犬は親友。小学生と犬が7年間で築いたあたたかな関係性

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【ペットと一緒に vol.108】

ペット 犬 いぬ イヌ ノーリッチ・テリア ノーフォーク・テリア
生き物にやさしい社会は、人にもやさしい社会になると、筆者は考えています。
そんな視点で見つめ続けた、筆者の娘と犬との7年間の成長記録をご紹介します。


愛犬は、おねえちゃん

もうすぐ筆者の娘が7歳になります。
我が家の長女はノーリッチ・テリアのリンリン13歳、次女がリンリンの娘犬のミィミィ9歳、そして3女が筆者の人間の娘。そう位置づけています。

娘が2歳の頃、「お姉ちゃんたちが待ってるから、はやく帰らないとね~」と商店街で娘に語りかけたところ、「あら、お姉ちゃん何歳なの? お留守番、偉いわね~」と店員さんに声をかけられました。「あ、犬です」と、答えると「アハハ、そうなんだ」と店員さんも大笑い。

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リンリンと桜の季節の散歩中にパチリ

犬と娘の関係性がどうなっていくのか、出産前から興味津々でした。
リンリンとミィミィは親子ですが、性格がかなり違います。
独占欲が強いミィミィが赤ちゃんに嫉妬しないか心配で、産後は赤ちゃんのにおいのついた産着などを退院前から自宅に持ち帰ってもらい、赤ちゃんの存在を愛犬たちに事前に知らせたりしていました。
その甲斐あってか、ミィミィもそれほど娘に嫉妬せず、赤ちゃんを受け入れてくれました。

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生後数週間の娘のにおいをミィミィはよく嗅いでいました

生後30日を過ぎてからは、犬の散歩に娘を抱っこひもやベビーカーで同伴。同じ群れ=家族であるという仲間意識を、愛犬たちに持ってもらいたいという意図がありました。

そんな娘は、6年間で犬が大好きな子どもに成長しました。
筆者がしばしば「リンリンは、それはやめて欲しいって」、「ミィミィが、楽しいねって」などと娘に伝えていたため、娘は「私のお母さんは犬と会話できるの」と幼稚園で語っていたようで、「ねぇ、犬とお話しできるんでしょ? どうやって?」と、娘の幼稚園の友人たちに園庭で囲まれて、筆者は少し恥ずかしい思いをしたこともあります。
「犬さんはね、目で語りかけてくるんだよ。それから、耳やしっぽでも気持ちを表現するよ。よーく、目や体を見てごらん」と、筆者は娘や子どもたちに答えています。

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犬のマネをするのが一時期のブーム


犬さんとお話しができるママ

このような母親に育てられた娘は、愛犬に見つめられたとき、「ねぇママ、今、ミィミィはなんて言ってるの?」と聞いてくるように。
「遊ぼうよ~、だって」などと答えているうちに、娘は、犬たちの気持ちを尊重するようになってきました。「ねぇ、今、ミィミィはお腹すいたよって言ってるんじゃない?」という具合です。

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愛犬にフセをさせようと頑張っていた幼稚園時代

さらに、「リンリンに本を読んであげたら?」と、筆者は娘に読み聞かせをさせるようになりました。
イギリスのリンカーン大学による論文で、子どもの読む能力を、犬への読み聞かせが向上させる効果があると発表されているからです。
犬は読み間違いを笑ったりもせず、話を聞いてくれます。子どもは間違いを恐れる必要がなくなるので、自信がついて前向きになれるようです。

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リンリンに読み聞かせ

筆者が小学生の頃、学校で友人とケンカをしたり仲間はずれにされたりした日は、帰宅後に愛犬を相手に気持ちを聞いてもらっていたのを思い出します。批判もせず、意見も言わず、ひたすらに聞いてもらえる安心感がありました。愛犬だけは、どんな自分でも受け入れてくれるという信頼も寄せていました。
昔も今も、犬をなでると心がとても落ち着きます。近年の研究で明らかになったとおり、“しあわせホルモン”と呼ばれるオキシトシンが分泌されるからでしょう。


犬とのかかわりは子どもの社会性を育む

筆者の犬友の新居に娘連れで訪れた先日のこと。
帰宅後、宿題の日記に「きょうは、わたしとしんゆうになったいぬがいます。わたしは、そのミノルくんといういぬにスマホのがめんをみせてあげたらなかよくなって、ミノルくんがとてもすきになりました」と、娘は書き始めました。
親友という表現が微笑ましくて、筆者はニヤニヤわくわくしながら日記帳を眺めていると、「ミノルくんはスマホのがめんをずっとみているので、おやすみをしました。わたしは、ミノルくんをなでました。ミノルくんはきもちよさそうにしていました」と続けていました。
娘と犬とのかかわり方は、愛犬以外の犬にまで世界を広げているようです。

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親友になったノーフォーク・テリアのミノルくんとyoutube鑑賞

イギリスのリヴァプール大学の研究では、ペットの存在は子どもの自尊心を高めて、社会性を培う可能性があると報告されています。
ヨーロッパの研究では他に、犬と暮らす家庭の子どもは、学級内で起きた言い争いやケンカの仲裁に入る確率が高いというものもあります。

犬は言葉を話せません。人間とは違う動物なので、犬とコミュニケーションを取るには、どうしても想像力を働かせる必要が生じます。それが、犬と暮らす子どもが相手の気持ちを想像する能力に長けるようになる理由ではないでしょうか。

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半年前、リンリンの誕生日に贈ったカード

今後も、娘と愛犬との関係性の変化やかかわりを見守りながら、愛犬とのかけがえのない思い出を積み重ねていきたいと思います。

人間以外の生き物のことを思いやれる人が増えれば、きっと社会には、もっとやさしさとあたたかさがあふれるようになると信じながら。

連載情報

ペットと一緒に

ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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