さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、4月21日から公開となる『バーニング・オーシャン』を掘り起こします。
世界最大級の“人災”、映画化。
その日もいつも変わらない朝だった。
チーフエンジニアのマイク・ウィリアムズは家族と別れ、メキシコ湾沖80キロに位置する石油採掘施設ディープウォーター・ホライゾンに向かう。
マイクはこれから3週間、電気技師として務めを果たす予定だった。しかし、スケジュールの遅れを理由に拙速な掘削再開を迫る石油会社の幹部ヴィドリン。
施設責任者のジミーが「安全テストが終わっていない」と応じるも、ヴィドリンは「問題はない」と取り合わなかった。やがて正常に作動していたはずの施設をけたたましい警報音が駆けめぐり、採掘口につながったバルブから濁った海水と原油が噴出。
さらに海底油田から逆流してきた天然ガスが引火爆発し、ディープウォーター・ホライゾンはたちまち炎に包まれてしまう。施設内に閉じ込められた作業員たち126名の運命は…。
2010年4月20日に発生した、メキシコ湾原油流出事故。
7月16日の流出停止まで、約3ヵ月にわたって全世界が固唾をのんで注視した未曾有の事故で海に流出した原油の総量は490万バレル。
当時報じられた油まみれの“黒いペリカン”の写真が象徴するように自然環境への汚染も深刻で、沿岸住民の生活にも甚大な被害が与えられたことが、つい昨日のことのように思い出されます。
この世界最大級の“人災”の真実に迫ったのが、映画『バーニング・オーシャン』。
ニューヨーク・タイムズの記者たちが行った生存者への克明なインタビューをもとに、最先端テクノロジー搭載の石油プラットフォームと言われたディープウォーター・ホライゾン内部で、一体何が起こったのか。
そして、突然の爆発と炎を襲われた126名の作業員たちはどのように行動したのかを圧倒的なスケールで描く、実録ムービーです。
監督を務めたのは、リアルなアクション描写に定評があるピーター・バーグ監督。
主演は、バーグ監督が絶大な信頼を寄せ、他作品でもタッグを組んでいるマーク・ウォールバーグ。
彼を含め、カート・ラッセル、ジョン・マルコヴィッチといったカリスマ的魅力を持つ俳優たちによる緊迫感みなぎる演技に息を呑むことでしょう。
さらに主人公の妻をケイト・ハドソンが演じるほか、ジーナ・ロドリゲス、ディラン・オブライエンと若手注目株が脇を固め、スペクタクルなドラマに厚みを加えています。
度肝を抜かれるのが、大迫力の爆発シーン。
火の海に包まれる光景にいたっては、撮影時に俳優の衣装に実際に火をつけたことも明かされていて、キャスト陣の役者魂にも感服です。
とにかく、観てるこちらまで「熱いっ!」「痛いっ!!!」とジタバタしてしまいそうな、危機迫る映像の連続。
出来るだけCGに依存せずに、ディープウォーター・ホライゾンの巨大セットの中で俳優が芝居をすることにこだわった、バーグ監督の演出手腕が光ります。
その一方で、人為的ミスの連鎖や親会社と下請け会社の確執など大事故へとつながる小さな原因の積み重ねを丁寧に映し出すことで、巨万の富を生み出すエネルギー資源を目の前にした人間のエゴや欲の果てを描いているのも見逃せません。
エンターテインメントの力を借りながら「この事故についてどう思うか…」を個々に考えてみる。
それが、本作が真に伝えたいことなのかもしれません。
バーニング・オーシャン
2017年4月21日から全国ロードショー
監督:ピーター・バーグ
出演:マーク・ウォールバーグ、カート・ラッセル、ジョン・マルコヴィッチ、ジーナ・ロドリゲス、ディラン・オブライエン、ケイト・ハドソン ほか
©Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト http://burningocean.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/