日本人の活躍はオリンピックだけではなかった!

By -  公開:  更新:

【報道部畑中デスクの独り言】

NASA 船外活動 金井宣茂

船外活動の様子(写真右上が金井さん NASAテレビから)

平昌オリンピック、2月17日はフィギュアスケート男子で羽生結弦選手がオリンピック2連覇の金メダル、宇野昌磨選手が銀メダルの「ワン・ツー・フィニッシュ」。18日は女子スピードスケート500mで小平奈緒選手が金メダルで今大会2度目のメダル獲得。先週末の日本は歓喜の渦に包まれました。

星出彰彦 地上 交信

地上で交信を担う星出彰彦さん(写真上 NASAテレビから)

そうした中で、もう1人、日本人として大きな仕事を成し遂げた人がいます。昨年12月から国際宇宙ステーションに長期滞在中の宇宙飛行士・金井宣茂さんです。羽生選手がショートプログラムで1位となり、フリーを前に金メダルへの期待が膨らむ中の2月16日午後9時過ぎ(日本時間)、船外活動に臨みました。

ヴァンデハイ飛行士 NASA 船外活動 金井宣茂

金井さん、ヴァンデハイ飛行士と正対(NASAテレビから)

船外活動は1965年に始まって以来、まさに宇宙飛行士にとって最大の見せ場と言って過言ではありませんが、ご存知の通り、相当の困難を伴います。何かの拍子にステーションから飛ばされてしまうと、飛行士は“宇宙の闇”に消えてしまいます。そうならないためにセーフティテザーと呼ばれる「命綱」をつけますが、からんだりしないよう細心の注意が払われます。ステーションの周りを手すりを這うように動き、戻る時も同じルートをたどります。

船外活動 工具

船外活動に使用される工具(これは試験用です)

宇宙服の重さは約120㎏、「ヒトの形をした宇宙船」とも呼ばれ、技術の粋が集められています。服の中の気圧は0.3気圧、飛行士は船外活動の6時間前には起きて、低圧の環境に備えます。さらに手の部分にはめる手袋は…軍手をした上にスキー手袋をする感覚で、そういう状況で6時間近くの作業に耐えるためにはトレーニングで筋力をつけることも必要です。また当然、外にはトイレがありません。万が一の場合に備えて、使い捨ての“おむつ”も装着されています。そして宇宙服を着た訓練は、地上ではステーションの模型が沈められた巨大プールの中で行われるのです。

宇宙服 JAXA 筑波 宇宙センター 記者 説明会

記者説明会で置かれていた宇宙服(JAXA筑波宇宙センター)

今回の金井さんの任務は、ロボットアームの老朽化した部品を交換する作業。部品は把持機構と呼ばれるアーム先端の部分、重さは約200㎏。「こうのとり」などの補給船をつかむためにはこの部分は欠かせません。これもまた物資の「命綱」と言えます。専用の工具などを使い、金井さんはアメリカのヴァンデハイ飛行士とともに慎重かつテキパキと作業を進め、予定より30分ほど早く終了しました。

NASA 船外活動 金井宣茂

(上)船外活動の様子(写真上が金井さん NASAテレビから)/(下)船外活動の様子(奥に見えている脚が金井さん NASAテレビから)

一方、地上で交信の任務にあたったのは、約5年前に船外活動を行った“先輩”星出彰彦さん。星出さんは当時、電力切替装置の交換という作業を担いましたが、ボルトのねじ山に金属ごみが噛み込んでボルトが締められず、2回船外活動を行うという事態となりました。ステーション内の歯ブラシを改造した器具を使って(「クリーンナップツール」と呼ぶそうです)無事解決! その後、わがニッポン放送の番組「オールナイトニッポン」で星出さんとラジオ界初の生交信が実現しました。あの時の貴重な経験がいまも覚えています。

星出彰彦 地上 交信

地上で交信を担う星出彰彦さん(NASAテレビから)

その星出さん、今回、NASAテレビで時折、表情が映し出されていましたが、かつての経験からか気合十分、危なげなく金井さんらの任務をしっかりと受け止めていたように思います。交信は終始英語で行いますが、終了間際に「おつかれさまでした」と日本語で一言、照れくさそうに笑っていたのが印象的でした。

NASA 船外活動 金井宣茂

金井さんに取り付けられたカメラからの画像(NASAテレビから)

金井さんがステーションに戻った時の顔は晴れやかな上に、しれっとしていたように見えました。その後のツイッターでは「苦しくなった時に、日本からの声援が聞こえたような気がします」「お祭りの後のような、ちょっと寂しい思いです」と綴っています。オリンピック選手と同じく、何かを背負って大きな責任を果たした時は、誰もがこう感じるのかもしれません。

NASA 船外活動 金井宣茂 宇宙服

金井さん、宇宙服を脱いで任務完了!(NASAテレビから)

地上ではオリンピックで日本人選手が歓喜の渦をもたらしましたが、宇宙でも日本人が活躍をしています。そこには多くの人々の支えがあるのもまた共通するところです。オリンピックとともに船外活動を見守った私としてはすっかり寝不足の週末となりました。

NASA 船外活動 金井宣茂

記者説明会で船外活動の動きが模型で説明される

Page top