元NHKアナウンサー第二の人生は短期入所施設ハウスマネージャー【10時のグッとストーリー】

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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

今日は、重病で在宅ケアが必要な子どもと、その家族のために作られた短期入所施設のハウスマネージャーに転身した、元アナウンサーのグッとストーリーです。

現在、日本には、重い病気を患い、常に在宅ケアが必要な子どもたちが大勢います。
医療の進歩で、難病を抱えて生まれてきた子どもたちの命を大勢救えるようになりましたが、それに伴って、退院した後、人工呼吸器などの医療的ケアを必要とする子どもたちも年々増えています。
特に重症な子どもは、全国におよそ1万人。自宅で介護をする家族はゆっくり休む暇もありません。

そんな子どもたちと、家族が一緒に数日間ゆっくりと過ごせる新しい施設が、今年4月、東京・世田谷区にある小児医療機関の中にオープンしました。名前は「もみじの家」。公的な医療機関が作った初めての、医療型短期入所施設です。
その管理・運営を行う初代ハウスマネージャーに就任したのが、内多勝康(うちだ・かつやす)さん・53歳。

「いま日本は、世界で最も新生児の命を救っていると言われていますが、救った命をどう守っていくのかという、新たな宿題も背負っているんです」という内多さん。実は元NHKのアナウンサーで、この春、定年前に退職。第二の人生をスタートさせました。

内多勝康

内多勝康(うちだ・かつやす)さん 国立成育医療研究センター“もみじの家” facebookより

「本当は、定年まで勤めるつもりだったんですが、このお話をいただいて、社会的意義がある仕事に携わる最後のチャンスだ!と思い、決断しました」

「もみじの家」の常勤職員は20人いますが、うち18人はケアスタッフで、事務方は内多さんを含め2人だけ。事業計画を立てたり、慣れない事務作業など、やることは毎日山のようにあります。

放送の世界から、まったく畑違いの、医療福祉の現場に飛び込んだ理由…それは3年前、自ら企画・取材に当たった、あるドキュメンタリー番組がきっかけでした。
番組の中で、在宅ケアが必要な子どもたちを支えるシステムが、日本にはほとんどないことを伝えた内多さん。取材を進めていくうち、在宅ケアが必要な子どもを抱えた家族は自分の時間がほとんどなく、身をすり減らすような日々を過ごしていることを知り、衝撃を受けました。

「その現実を知って以来、見て見ぬふりはできないと、強く思うようになったんです」

このとき、取材先となった福祉関係者との縁で舞い込んだ、ハウスマネージャー就任の話。定年後に仕事ができればと、社会福祉士の資格を取っていたことも転職の後押しになりました。

「もみじの家」のベッドは11人分。最長6泊7日利用でき、家族も一緒に泊まれるのが特徴です。オープンから11月末までの7ヵ月間で、利用した子どもの数はのべ184人。病状が重いため会話ができない子がほとんどですが、「もみじの家」では、様々な人と触れ合うことができます。

「ここに来る子どもたちは、普段他人と接する機会がほとんどない子が多いんです。ここでいろいろな人と接することで、社会性が育ってくれれば、と思うんですね」

ある日、印象的な出来事がありました。「もみじの家」がテレビの取材を受けた際、気管を切開し人工呼吸器を付けた子が、カメラの前で「将来は気象予報士になりたい!」と答えたのです。

「医療的ケアが必要な子が、カメラの前で夢を語る姿に感動しましたね。こういう施設があることで、いろんな人と接して、その子の夢が膨らんでいったら嬉しいです」

また、1階にある広いダイニングキッチンでは、ボランティアの人たちが時々カフェを開き、付き添いで来た家族に、美味しいコーヒーを提供しています。普段、介護に追われている家族にとっては、まさに安らぎの場。「こんなにゆっくりできたのは久しぶりです」と感謝する人も多いとか。このダイニングで、家族同士、子ども同士の交流も生まれています。
慣れない仕事も多く大変ですが、これまでにない充実感を味わっているという内多さん。

「ケアが必要な子どもたちの数に比べれば、その子や家族を支える仕組みがまだまだ足りません。『もみじの家』を成功させて、他の地域にもこういう施設が拡がっていくといいですね」

八木亜希子,LOVE&MELODY

番組情報

LOVE & MELODY

毎週土曜日 8:30~10:50

番組HP

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