【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第350回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、2月3日から公開となる『羊の木』を掘り起こします。
異色漫画を吉田大八監督が大胆にアレンジ
さびれた港町・魚深(うおぶか)に、見知らぬ6人の男女が移住してきた。市役所職員の月末一(つきすえはじめ)は彼らの受け入れを命じられるが、彼らに尋常ではない様子を感じる。6人は言動に落ち着きがなく、しかも彼らの周囲には不審な同行者がいた。
実はこれは受刑者を仮出所させて過疎化が進む町で受け入れる国家の極秘プロジェクトで、彼らには殺人歴があった。
そんなある日、港で死亡事故が発生。月末の同級生・文(あや)を巻き込んで、6人の心が交錯していく…。
原作・山上龍彦、画・いがらしみきおと、ギャグ漫画で知られる二人がタッグを組んだ異色作を『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督が映画化したヒューマン・サスペンス。
殺人歴のある元受刑者の移住を受け入れた町を舞台に、移住者たちの素性を知らされていない町の人々の日常が歪んでいく様を、裏事情を知っている市役所職員の目を通じて描かれています。
主演を務めるのは、これが吉田組初参加となる錦戸亮。強烈な磁場を発する元受刑者たちの間を右往左往する市役所職員役を熱演。
月末の同級生・文役には木村文乃、そして町にやって来る“異分子”とも呼べる移住者たちに扮するのは北村一輝、優香、市川実日子、水澤紳吾、田中泯、松田龍平たち演技派キャストが集結。
俳優たちの見事なアンサンブルが化学反応を引き起こし、時にサスペンスフルに時にコミカルに人間の本性をあぶり出します。また昨年末に逝去した名優・深水三章が、物語に一石を投じる重要な役どころで出演しているのも見逃せません。
吉田大八作品の魅力は、漫画や小説を単に実写化するのではなく、映画として原作とは明らかに別物の“作品”を生み出すこと。
本作でも、これからの日本社会を予見させるような設定と「元殺人犯という究極の“異物”との共生」という原作にあるセンセーショナルなテーマを生かしつつ、完全オリジナルの世界観を創造しています。
観る人の数だけ映画への解釈が違ってくる作品をあなたはどう捉えますか?
羊の木
2018年2月3日から全国ロードショー
監督:吉田大八
原作:「羊の木」山上たつひこ いがらしみきお(講談社イブニングKC刊)
出演:錦戸亮、木村文乃、北村一輝、優香、市川実日子、水澤紳吾、田中泯、松田龍平 ほか
©2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社
公式サイト http://hitsujinoki-movie.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/