北海道地震の特徴と都市が抱える地震への脆弱性

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月10日放送)に地震学者で武蔵野学院大学特任教授の島村英紀が電話出演。今回の地震の特徴と今後注意すべき点について解説した。

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【北海道地震】厚真町吉野地区では、あたりが暗くなってからも懸命の捜索が続いた=2018年9月8日午後、北海道厚真町 写真提供:産経新聞社

北海道地震~死者39人、安否不明者1人に

北海道南西部胆振地方東部を震源とする最大震度7の地震で、死者は大規模な土砂災害のあった厚真町で35人。札幌市、苫小牧市、むかわ町、新ひだか町でそれぞれ1人ずつ、合計39人となっている。また、安否不明者は厚真町の1人となっている。

飯田)厚真町の安否不明者1人が発見された、と現地では報道されています。警察と自衛隊が7,000人以上の体制で、残る不明者の捜索や、被災者の支援を続けている現状です。
こうした被害をもたらした今回の地震のメカニズムについて、ご自身も札幌で被災された、地震学者で武蔵野学院大学特任教授の島村英紀さんに改めて伺います。

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【北海道地震】液状化で傾いた住宅を見つめる地元住民ら=2018年9月8日午後、札幌市清田区 写真提供:産経新聞社

今回の地震の特徴~通常の内陸直下型地震に比べて震源がかなり深い

飯田)まず、6日未明の地震について。島村さんご自身も地震に遭われていましたよね。どのような状況でしたか?

島村)私は札幌市の南方に住んでいます。震源から50キロくらいです。ラジカセが机から落ちたり、家のなかが滅茶苦茶になるような被害を受けました。
それから、断水と停電がすぐに始まりました。その意味では「被災者」ですね。

飯田)そうした被害をもたらした今回の地震。震源の深さは37キロ、マグニチュード6.8で最大震度7ですが、今回の地震の特徴は、どのようなものですか?

島村)日本で発生する地震は2種類あります。海溝型地震と、内陸直下型地震です。今回は典型的な内陸直下型地震だと思います。ただ、内陸直下型地震は普通なら、この間の大阪もそうですが、震源の深さは10キロや20キロ程度です。37キロというのは非常に珍しいです。その意味では、もっと震源が浅くて、大都会を襲ったら、こんな被害では済まなかったと思います。

飯田)40キロ弱くらいでこのような地震が起こるとなると、北海道だけでなく全国で可能性が広がっていく、ということですか?

島村)内陸直下型地震は、どこでいつ起こるかまったく分かりません。全国のどこでも可能性があると思います。

活断層の定義~活断層が見えない場所でも地震は発生する

飯田)一部の報道では、「新しい活断層が見つかった」という話もあります。未知の活断層がたくさんあるわけですか?

島村)いままで日本で分かっている活断層は2,000ありますが、6,000くらいはまだ分かっていないところがあると思います。
活断層には明確な定義があり、少し深くて、地震断層が地表に見えていない物は活断層と認定しないことがあります。その意味では、例えば首都圏のような厚い堆積物に覆われている場所では、「活断層が見えない」となります。つまり、見えないけれど地震は起こる、ということが十分あり得るのです。

飯田)大きな地震が起こると、それでいろいろなところに歪みが生じ 、また別の場所で地震が起こると言われています。そうした可能性も、今回ありますか?

島村)あり得ると思います。地震を起こすエネルギーがあちこちに溜まっていて、1つ地震が起こることで留め金が取れてしまうわけです。そして、隣で地震が起きやすくなる、ということが十分に考えられます。

文明が進歩する分、地震に弱くなる

飯田)今回は島村さんご自身も被災されたわけですが、震源から近いとはいえ、やや距離が離れている札幌でも液状化などいろいろな被害が出ましたよね。これは、都市の脆弱性ですか?

島村)「文明が進歩する」ということは、「その分地震に弱くなる」ということです。その意味では人口200万人近くの大都会である札幌は非常に地震に弱くなっていると思います。
液状化の被害を受けた場所は、昔は泥地や沼地のような土地で、そこに火山灰を盛って平らにした場所なのです。だから、昔は人が住んでいなかった場所に無理して住んだ格好です。そのため、地震に非常に弱いところが、札幌に限らず、日本の大都会のあちこちにあります。

飯田)すると、土地の歴史というのをちゃんと見ておかなければいけない、ということですか?

島村)はい。昔、人が住まなかったところに人が住み始めた。それが大都会の特徴ですが、その意味ではあちこちに弱いところがあると思います。

飯田)都市に生活する者として、どのような備えをしておけばいいと思いますか?

島村)1つは、こうした身体に感じる、有感地震が札幌では年に5回もないのです。地震は非常に遠い存在だと思っていたのですが、そんなことはない。「全国どこでも直下型地震、非常に大きな地震に遭う。遭ったらこうなる」ということを普段から考えておくことが大切だと思います。

飯田)「避難所はどこか」とか、「停電したらどうなるか」などを想像しておかなければいけない、ということですね。

島村)もちろん毎日心配することはないですが、年に数回は家族の方や職場の方と、そういったことを話していくことが非常に大事だと思います。

飯田)島村さんご自身は、現在不便なことはありますか?

島村)マンションに住んでいて、水道はポンプアップしています。電気が回復したときに水道も回復しました。だから札幌はいいのですが、北海道全域から言うと、まだ1%くらい、かなりの数の電気が回復していないところがあるし、家が壊れてしまったところもある。その意味ではまだまだ長引くと思います。

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