毛」を連載することになり、
本格的に「全国の駅弁をひたすら食べまくる生活」に入りました。
以来、私自身のサイトや、近年は「ライター望月の駅弁いい気分」というブログで
「1日1駅弁」を基本に「駅弁」の紹介を続けています。
”駅弁生活15年目”、縁あってニッポン放送のサイトで連載させていただくことになりました。
3つの原則で「駅弁」の紹介をしていきたいと思います。①1日1駅弁
②駅弁は現地購入
③駅弁のある「旅」も紹介「1日1駅弁」ですので、日によって情報の濃淡はありますが、
出来るだけ旬の駅弁と鉄道旅の魅力をアップしていきますので、
ゆるりとお付き合い下さい。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/