茶事を通じて伝える真の「おもてなし」

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5月16日放送 ゲスト:茶事の出張料理人 半澤鶴子 第3回

日本で数少ない茶事の出張料理人。
おもてなしの原点と言われる「茶事(ちゃじ)」に人生をかけて全国行脚。懐石から始まり、酒を振るまい、最後にお茶でもてなす…千利休が確立した4時間ほどの茶会。茶事とは何か、半澤鶴子氏の生き様から人生のヒントを探す——。


「出会い」とは、その人の将来まで責任を持ち祈ること

黒木)毎日、さまざまなジャンルのプロフェッショナルにお話を伺っていくあさナビ、今週のゲストは茶事の出張料理人、半澤鶴子さんです。
茶事というのは「おもてなし」の原点とも言われています。お話を伺っていると、「今日のものを今日のお口に。お役に立ちたい」という。それが本当、おもてなしの原点なのでしょうか?

半澤)そうですね。いま出会ったものを掬い取って、お米さんと鰹さんでいい出汁が取れたら、1にも3にも5にも10にもしてくれるので……素材が持っている力を信じてやれば、そんなに難しいことはいらない。まして、お茶の一服のための料理だから、凝った料理はむしろお茶の邪魔になるので、いらない。本当に素材の力だけの世界。

黒木)「夏は夏の野菜を食べましょう」とか、そのときの野菜を食べる話をよく聞きますが、そういうことですね。『人生に愛される』の本に、「おもてなしは人の役に立つ人間でありたいという心から」というのがありますね。

半澤)ここは、最初は意識して鍛錬した時期があったかもしれない。というのも、会った瞬間に、「この方のために、何がしてあげられるのかしら?」というのを鍛錬し続けていく。「人と出会う」というのは、私はその人の将来まで責任を持つことが「出会い」だと思っているから。だから、そのときだけ「何がしてあげられるか?」ではなくて、これだけ1億以上のお人がいるなかで、出会える人は男女含めてたかが知れている。そしたら、やはり出会いというのは、その人の将来にまでキチッと責任を持てるような会い方をしたい。それが祈りになって、茶事になっていく。

黒木)その人の将来まで責任を持つ。重い言葉ですね。

半澤)でも、意識して。茶事はいっぱい恥をかきますから。決まりごとがいっぱいあって。いろいろな流派があって。でも、そこの亭主が「黒」と言えば黒。「私はこう思う」は一切いらない。自分を消す世界です。だから、そのなかで純粋に思えるとしたら、なかなか無心にはなれない。だけど、「この方にいい人生が来ますように。いろいろな良い人と出会いがありますように」と、祈ることはできる。それだけでずっとやり続けることができる。仕事そのものって、祈りと同じではないでしょうか。

人生に愛される 幸せはお人から運ばれてくるものよ 半澤 鶴子 講談社 BOOK倶楽部

『人生に愛される 幸せはお人から運ばれてくるものよ』(半澤 鶴子)|講談社BOOK倶楽部HPより

「有え難き時間」をいただいているから「有難う」

黒木)なるほど。そう思うと、いろいろなものへの取り組みが変わっていきますね。

半澤)愛おしいでしょう? 時間も愛おしい。お人も愛おしい。「そのとき」を共有できるというのは、それこそ何気なく「ありがとう」と言うけれど、「有え難き」があって、初めて「有り難う」に繋がっていきます。やはり「有え難き時間」をいただいている愛おしさ。お人との出会いの愛おしさ。そんなのが、一席のいい茶事をしていく原点です。

黒木)そこにたどり着いたら、もう茶事しかない。

半澤)そう。シンプルに削っていける世界です。本当に、人間にとって大切なことはそう多くないという原点に立てる。

黒木)いまのようなことを心がけてやっていらっしゃる。いつまでもやっていこうと思っていらっしゃるのですね。


茶事を若い人たちにも繋げていきたい

半澤)それは神さま任せです。キャリアは、持って死ねないでしょう? お人のなかに残しておくものでしょう? だから、主人は恨めしそうに「じっとしていれば金は残ったのに」と言います(笑)。

黒木)人の心のなかに半澤さんが残っていって。おもてなしが残っていくということですね。

半澤)キャリアというものが、何故かお茶の文化は、「茶道のお手前」と「茶事」で二分化してしまっているのが現状です。お茶をやっていらっしゃる方でも、「茶事」がピンと来ない人が多くなっているので、それではもったいない世界です。茶事をもっと若い人たちに繋げていくにはどうしたらいいかな、と思って。身体を惜しんではならんな、と。そんな大層なことはできないけれど、そう思います。

黒木)多くの方が、こういうことを知らないともったいないですよね。

半澤鶴子/茶事の出張料理人
1943年(昭和18年)・満州生まれ。
幼少期に両親と離別し、中学まで広島の養父母のもとで育つ。
中学卒業後に洋裁の学校で学び、20歳で結婚。一男一女をもうける。
結婚後に湘南高等学校(通信制)を卒業。
保母の資格と調理師免許を取得し、23歳から鎌倉の保育園に勤務。
30歳からは料理の道を志し、料理講師として働く。
40歳のとき、かねて興味のあった茶事一本にしぼって活動するため、出張料理人に転身。
現在は、千葉県東金市の鶴の茶寮や京都で茶事の実習や日本料理の講習会などを行いつつ、全国を行脚して、地の食材を使った「茶事」を行っている。
全国行脚の旅を始めたのは70歳から。茶事の神髄を極めるため。釜から茶道具まで車に詰め込んで、和服姿で自ら運転して移動する。

(2018年5月16日放送分より)

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