ゴミ屋敷清掃を専門に請け負う会社社長と支える奥様のストーリー
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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、いま社会問題にもなっている「ゴミ屋敷」の片付けを専門に引き受け、人の命も救った清掃会社社長と、片腕として支える奥さんのグッとストーリーです。
「玄関を開けると、うず高くゴミが積もり、足の踏み場もない部屋」「ゴミに埋もれたまま、住んでいる人が亡くなり、誰も片付ける人がいない部屋」…いま増えている「ゴミ屋敷」。
その片付けと清掃を専門に請け負っている会社が、東京・江戸川区にあります。
「ウチはどんなにひどい状態のゴミ屋敷でも、一日できれいな状態にしますから」と言うのは、「株式会社まごのて」社長の、佐々木久史(ささき・ひさし)さん・48歳。
ここ数年で依頼が大幅に増え、現在は13人の社員を抱える企業に急成長しました。そもそもなぜ佐々木さんはゴミ屋敷清掃を始めたのか聞いてみると「もともと“便利屋”をやっていたんです」。
佐々木さんは子供の頃、父親が経営していた会社が倒産。中学から働き始め、稼いだお金を元手に故郷の奈良で運送会社を興しましたが、軌道に乗りかけた頃、リーマンショックの直撃を受け倒産。
2009年、逃げるようにやってきた東京で、体一つでできる便利屋の仕事を始めたのです。
来る仕事は、どんな汚れ仕事でも引き受け、その中に「ゴミ屋敷の清掃」がありました。
そんな佐々木さんを支えたのが、年上の妻・薫(かおる)さんでした。自分もパートに出て、ギリギリの家計を支えながら、夫の仕事も手伝っていた薫さん。ある日、こんな依頼の電話がかかってきました。
「私の部屋、ゴミでいっぱいなんです。片付けてもらえませんか…」
さっそく夫婦で現場へ行ってみると、依頼主は、有名大学に通うごく普通の女子大生でしたが、アパートの扉を開けると、胸の高さまであるゴミがあふれ、玄関まで埋め尽くしていました。
「それまで、そんな部屋を片付けたことがなかったんで、見た瞬間、思わず引きましたよ」
という佐々木さん。部屋はゴミだらけで足の踏み場もなく、電球が切れても取り替えられないため、夜は真っ暗。依頼主は、懐中電灯を片手に勉強していたため、視力が極端に落ちてしまいました。
さらに震災で、ガス湯沸かし器も動かなくなりましたが、修理する人を部屋に呼べないので、冬でも水風呂に入っているというのです。ところが3万円しか払えるお金がなく、他の業者にはすべて断られたという依頼主。当時は佐々木夫妻も生活が苦しく、引き受けても利益が出ないその額では受けられないため「お金ができたら、また連絡して」といったん帰りました。
しかし、同じ年頃の娘さんがいたこともあり、依頼主のことがどうしても気になった薫さん。
「やっぱり、あの子のことを放ってはおけないわ。毎日、暗い中で勉強して、水風呂に入ってるなんて、涙が出てきちゃって…あなた、この依頼、引き受けましょう!」
依頼主から、とりあえず3万円だけ受け取り、足りない分は後から分割で払ってもらうことで清掃を引き受けた佐々木さん夫妻は、高校生の長男を連れて3人で現場へ。夕方から取り掛かり、全力で作業を進めました。ゴミをトラックに詰め、電球を取り替え、ガスも復旧させ、水回りもきちんと清掃。普通に生活が送れる状態に戻したとき、時計の針は深夜を指していました。
翌日、佐々木さん宛てに、依頼主から届いたお礼のメール。そこには、嬉しくて何度もお風呂に入ったことや、夜も明るい部屋で勉強できる喜びのほか、こんな話も綴られていました。
以前、故郷から母親が訪ねてきたとき、「ホテルに泊まって」と言い、悲しい思いをさせたこと。
母親にそのことを謝り、部屋がゴミだらけだったことを告白すると「あなたの苦しみに気付いてあげられなくてゴメンね」と泣かれ「その業者さんに、残りの料金をすぐ払いなさい」と、お金を貸してもらったこと。そして最後に一言…「もし断られていたら、私、死ぬつもりでした…」
結果的に、ゴミを片付けただけでなく、人の命まで救った佐々木さん夫妻。三代続く江戸っ子で情に厚い薫さんがいなかったら、その仕事を引き受けていなかった、と佐々木さんは言います。
「あの依頼で、ゴミ屋敷清掃を専門でやっていく気になりました。今の会社があるのは嫁さんのお陰。関西人と江戸っ子、ようケンカしますが、ええコンビなのかもしれません」
【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2017年8月19日(土) より
番組情報
あなたのリクエスト曲にお応えする2時間20分の生放送!
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