“死体”は人命救助に役立ちます?!『スイス・アーミー・マン』
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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第274回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、9月22日から公開の『スイス・アーミー・マン』を掘り起こします。
世界が絶賛!? 奇想天外青春アドベンチャー
遭難して無人島に漂着した青年ハンクは、救助を求めていた。しかし待てど暮らせど助けは来ず、絶望の淵で自ら命を絶とうとしたその時、波打ち際に男の死体が打ち上げられているのを発見する。死体の男の名はメニー。しかも彼の体からはガスが出ていて、浮力を持っていた。ハンクは意を決して、死体にまたがり無人島脱出を試みる…。
あまりにも奇想天外すぎるストーリーで世界中の映画祭で物議を醸し、話題をさらった『スイス・アーミー・マン』がついに日本上陸!無人島からの脱出を試みる青年と彼の前に突如現れた死体が巻き起こす、サバイバル・アドベンチャーです。
奇妙すぎるコンセプトとぶっ飛んだ描写で観る者の度肝を抜き、第32回サンダンス映画祭や第49回シッチェス・カタロニア国際映画祭など、多くの映画祭で受賞を重ねたということでも、いかにインパクトのある作品か、お分かりいただけるでしょう。
この驚嘆すべき映画を世に贈り出したのは、MVディレクター出身の監督コンビでダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート、通称“ダニエルズ”。シュールすぎるストーリーにもかかわらず、独特の映像美と味わいのあるハートフルな作品へと昇華してしまっているのは、これぞダニエルズ・マジック。
そして忘れちゃいけないのが、本作を支えるもうひとりの“ダニエル”の存在。絶望に打ちひしがれた青年に希望を与える“死体”という驚きの役を演じた、ダニエル・ラドクリフ。
「あのハリー・ポッターが死体役???」という意外性もさることながら、ラドクリフ君の万能死体っぷりと言ったら。ポール・ダノ扮するハンクとの中2男子的なやり取りには、思わず笑いがこみ上げてきますよ。
お下劣とおバカの向こう側に見えるのは、生きる勇気と友情の物語。ブラックユーモアともファンタジーともカテゴライズし難い、ダニエルズの世界観。出会うはずのない二人が迎える結末に、思わぬ感動が押し寄せてくる、ハズ。
スイス・アーミー・マン
2017年9月22日からTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督・脚本:ダニエルズ(ダニエル・シャイナート、ダニエル・クワン)
出演:ダニエル・ラドクリフ、ポール・ダノ、メアリー・エリザベス・ウィンステッド ほか
©2016 Ironworks Productions, LLC.
公式サイト sam-movie.jp
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/