番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、四国の魅力を世界に発信しようと、一人で様々な企画を立ち上げ、なんとEUの大統領にも会ってしまったという、ある主婦のグッとストーリーです。
最近「うどん県」のキャッチフレーズで、海外にもPRを図っている讃岐うどんの本場・香川県。
しかし四国を訪れる外国人旅行客は、よその地域より少ないのが現状です。そんな中、香川を拠点にたった一人でNPO法人を立ち上げ、四国の魅力をヨーロッパへ発信している主婦がいます。
「四国夢中人(しこく・むちゅうじん)」代表の 尾崎美恵(おざき・みえ)さん・63歳。
「四国には世界遺産が一つもないんですが、世界に誇れるものはいっぱいありますよ」
愛媛県で生まれ、幼い頃から外国に憧れていた尾崎さん。しかし当時、特に地方では、「女性は結婚したら家庭に入るもの」という価値観がまだ根強く残っていました。
尾崎さんは東京の大学を卒業後、英語の講師を3年務めたのち見合い結婚。ご主人の実家がある香川県丸亀市に移り、3人の子供を育て上げました。ごく普通の主婦だった尾崎さんですが、30年ほど前、長男が通う幼稚園のシスターにフランス語を教わったのがキッカケで、フランスにも興味を持ち、子育てが一段落すると40代で岡山大学の大学院に入学。
家事をこなしながら、睡眠時間を削って猛勉強し、修士論文を書き上げました。
そして2007年、人生の大きな転機が訪れます。研修のためパリを訪れた際、ルーブル美術館の近くにあるうどん屋さんを見付けた尾崎さん。外には、長い行列ができていました。
「この人たちに、本場の讃岐うどんを食べさせてあげたい!」
尾崎さんは、毎年ヨーロッパ中から大勢の人が訪れる、日本文化の祭典「ジャパンエキスポ」に、うどんで出展しようと決意。資金も組織もなく、うどん作りも素人でしたが、持ち前の行動力で香川県内を飛び回り、あらゆるうどん業者に協力を依頼。2008年、初めて讃岐うどんのブースを出し、翌年からうどん以外にも、お遍路など様々な四国の文化を紹介していきました。
これが反響を呼び、情熱に火がついた尾崎さん。次に思い付いたのが、有能なフランス人ブロガーを四国に招待するツアーでした。茶の湯、盆栽、俳句、四国遍路等をテーマに2週間のツアーを実施しましたが、中でもいちばん反響が大きかったのが「HAIKUツアー」。
俳句を愛し、様々な作品を発表しているフランス人を四国に招き、俳句にゆかりの深い場所へ案内。四国の魅力をブログでPRしてもらう一方、彼らが詠んだ俳句を、一冊の本にまとめました。たとえば、こんな一句……「丸亀の 新酒一滴 瀬戸の味」
彼らの作品を、もっといろんな人に読んでもらいたい…そう考えた尾崎さんは、俳句愛好家で知られる、当時EUの大統領だったファン=ロンパイ氏に手紙を送ったところ、なんと面会が実現。句集を手渡すと、大統領も、お返しに自分の句集をサイン入りでプレゼントしてくれました。
さらに、これまでの尾崎さんの活動を話すと、大統領は「トレビアン!」(すごいですね!)。その一言が、天からのねぎらいの言葉に聞こえて、何より嬉しかったという尾崎さん。
「有り得ない夢でも、情熱を持ち続けていれば叶うんだと実感しました」
尾崎さんの次の目標は、過疎化が進む、瀬戸内海の塩飽(しわく)諸島を元気にすること。
いま、京都大学農学部の学生たちと、島民が30人以下の手島(てしま)を訪れ、そこでしか採れない最高級の唐辛子「香川本鷹(かがわほんたか)」の栽培を手伝うなど、島を活性化する事業をスタートさせました。
次は手島に、フランス人の芸術家を招待。使っていない建物をアトリエとして提供し、世界のアーティストたちが集うドリームアイランドにしたいという構想もあり、尾崎さんの夢はどんどん膨らんでいきます。
「私は特別、優れた能力があるわけでもなく、地位もお金もないない尽くしですが、唯一あるのが、皆さんとの“人脈”です」という尾崎さん。普通の主婦が、ここまでやってくることができたのも、多くの人たちの助けがあったからこそ。その感謝の思いは忘れません。
「いろんな人とつながることで、次の企画が生まれてくる。人脈さえあれば、あとは何とかなるような気がしています」
【10時のグッとストーリー】
八木亜希子 LOVE&MELODY 2017年9月9日(土) より
番組情報
あなたのリクエスト曲にお応えする2時間20分の生放送!
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