番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、カブトムシを通じて、子どもたちに自然を愛し、街を愛してもらおうとボランティア活動を続けるシニア世代の、グッとストーリーです。
「うわー!カブトムシがいっぱい木に止まってる!」「あ、蜜にむらがってるよ!」
夜7時過ぎ、埼玉県新座市(にいざし)の雑木林に子どもたちの歓声が響きます。これは、新座市のボランティア団体「座☆ビートルズ」が毎年7月に開催する「ナイトツアー」のひとコマ。
「座☆ビートルズ」の「ざ」は漢字で、新座市の「座」と書きます。現在のメンバーは19人で、60代・70代の高齢者が中心。このナイトツアーには毎回20人の子供たちと保護者が参加し、「座☆ビートルズ」のメンバーがクイズを交えながら夜の雑木林を案内していきます。
「自然の中で生きるカブトムシを見た子どもたちは、みんな目がキラキラしています。やっぱり、時代が変わっても子どもたちの中にはそういうDNAがあるんでしょうね」
と語るのは「座☆ビートルズ」のリーダー、佐藤弘信(さとう・ひろのぶ)さん・74歳。
自然豊かな山形県米沢市で生まれ、子どもの頃は、虫がおもちゃ代わりだったという佐藤さん。
大学卒業後、東京の出版社に入社し、1994年から新座市に転居。63歳で定年退職した後は「市民総合大学」で学び、環境保全など市のボランティア活動に関わるようになりました。
「新座のいいところは、東京から近いのに、まだ自然が残っているところですね」という佐藤さん。
新座市が「カブトムシの里づくり」という事業の一環として、2009年に立ち上げた「座☆ビートルズ」にも初年度から参加。ボランティアとして、無償で活動を行っています。
主な活動内容は、深さ1m、2.5m四方の枡(ます)を雑木林に3つほど作り、カブトムシが育つために必要な堆肥(たいひ)を入れ、卵と幼虫を飼育。1枡で100匹近くの成虫が育ちます。
ナイトツアーの最後には、枡で育てたカブトムシを子どもたちに配布。夏の間、家で飼育してもらい、生まれた卵や幼虫は返却してもらってまた枡の中へ…そんな循環型のシステムになっています。佐藤さんは言います。
「子供はみんな、自然や生き物に対する興味を持っているんです。それを引き出す材料を提供するのが、私たちの役目です」
しかし、カブトムシは自然の生き物。毎年うまく育つとは限りません。天敵のモグラが枡の中に入り込み、幼虫を食べてしまったり、堆肥の管理がうまく行かず幼虫が育たなかったり…ここ数年思うように成虫が育たなかったため、「座☆ビートルズ」は、去年の秋にメンバー総出で枡から堆肥を掘り出し、新しい堆肥に入れ替えました。シャベル片手の結構な重労働でしたが、子どもたちの笑顔を見るためと思えば苦にならないし、「いい運動になりますよ」と笑う佐藤さん。
「ナイトツアーをやっていてよかったと思うのは、保護者の方も一緒に楽しんでくれることですね。親御さんの世代にも『これまで虫に触れる機会がなかった』という方が結構いらっしゃいますから…」
親子で一緒に自然と触れ合うことで、環境を守っていく大切さを家で話し合う機会も生まれます。
この雑木林があるからこそ、新座にはカブトムシがたくさんいるんだ、と。佐藤さんは言います。
「カブトムシを通じて、子どもたちに雑木林の大切さと、新座へのふるさと意識を持ってもらえたら、と思って活動しています。ナイトツアーに参加した子が将来、自分の子どもを連れて参加してくれたら嬉しいですね」
【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2017年8月12日(土) より
番組情報
あなたのリクエスト曲にお応えする2時間20分の生放送!
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