【ペットと一緒に vol.60】
2016年の春から、ブラジルで愛犬と愛猫との暮らしを送っている、みちえさん。ブラジルでは愛犬のおかげで、現地の人々との交流が深まったり、思わぬ発見をしたりと、日々の豊かさがぐっと増したとか。今回は、そんなみちえさんのブラジル犬猫ライフをお届けします。
愛犬のおかげでポルトガル語が上達
みちえさんのブラジル暮らしは今回が2回目。夫の転勤に伴っての帯同ですが、以前と同じく、サンパウロ市内でも日本人駐在者が多い地区で生活しているとか。それからもうひとつ、前回は愛猫のるるちゃん(10歳)だけでしたが、今回は愛犬のもなかちゃん(3歳)も一緒にブラジルライフを送っているそうです。
「実は、愛犬と一緒の生活で、私のポルトガル語を使う機会が圧倒的に増えたんですよ」と、みちえさんは笑います。「ブラジル人は、とにかくフレンドリー。犬好きな人もすごく多いんです。なので、もなかと散歩に出ると、しょっちゅう話しかけられるんですよ」。
話しかけられるのは、「男のコ? 女のコ?」、「名前は?」、「何歳?」、「なんていう犬種?」、「触っていい?」が、ベスト5。当然、みちえさんはそれに対するポルトガル語を覚えて、答えているのだとか。
「駐在だと、サンパウロはとくに駐在者同士での関わりで不自由なく過ごせたりするのですが、散歩中には子どもから話しかけられるケースもありますから。それにしても、犬を連れていなければ使わなかった言葉を、この1年半でたくさん覚えましたね」ということです。
東京生活の頃にドッグトレーニングを学んでいたという、みちえさん。実は、日本では教えなかったであろうトリック(芸)を、ブラジル人とのコミュニケーションのために考えつきました。それは、『ベージョ』(ポルトガル語で『キス』の意味)という合図で、もなかちゃんが相手の頬などにキスをするトリックです。
「ブラジル人は日本人に比べれば10倍はスキンシップをする人たち。『かわいい~』と近づいてきて、もなかのおでこにチュッとしたがる方も多いんです。もなかからすれば初対面の人の両手で顔を挟まれるだけでも驚くうえに、相手の顔が頭上にスっと降りて来るので戸惑ってしまいます。そこで、『ちょっと待って! このコは、自分からキスができるのよ』と伝えて、もなかも相手も楽しくなるようにしたんです」と、教えてくれました。
これは、ブラジルの人々に大好評で、数ヶ月前まで住んでいたマンションの門番さんとの毎朝の日課だったそうです。「その門番さん、我が家が引っ越すと聞けば、『もなかちゃんと一緒の、記念写真を撮って』と(笑)」。
「ベージョ」の合図を出しながら、自分の唇にもなかちゃんの鼻先を誘導した女性もいたとのこと。「これには私もびっくり! そのときはエエーッて焦りましたが、あとから思い出すと大笑いですね」(みちえさん)。
サンパウロはドッグフレンドリーな街
「サンパウロ市内の今住んでいる地区を歩けば、日本の都市部よりもずっと高確率で犬に出会います」と、みちえさん。レストランのテラス席は犬OKのところが多く、路面店でも食品を扱うところ以外はたいてい犬連れで入れるそうです。「犬用の水が用意されている店も少なくありません」と、みちえさんは語ります。
サンパウロは標高が約800mあるので、朝夕は涼しく散歩も快適だとか。「たまに1時間歩いて、市民の憩いの場であるIbirapuera公園まで足を伸ばすことも。ここには、柵で囲われてはいませんが、ドッグランがあって、時間帯によっては犬がわんさか集まってくるんですよ」(みちえさん)。
サンパウロで現在よく見かける犬種は、ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバー、シー・ズー、ラサ・アプソ、ミニチュア・シュナウザー、ダックスフンド、ジャック・ラッセル・テリア、シェットランド・シープドッグ、ボーダー・コリーなどだそうで、「柴犬も人気があるようですね。もなかはパピヨンですが、こちらでは珍しい犬種なようで、必ず犬種を聞かれます」とも。
みちえさんが暮らす地区では、「平日はお手伝いさんがお散歩をしている光景もよく見ます」とのことで、散歩代行の人が犬を連れているケースも少なくはないようです。
「実はもなかは、ブラジルに来てから、ほかの犬に吠える癖が直ったんです。とにかくたくさんの犬に、散歩中は会うので。練習のチャンスが豊富なので、もなかにとってほかの犬がよくある日常の一部になったんですよね」と、みちえさんはうれしそうに語ってくれました。
前回の駐在と合わせると、もう7年になるというみちえさん夫妻のブラジル生活ですが、「つい先日も、新しい発見で爆笑したんです」とのこと。トリミングサロンにもなかちゃんを預けたあと、おでこにリボンがついていたので取ろうとしたら、なんと、そのリボンはシールだったとか。「日本のトリミングサロンの仕上げにつけてもらえるリボンとは、そもそもだいぶ趣が違うんですけどね。まさか、シールだとは思いませんでした」(みちえさん)。街で見かける犬にも、ときどきキラキラシールがついているそうで、「とにかく粘着力がスゴくて、なかなか取れないからかも」と、みちえさんは笑います。
まだ数年は駐在生活が続くそうですが、今後も、もなかちゃんのおかげで、みちえさん夫妻のブラジルでの楽しい発見と思い出がどんどん増えていくことでしょう。
連載情報
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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。