7/14(金)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③
中国では国内の検閲を強化
7:10~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター高橋和夫(国際政治学者・放送大学教授)
劉暁波氏の釈放を中国政府が拒否、各国から批判集まる
服役中にノーベル平和賞を受賞した、中国の民主化運動の象徴的な存在である、劉暁波氏が、多臓器不全のため、遼寧省の病院で亡くなりました。61歳でした。
劉氏は、5月に末期癌と診断された後、刑務所から病院に移送されましたが、中国政府が釈放を拒否したため、適切な治療を受けられなかったという指摘もあります。劉暁波さんは、吉林省生まれ。元北京師範大学の講師で、1989年の天安門事件に至る民主化運動で、指導的な役割を果たした、ということで起訴されました。その後釈放や投獄が度々ありましたが、2008年に共産党の一党独裁体制廃止などを訴えた「08憲章」を起草したことで拘束され、2010年に、懲役11年の実刑判決が確定していました。その年の12月にノーベル平和賞が贈られたのですが、中国政府は妻である劉霞さんの代理出席も認めず、劉霞さんは現在も当局の監視下に置かれています。
劉暁波さんは、多くの民主活動家が国外に逃れたり、ビジネスマンに転身したりするなか、「私に敵はいない」と宣言し、あくまで国内に留まり、言論で戦い続けました。日本時間の昨日18時35分に亡くなったのですが、中国の司法当局は「病院は国内の著名な癌の専門家を招いて、治療に当たったほか、アメリカとドイツの肝臓癌の権威ある専門家も診断に参加した」と述べ、全力を尽くしたと強調しています。
ですが、劉暁波さんの病状が公になったあと、欧米各国が治療のために出国を要求したにも関わらず、中国側は、劉暁波夫妻を病院内で監視下に起き、意思確認すら困難な状況に追い込んでいました。ノルウェーのノーベル賞委員会は声明を発表し、「何の罪も劉暁波さんは犯しておらず、投獄は不公正だ」としている他、アメリカのティラーソン国務長官は中国に対し、「劉暁波さんの奥さんの解放と、彼女の希望通り、中国からの出国を認めるよう、要求する」と訴えています。
一方、中国国内ですが、劉暁波さんに関する情報の統制を当局が強めており、インターネットの検閲技術を駆使し、香港や海外メディアが伝える、劉暁波さん関連の情報が入ってくるのを阻止しているとのことです。習近平指導部は、今年の秋に共産党大会を控えていますので、「反体制派の取り締まり強化」、それから、「民主活動家や人権派弁護士の排除」、この辺で体制固めを進めたい、という狙いのようです。
自らの身をもって世界へ訴えた劉暁波氏
高嶋)この劉暁波さんというのも、非常に気持ちの強い方ですね。本人不在のノーベル平和賞の授賞式のとき、「私が中国で、文章を理由に刑務所に入る、最後の被害者になることを望む」という文章が代読された、という報道がありました。それで、先生は中国から逃げてきた人のお知り合いもいるようですが、劉暁波さんは天安門のとき、コロンビア大学に行っていたとか。
高橋)そうですね。私もコロンビア大学で勉強していましたが、当時から、だんだん中国から出てきて、ハーバード大学やコロンビア大学でたくさんの亡命者を抱えていました。日本にいる方もいますが、天安門事件以来、帰れば逮捕されるしろくなことはない、ということで外国で研究を続けるか、ビジネスに転向するか、いろいろでしたが、この劉さんだけは、本当に分かっていて中国に帰国し、こういう目に遭わされてしまった……でも、中国がこういう手段を執らざるを得なかった、というのを見せることにより、自分の主張を世界に訴えたのだと思います。
高嶋)「08憲章」の中心的な起草者である、ということで、つまり「思想の原点」のような方だということで、中国共産党としては、「絶対に許されざる人物」ということで徹底的にやったのですね。
高橋)そうですね。ただ、この最期の段階で、「しっかり治療をしました」とか、「刑務所で死なれるのだけは困る!」という雰囲気がありありとしていましたから、中国指導部も、やはり国際世論をそれなりに気にしているのだな、と思いました。
生活水準が上がっても中国の本質は凶暴な「ドラゴン」のままである高嶋)中国の専門家が、人によっては、「衣食足りて礼節を知る」ではありませんが、「経済的に生活水準が随分上がり、モノの言い方も、政府自体も変わってきた」と。強烈な不満とか核心的利益とか、このごろ言わなくなった、みたいなことを言う人もいますが、先生はどう考えますか?
高橋)中国を見ている人間の間では、「これからの中国はどうなるの?」というので2つの流派があります。
「中国は豊かになれば礼節を知っていく……」、そういう人たちは「パンダ派」と呼ばれています。パンダみたいに優しい中国、ということです。
もう一方は、「豊かになればなるだけ、力が強くなるだけで依然として中国は厄介な存在である」と考える「ドラゴン派」と呼ばれる人たちです。
私は、実際、尖閣諸島や南沙諸島のことを見ていると、どうも「パンダ」には見えないな、と思います。高嶋)それは、西側の人が中国を見たときに、そういう風に見えるということですね?
高橋)そうですね。
高嶋)それで、先生は、本質は「ドラゴンだろう」と。
高橋)ええ。私も時々中国に行きますが、インターネットはしっかり検閲されていますね。日本のテレビだって、中国の話題になると急に画面が消えたり。とてもパンダになっているとは思えません。
高嶋)ある方が中国に行っていますが、「ひょっとして逮捕されたら、援護射撃してね」と言って出発しました。何だか一瞬、そういう思いがよぎるようですね。
高橋)そうなのですよ。私のメールも普通ならちゃんと届くのですが、メディアの方からメールが入った途端に止まるのです。だから、「しっかり見て下さっているんだな」という安心感というか、ゾッとする感覚があります。
高嶋)本質は変わっていない、ドラゴンだということですね。