今季はあと1ヵ月! 津軽鉄道「ストーブ列車」でいただく駅弁とは?

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。

3月に入って、春の足音が聞こえてくるころです。この冬は、平日限定の格安フリーきっぷ「旅せよ平日!JR東日本たびキュン早割パス」が発売されていることもあり、平日でも、北東北へ向かう新幹線は、なかなかの混み具合のようです。平日でも楽しめる今だけの列車といえば、津軽鉄道の「ストーブ列車」。車内販売でお酒をいただくのが定番の過ごし方ではありますが、じつは予約制の“駅弁”もあるんです。

DD350形ディーゼル機関車+津軽21形気動車+旧型客車「ストーブ列車」、津軽鉄道・深郷田~大沢内間

DD350形ディーゼル機関車+津軽21形気動車+旧型客車「ストーブ列車」、津軽鉄道・深郷田~大沢内間

青森・津軽の冬の風物詩、津軽鉄道のストーブ列車。津軽鉄道はJR五能線と接続する津軽五所川原駅と津軽中里駅の間・20.7kmを結ぶ、日本最北の民間鉄道です。とくに毎年12月1日~翌年3月31日まで運行される「ストーブ列車」は、昔ながらの客車にだるまストーブが設けられていることで有名。冬の津軽の大事な観光資源となっており、団体のツアーに組み込まれて利用する方も少なくありません。

ストーブ酒とスルメイカ

ストーブ酒とスルメイカ

津軽鉄道は、昭和5(1930)年7月15日に津軽五所川原~金木間が開業。その年の11月13日には全線開業し、翌月12月から「ストーブ列車」を運行開始したといいます。じつは1世紀近い歴史がある列車なんですね。いまではすっかり「観光列車」としての役割が大きくなり、アテンダントの方による車内販売も行われています。やっぱり買い求めるなら、オリジナルの「ストーブ酒」とスルメイカがお薦めですね。

だるまストーブで炙ったイカ

だるまストーブで炙ったイカ

イカはだるまストーブの上に載せ、炙っていただくのが定番。窓の外の地吹雪を眺めて、ストーブ酒と炙ったイカでちびちびやりながら、のんびりとした時間を過ごすのが、ストーブ列車の旅の醍醐味というものです。ストーブ列車は、3月31日まで1日3往復運行され。乗車券に加えて、ストーブ列車券(500円)が必要。津軽鉄道では昔ながらの硬いきっぷ(硬券)が使われており、きっぷを買うところから、ノスタルジックな気分が楽しめます。

ストーブ弁当

ストーブ弁当

じつは津軽鉄道では、季節ごとの駅弁を販売しています。毎年12~3月の間は、ストーブ列車の運行に合わせた「ストーブ弁当」(1400円)。掛け紙には列車のシンボル、石炭のだるまストーブが描かれており、郷愁を誘う作りとなっています。この弁当は、写真集等で付き合いのあった大手出版社が企画を発案して生まれたものだそうで、平成19(2007)年9月22日に、津軽鉄道を応援する皆さんのイベントで発表されたといいます。

【おしながき】
・おにぎり(若生、梅)
・ほたての黄金焼き
・紅鮭焼き
・海老の干し餅風あられ揚げ
・海老と魚のすり身の蓮根はさみ揚げ
・肉巻きごぼう
・里芋の石炭風黒ごま揚げ
・いかの酢の物
・ねぶた漬け
・赤かぶ漬け
(ご協力:製造元「神家」、時期によって変わることがあります)

ストーブ弁当

ストーブ弁当

ふたを開ければ、太宰の好物だった若生のおにぎりをはじめ、津軽の郷土料理・干し餅をイメージした海老のあられ揚げ、石炭ストーブにちなんだ里芋の黒ごま揚げなど、津軽の郷土料理をストーブ列車にアレンジしたおかずが満載です。この「ストーブ弁当」は、原則2個からの予約制で、乗車3日前までに、津軽鉄道本社、津軽五所川原駅、金木駅のいずれかへ電話で注文。当日の受け取りは、午前11時~午後2時の間となります。

地域鉄道の高付加価値フォーラムin五所川原「どっすー?地域鉄道」(2023年12月16日開催)

地域鉄道の高付加価値フォーラムin五所川原「どっすー?地域鉄道」(2023年12月16日開催)

平日のローカル線を訪ねると、その鉄道が普段どのように利用されているかが見えます。津軽鉄道本社のある青森・五所川原では、昨年末「地域鉄道の高付加価値フォーラム」が開催されました。地元の高校生や津軽鉄道サポーターズクラブの皆さんをはじめ、全国の地域鉄道に携わる方々などが参加。昨年10月に施行された改正地域交通再生法のポイントを踏まえ、すでに各地で行われている活性化の取り組みについても、情報を共有しながら、今後のローカル線のあり方について議論が交わされました。

津軽鉄道の列車内に掲示されたポスター

津軽鉄道の列車内に掲示されたポスター

津軽鉄道の列車内には、「津軽鉄道はまだ大丈夫、そう思っていませんか?」という少し刺激的な見出しのポスターが貼られています。こちらはコロナ禍のときに作られた厳しい経営状況であることを伝えるものでしたが、このメッセージは津軽鉄道だけでなく、全国の地域鉄道に突き付けられている課題であると感じます。JR線・私鉄・第3セクター、どの経営形態であっても、自分が住むまち、またはふるさとのまちを走る鉄道について、普段、鉄道を使う人も使わない人も、“自分のこと”として考えられるかどうか、私たち自身がいま、試されているようにも感じます。

DD350形ディーゼル機関車+旧型客車+津軽21形気動車「ストーブ列車」、津軽鉄道・津軽飯詰~毘沙門間

DD350形ディーゼル機関車+旧型客車+津軽21形気動車「ストーブ列車」、津軽鉄道・津軽飯詰~毘沙門間

岩木山を望みながら、津軽鉄道の「ストーブ列車」が走ります。今回、訪れて感じたのは、約5万人という五所川原の都市圏で、津軽鉄道が頑張っている背景には、地元をはじめ全国の多くのファンの存在があること、そして何より地元の皆さんに愛されている鉄道だということです。津軽鉄道があるから、真冬でも津軽に足を運びたくなる方は決して少なくありません。鉄道が一体どのように地域を潤しているのか、どんな仕組みを作ればより潤うのか。そこが、地域の鉄道のことを“自分のこと”として考える、第一歩なのかも知れません。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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