勝気なテリアと仲良く過ごせる!? ママも奮闘。2頭の犬と子どもの6年間のストーリー

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【ペットと一緒に vol.61】

やんちゃで気が強いテリアが2頭いる家に、人間の赤ちゃんがやってくる! どうしよう~! 犬たちは赤ちゃんと仲良くしてくれるかな? 愛犬はヤキモチ焼きだしなぁ……。 出産準備から娘が6歳になるまで、関係性の変化も興味深かった、筆者の愛犬と子どもの成長ストーリーをご紹介します。

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ヤキモチ焼きの勝気なテリアが愛犬!

筆者は6年前に娘を出産しました。当時から我が家にいたのが、6歳のリンリンと2歳のミィミィ、2頭のノーリッチ・テリアです。

ドッグトレーナーの仕事もしていた筆者は、トレーナー仲間などから、赤ちゃんに対して愛犬がヤキモチを焼いて噛み付いたというエピソードなどもチラホラと聞いていたので、愛犬が我が子と仲良くなれるか、少し心配でした。

2頭とも人懐っこくて、筆者の友人の子どもが遊びに来ても仲良くはしているのですが、ミィミィがかなりのヤキモチ焼きという点で安心できません。たとえば、ミィミィが筆者の膝の上でくつろいでいるときにリンリンが近寄ってくると、「ガォーッ」と威嚇とすることも。

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犬としっかり向き合った、筆者の妊婦生活

そこで、出産準備として、ミィミィのヤキモチ対策から取り組みました。それまではミィミィを抱っこする時間のほうがずっと長かったのですが、リンリンをしょっちゅう抱っこするようにして慣らしていくなど、練習を重ねました。筆者の妊娠生活は、このトレーニングにかなりの時間を割いたことをあらためて思い出します。

さらに、子どもと暮らす、友人ドッグトレーナーから情報を収集。それによると、出産直後から、赤ちゃんのにおいのついた衣類やタオルを病院から自宅に持ち帰ってもらい、愛犬に嗅がせると良いとか。対面前から、赤ちゃんのにおいに慣れておいてもらえば、赤ちゃんを連れて帰っても「誰だ、コイツは?」と警戒せずに、スムーズに家族として受け入れてくれる可能性が高まるでしょう。

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娘と愛犬のミィミィ


緊張の初対面! 愛犬優先の日々の始まり

いよいよ、退院した筆者が娘を連れて自宅に帰る日が来ました。赤ちゃんを抱っこしたまま、直接愛犬ににおいを嗅がせるのは少し心配だったので、まずは、危害を加えるのが不可能な犬用のキャリーバッグ(笑!)に赤ちゃんを入れて対面させました。クンクンクンクンと、2頭は赤ちゃんのにおいを嗅ぎまくっています。それが落ち着いて、キャリーバッグの近くから2頭が離れたところで、筆者が赤ちゃんを抱っこしてナマで対面させてみました。なんと! 2頭とも「あ~、このにおい知ってるし」という感じで、とくに再び近寄ってくる様子もなし。関心がないようなのです。筆者はかなり拍子抜けしましたが、同時にひと安心。

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「クンクン、赤ちゃんのにおいも覚えたよ」(byミィミィ)

その後、ソファに座っての初の授乳も問題なし。ただ、ソファに座って授乳をしていると、ミィミィが赤ちゃんの顔を覗き込んできたりして邪魔をしているのは確かでした。顔には「なによ~、アタチのママ、とらないでよ!」と書いてあるように見えましたが、攻撃するような様子はありません。

赤ちゃんが犬たちにとって疎ましい存在にならないよう、いつも愛犬を優先するようにも気をつけました。授乳前は愛犬におやつをあげる、愛犬たちと室内遊びやトレーニングやスキンシップをたっぷりと取るようにするなど。「ね、かわいいでしょ? ママの赤ちゃんだよ」と、愛犬たちに何度話しかけたことでしょう。

以後、赤ちゃんと愛犬との生活はしばらく、平穏に続いていきました。

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一緒に寝ているのを見つけたら、すかさずカメラを構えました

生後1カ月を過ぎたら、娘は抱っこひもやベビーカーで、犬の散歩に毎日一緒に出かけました。犬にとっては日々最大のイベントである散歩という行動をともにさせることで、なるべくはやく娘を同じ群れの仲間として犬たちに認めさせたかったからです。その甲斐もあってか、愛犬たちは、泣き声がすると、寝ていてもムクッと起き上がってすぐに娘のもとへ駆けつけたりするように。まるで、心配して様子を見に行ってあげているようでした。

その後、娘がハイハイを始めてからは、大変な日々が再来。

好奇心の塊になった娘が、犬の飲み水のボウルに手を入れて一面ビチャビチャにしたり、ボウルを引っくり返したり。さらに、愛犬の食事中には高速ハイハイで近づいていってしまうのです。ミィミィはごはんを奪われまいと、「ガオッ」と威嚇。その一件以来は、愛犬の食事中は娘をベビーサークルに入れるようになりました。赤ちゃんが来たせいで、愛犬たちの制限が増えたり、これまでの生活スタイルの変更を迫られるのはストレスになると思ったからです。赤ちゃんは、ベビーサークルに入っても不満そうな顔はせず、中にあるおもちゃをつかみながらご機嫌に遊んでくれるのがありがたいところ。

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パチリ。ふたりとも、よい笑顔で記念撮影♪


「なんで私の言うことは聞いてくれないのっ!」

娘が物心ついてからは、公園で一緒に楽しそうに走ったりする様子や、娘が投げたボールをリンリンが走って取りにいく様子などを見ては、筆者も頬を緩ませていました。まるで、姉妹のようです。

ところが、娘が「オスワリ」と言っても、愛犬たちは無視をするという事態が頻発。娘は「なんで、わたしの言うことは聞いてくれないのーっ」と、大泣き。仕方がないので、娘の背後にさりげなく立って、犬に向かってハンドシグナルで「オスワリ」をさせたりする策を練りました。

あるときは、娘が座ろうとしたソファを2頭の犬が占領していたので「ねぇ、リンリン、ミィミィ、どーいーて」と呼びかけていましたが、愛犬たちは娘をチラ見しただけ。「もおおおーーー」と、金切り声をあげる娘……。

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一緒に散歩に行くと、同じ行動をするように!

相手は自分の思うようには動かないことなど、人間の兄弟姉妹がいない娘でしたが、様々な思いをしながら多くを学んでくれたのではないでしょうか。

そのうちに、愛犬と意思の疎通がうまくいかないと「ねぇ、ママ。リンリンは今、なんて言ってるの?」と聞いてくるように。「ん? これは嫌だなって言ってるよ」などと、なんとなく代弁するようになりました。すると、娘は友達に「ママはね、犬さんと目と目でお話しできるんだよ」などと言うように。「ねぇ、どうやったら犬さんとお話しできるようになるの?」と、筆者は娘の友人から聞かれるようになって少し恥ずかしい思いをしていた時期もあります。

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こちらも、行動がリンク。3姉妹、鳩を見つめています

先月、娘は6歳になりました。今は家に遊びに来た友達に、「こっちがリンリン、12歳。しっぽの黒いほうがミィミィで、8歳。リンリンはすごく美人でね、やさしいの。ミィミィは甘えん坊で、ちょっとハチャメチャなところがあるんだよ。あ、お口にチューしてくるから気をつけてね。あとね、リンリンはおもちゃとか咥えて持って行っちゃってガジガジ壊すから、おもちゃを咥えてるのを見たらすぐに『オフ』って言って。そうしたら、口から放すから」などと説明できるようにまでなりました。筆者がいつも愛犬について表現している言葉を、そのままコピペしたようなセリフなのがおかしいのですが……。

最近は「犬さんも寒いかな? リンリンはおばあちゃんだし、ね」と、ソファで寝ているリンリンに膝掛けブランケットをかけてあげたりしています。そんな娘に、ありがとうと伝えるかのように、リンリンは娘の手の甲を舐め続けていたり……。

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3歳頃から、愛犬に時々こうして世話を焼くようになりました

数年後には、娘は愛犬の介護や死に向き合うことにもなるでしょう。
子どもと愛犬との関係性は、今後どのように変化していくのでしょうか。日々、興味深く見守っています。
たくさん写真を撮って、愛犬との楽しい思い出を娘の記憶にもたくさん刻んであげたいと思っています。

連載情報

ペットと一緒に

ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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