食べて欲しいと思っているものの声が聞こえる

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5月17日放送 ゲスト:茶事の出張料理人 半澤鶴子 第4回

食べて欲しいと思っているものの声が聞こえる

日本で数少ない茶事の出張料理人。
おもてなしの原点と言われる「茶事(ちゃじ)」に人生をかけて全国行脚。懐石から始まり、酒を振るまい、最後にお茶でもてなす…千利休が確立した4時間ほどの茶会。茶事とは何か、半澤鶴子氏の生き様から人生のヒントを探す——。


地球を削って使った食材は徹底的に成仏させてあげる

黒木)毎日、さまざまなジャンルのプロフェッショナルにお話を伺っていくあさナビ、今週のゲストは茶事の出張料理人、半澤鶴子さんです。
現在74歳で、おひとりで運転して、全国を回っている。「歳を取ると折り合いをつけなければならない」と、著書の『人生に愛される』に書かれていますが、ご自分は人が捨てるようなものばかり欲しがるとか。

半澤)お野菜は皮の方が身より栄養価はいっぱい持っているんですよね。だけど、皮だから土に近い部分はアクも強い。「そのアクをうま味にかえるにはどうすればいいか?」ということで、お人が捨てそうなところを一品の馳走にするのに、とても生き甲斐を感じます。もともと茶事は、ゴミを出さない。禅寺の仕事と同じで、ゴミを出さない仕事なので、まあ、ウロコとエラくらいは捨てるけれど、ほとんど骨まで愛して、何も捨てませんね。
地球を削って使ったものは徹底的に成仏させて、シンプルにお人の口に入れられたらいいなと思う。

人生に愛される 幸せはお人から運ばれてくるものよ 半澤 鶴子 講談社 BOOK倶楽部

『人生に愛される 幸せはお人から運ばれてくるものよ』(半澤 鶴子)|講談社BOOK倶楽部HPより

歳を重ねることは悩むことではない

黒木)半澤さんの考える「歳を重ねる」とは、どういうことですか?

半澤)神様任せです。逆に歳を取る人はいないのだから、悩むことはいらない。だけど、折り合いをつけていくというのは、その前から考えるのではなく、不都合が起きて向かい合ったとき、若いときには出会わなかった不都合に出会っていくと思うの。出会ったときに考えて知恵を持っていけば、若いときみたいにできないことを悲観するのではなく、不都合と向かい合ったときに残っている部分で、それを補うにはどうすればいいか、知恵が湧いてくる。
だから、現役で年を重ねるということは、不都合に悩む必要がない。その年のときに、必ず違う答えが見つかるはず。若いときと比べて減ったものに悩むからと違う? それは、みんな同じように歳を取るのだから、悩むことではない。歳を取ったからこそ湧く知恵がある。人生歩んできたキャリアがあったら、必ず知恵は積ませてもらえるものと違うの? だから、歳を取るのすごく楽しみ。


自然の恵みから健康的なエネルギーを貰っている

黒木)元気の出るお話です。健康管理はどうなさっていますか?

半澤)何もしていないけど、私は本当に足下にある、「本当に食べて欲しいな」って言っているものの声が聞こえる。そうすると、庭にスギナとか、車前草とか、ドクダミとか。どうしようもないものばかりだけど、みんなものすごい、繁茂する力を持っている。それだけ生命力がある。それらを干してお茶にして、いま家に集まってお勉強なさる方々のためにも湿度とか温度とか、風邪が流行していたら、効くものをブレンドして、お茶にしてあげているの。
そういう自然の持っている力のものが足下にいっぱいあるんで。ほとんど草だけで生きています。
あとは仕事柄、魚の鮮度のいいものをいただいています。セレモニーですから、お料理屋さんみたいに行李(こうり、竹などで編んだ一種のかご)につめて、向付(むこうづけ、会席料理などで膳の向こう側につける料理)のお刺身みたいにするのとは違うから。そうすると、鮮度の悪いものは使ってられない。「いい素性の、いい大海を泳いで来た顔をしているな」というものを選びます。男には惚れんけど、魚には惚れる(笑)。
その魚をきちっとお人の口に運ぶ。自分が骨を取って、それをいただく。自然の恵みに、仕事柄恵まれていると思います。

黒木)自然の力をエネルギーに変えていらっしゃるのですね。

半澤鶴子/茶事の出張料理人
1943年(昭和18年)・満州生まれ。
幼少期に両親と離別し、中学まで広島の養父母のもとで育つ。
中学卒業後に洋裁の学校で学び、20歳で結婚。一男一女をもうける。
結婚後に湘南高等学校(通信制)を卒業。
保母の資格と調理師免許を取得し、23歳から鎌倉の保育園に勤務。
30歳からは料理の道を志し、料理講師として働く。
40歳のとき、かねて興味のあった茶事一本にしぼって活動するため、出張料理人に転身。
現在は、千葉県東金市の鶴の茶寮や京都で茶事の実習や日本料理の講習会などを行いつつ、全国を行脚して、地の食材を使った「茶事」を行っている。
全国行脚の旅を始めたのは70歳から。茶事の神髄を極めるため。釜から茶道具まで車に詰め込んで、和服姿で自ら運転して移動する。

(2018年5月17日放送分より)

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