20年間監督禁止令下のイランの名匠ジャファル・パナヒが撮りました【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第187回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、4月15日から公開となる『人生タクシー』を掘り起こします。

あらゆる制約をものともせず。映画こそが人生の意味。

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故アッバス・キアロスタミ監督の愛弟子にして、カンヌ・ベルリン・ヴェネチア世界三大映画祭を制覇したイランの名匠ジャファル・パナヒ監督の生き方は、映画以上に壮絶です。

作風はイラン社会の実情を描いていることで知られ、その活動が反体制的だと見做され2度の逮捕、2回目は86日間の拘束を経験。
しかし世界中の映画祭や著名なアーティスト、映画作家たちの尽力により保釈されることに。
その後、裁判所の最終判決により、2010年より映画製作・脚本執筆・海外旅行・インタビューを20年間禁じられています。

それでも彼の映画製作を、止めることはもはや誰にも止めることは出来ない!
そうして完成した映画が『人生タクシー』。
本作は2015年ベルリン国際映画祭で金熊賞と国際映画批評家連名賞をダブル受賞したほか、数々の映画祭で大絶賛を浴びました。

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活気に満ちたテヘランの町を走る、一台のタクシー。
運転手を務めるのは、パナヒ監督。
ダッシュボードに置かれたカメラが車窓やテヘランの街並み、そして乗客とパナヒ監督の会話を記録している。
タクシーに乗り込んでくる客はさまざま。
強盗と教師、海賊版レンタルビデオ業者、交通事故に遭った夫婦、映画監督志望の学生、金魚を届ける老女。
彼らの人生を通して、イランの人々の日常と“今”が浮かび上がってくる…。

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「20年間映画を製作してはいけない」と言われたならば、普通なら映画監督としての活動を諦めてしまうもの。
しかしパナヒ監督は屈することなく「映画を撮るのが禁止なら、映画っぽく作らなきゃいいんだ!」という発想のもと、本作を製作。
“出演者”は監督自身、撮影機材は車載カメラのみ。
そのアイデアはユニークかつ痛快で、映画作家として最悪の窮地に立たされている人物の作品とは思えないほどポップでユーモアに溢れていています。
きっと、この映画を観た誰もが「そうか、こんな手があったか!」と驚かずにはいられないことでしょう。

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ドキュメンタリーのようでもあり記録映画のようでもあり、それでいてきちんと脚本として成立しているドラマ的要素も持ち合わせている、不思議な映像です。
しかし、ほのぼのとした優しい視点に満ちたこの映画の“真実”は、最後に出るテロップに隠されています。

本人はいわゆる軟禁状態のような生活を強いられていても、彼が魂を込めた映画は世界中を駆け巡っている。
映画表現とは、抑圧されるほどに自由を得るものなのかもしれません。

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人生タクシー
2017年4月15日から新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
監督・脚本・出演:ジャファル・パナヒ
©2015 Jafar Panahi Productions
公式サイト http://jinsei-taxi.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/


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