中国の主導権回復でここから動き出す“米中による北朝鮮問題”

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月22日放送)に外交評論家の宮家邦彦が出演。金正恩委員長が3度目の訪中を終えたことから、北朝鮮を通した今後の米中関係について解説した。

習近平 金正恩 握手

2018年6月20日、北京の釣魚台迎賓館で握手する中国の習近平国家主席(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長。労働新聞が21日掲載した(コリアメディア提供・共同) 写真提供:共同通信社

金正恩氏が3度目の訪中を終える

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、昨日3度目となる中国訪問を終えた。中国の習近平国家主席が金委員長をもてなした形になったが、緊密な中朝関係の演出はアメリカのトランプ政権への警告との見方も出ている。

飯田)この短期間に3度も、しかも相互訪問ではなく一方的に行き続けているという感じですが。

宮家)昔なら朝貢外交という形です。警告というより、北朝鮮は本来、中国に心を許していないのですよね。それは歴史的に見てもそうだし、金正恩さんのお父さんが改革開放を嫌って中国との関係を非常に難しくしたわけです。それをずっとやっていても、アメリカと喧嘩となったら中国と話さざるを得ないので、喜んで行っているというより背に腹は代えられないというところでしょうね。本来であれば独立した朝鮮半島を維持する方が日本にとっては利益だけれども、中国としては、南北で始めた和平プロセスにアメリカが入って中国が全然いないじゃないかと。一昔前は中国が6カ国協議で全部仕切っていたわけですが、そういうことができなくなったので巻き返しを計り、そして3度目の訪中で主導権を回復した。
私から見れば、やられてしまった、中国は凄いな、と。これでようやく本質が見えてきたと思います。これは米朝の問題ではなくて、米中の問題なのですよね。これから数十年続く東アジアにおける米中の競争、もしくはライバル関係、衝突、対立、その一環なのです。だから真打ち登場ということです。

飯田)ここからが本番ということですね。

宮家)それでアメリカに対してメッセージを送り始め、結局北朝鮮の問題も米中が握ってなんぼですから。米中が握っていないうちに物事は動きませんので、そのプロセスが始まったということですね。これも1953年体制の終わりの始まりのうちの1つです。

アメリカと中国~トゥキディデスの罠

飯田)歴史の教科書を紐解くと「トゥキディデスの罠」という話があるじゃないですか。元々超大国があって、それに対して新興の大国がのし上がってくると必ずぶつかるのは宿命のようなものだ、とありますけれども、まさにそれがいま始まっているということですか?

宮家)かもしれませんね。日本だって1930年代に東アジアを台頭する国として、アメリカの西太平洋における覇権にチャレンジをして敗れたわけですよね。見ていると、中国が似たような間違いを犯しているような気がします。しかも中国は日本の10倍位大きいので、やれると思っているかもしれません。それは非常に危険なことなので、歴史の格言が繰り返されないことを祈るしかないのだけれど、大きな流れとしてこれからは米中の衝突、もしくはライバル関係の悪化という形になっていくと思います。

飯田)この中国の組織のことを考えると、外交部の力が弱くて、一方軍の方は共産党の軍隊ですよね。そうすると、党が政府を監督するという体制ですか?

宮家)党が全てを指導するわけですよね。

飯田)そうすると、必然的に軍の発言力の方が強いわけですね?

宮家)ただ軍について言うと、中国の軍人というのは非常に地位が低い。日本は士農工商かもしれません。しかし、中国にとって軍人になるなんていうのは「どうかしちゃったんじゃないの?」くらいで。彼らの理想は管理ですよ。試験に受かって高級官僚になって、皇帝に仕える文民なのです。シビリアンが偉いのですよ。

飯田)そうか、元々そういう国か。

宮家)だから決してミリタリーは尊敬されていないのです。確かに権力は銃口から生まれるけれど、それを牛耳っているのはその上の党のシビリアンです。組織的に戦えるかという点で見れば、中国の軍隊は強くないですよ。したがって、戦わずして勝とうとするのです。だからといって侮るつもりもないけれど、中国の軍隊というのはちょっと特殊ですよね。

中国の主導権回復でここから動き出す“米中による北朝鮮問題”

日本はアジアの国として生きるのか否か

飯田)米中がにらみ合う形になってくると、日本は地理的にも丁度真ん中に挟まれる形ですよね。

宮家)そうですよね。これはもう明治の時代からそうでしょう? アジアは1つと言った人もいれば、脱亜入欧と言った人もいた。西側なのか東側なのか、日本は19世紀からずっと悩んできた。未だに答えは出ていないと思います。似たようなことを悩んでいる国は他にもあります。例えばトルコは中東なのか、ヨーロッパなのかを悩んでいるのです。ロシアもアジアなのかヨーロッパなのか。どっちでもない国というのはいくつかあるのです。そのなかで有力なのがロシア、トルコ、日本です。日本は結局両方の良いところを取りながら国益を最大化していくしかないのですが、いまの状況だとアジアに入るということは中国の勢力下に入ることなので、それは独立心の強い日本にとっては、必ずしもベストな選択ではないと思います。

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