「いただきます」という言葉は日本だけのもの

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5月18日放送 ゲスト:茶事の出張料理人 半澤鶴子 第5回

日本で数少ない茶事の出張料理人。
おもてなしの原点と言われる「茶事(ちゃじ)」に人生をかけて全国行脚。懐石から始まり、酒を振るまい、最後にお茶でもてなす…千利休が確立した4時間ほどの茶会。茶事とは何か、半澤鶴子氏の生き様から人生のヒントを探す——。


旅をすることは歴史に出会うこと

黒木)毎日、さまざまなジャンルのプロフェッショナルにお話を伺っていくあさナビ、今週のゲストは茶事の出張料理人、半澤鶴子さんです。
講談社から発売の『人生に愛される 幸せはお人から運ばれてくるものよ』は2月に発売されました。これはずっと、いろいろな人にお手紙を書いたり、メッセージしたことをまとめて、「若い人にも読んでいただきたい」ということでお出しになったものということですが、「鈍感になりたくないから旅に出る」と書かれています。

半澤)能天気なのよ、本当に(笑)。「旅」そのものって、歴史に会うでしょう? 歴史に会うこと。お茶は火と水と土の3つの文化なんです。そうすると、その原点を知るのは、人類が歩んできた営みの流れのなかで、中国から渡って来たお茶かもしれませんが、これが向こうには残っていない。日本に渡ってきて、日本独特のものにしていくアイデンティティは何処から生まれるのだろう? 興味がある。だから、旅をするというのは、歴史に出会うことと、そこでなければ出会わないようなお人となりの、微妙な空気感がある。だから、尽きないですね。

黒木)「毎日新しい気持ちで迎えるのはたやすくないから、旅に出たいと思う気持ちがある」というのも書かれていましたけど、勇気がもらえます。

半澤)そうですね。昔、お人が来たときにお酒をまず振舞うでしょう? あれは交通網がまだ発達していない頃、他所の土地のものが来ると、違う文化を持ってくるじゃないですか。異文化を運んでくるものは、神様なの。神様にお神酒を与えるから、いらした方に草鞋を脱いでもらったら、一献傾けてもらって、「まずどうぞ」と言って、お酒を振舞う。そこからの流れですね。
異文化に出会うことは、昔は尊い神様がいらして下さったことだった。それをこっちから出掛けて、いろいろな神様に出会わせてもらっているのだと思います。

人生に愛される 幸せはお人から運ばれてくるものよ 半澤 鶴子 講談社 BOOK倶楽部

『人生に愛される 幸せはお人から運ばれてくるものよ』(半澤 鶴子)|講談社BOOK倶楽部HPより

「お裾分け」は「お福分け」

黒木)そのお話も書かれていたし、「お裾分け」じゃなくて「お福分け」というお話とか。

半澤)本当にそれも、行った先々で教わったものです。「お裾を分けたわけではありません」と言われると、「本当ですね。お福でしたね」と思うの。だから、いまでも何か残ると、「はい、お裾分け」じゃなくて「はい、残り福」と言ってみなさんに少しでも鮮度のあるうちにお分けします。ものは、作った瞬間から味が落ちていくので、「残ったものは、みなさんがお持ち帰りなさい。力のあるうちに、お口の中に運びなさい」と言っています。残り物も「片付ける」ではなく、「残り福をいただく」。「いただく」ということは、神様にいただいて「いただきます」という、日本だけの言葉なので。世界中、どこにも「いただきます」という言葉はありません。やはり、八百万の神様と歩んできた、自然と共生してきた優しい民族から生まれたお茶だと思います。

黒木)これからの目標はどうですか? 呼ばれたら、続けていかれるのですか?

半澤)不都合ができて運転できなくなったら、それこそ新幹線になって、口だけの指導になるかもしれない。でも、失ったことを悲観するのではなく、そのときにできることを考えてやるでしょう。
丸いものってどこかデコボコができると、どこかでそれを埋めようとする力がある。地球は丸いから、人間の心も丸くして、どこかがボコッとへこんだら、どこかで補おうとする。ストレスが溜まったら、どこかで補おうとする。それと同じで、きっと知恵をくださるとのだと思います。持てる力はたかが知れているし、やれることもたかが知れている。だから悩まない。できることを、目の前のことをさせてもらう延長に歳が追いかけてくる。

黒木)半澤さんのお話を聞き足りない方がたくさんいると思いますので、講談社から出ている「人生に愛される」という本に、てんこ盛りに入っておりますので、またお読みください。

半澤鶴子/茶事の出張料理人
1943年(昭和18年)・満州生まれ。
幼少期に両親と離別し、中学まで広島の養父母のもとで育つ。
中学卒業後に洋裁の学校で学び、20歳で結婚。一男一女をもうける。
結婚後に湘南高等学校(通信制)を卒業。
保母の資格と調理師免許を取得し、23歳から鎌倉の保育園に勤務。
30歳からは料理の道を志し、料理講師として働く。
40歳のとき、かねて興味のあった茶事一本にしぼって活動するため、出張料理人に転身。
現在は、千葉県東金市の鶴の茶寮や京都で茶事の実習や日本料理の講習会などを行いつつ、全国を行脚して、地の食材を使った「茶事」を行っている。
全国行脚の旅を始めたのは70歳から。茶事の神髄を極めるため。釜から茶道具まで車に詰め込んで、和服姿で自ら運転して移動する。

(2018年5月18日放送分より)

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