いよいよ来週! はやぶさ2、リュウグウに着陸へ
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「報道部畑中デスクの独り言」(第113回)では、ニッポン放送報道部畑中デスクが、小惑星リュウグウへの着陸が迫る小惑星探査機「はやぶさ2」について解説する。
探査機「はやぶさ2」がいよいよ来週、小惑星「リュウグウ」への着陸に挑むことになりました。JAXA=宇宙航空研究開発機構によると、予定日は2月22日午前8時ごろ。現在、待機している上空20kmの高度から前日21日朝に降下を開始します。秒速40㎝で高度5kmまで降下、秒速10㎝に減速した上で、22日の朝に高度45mまで降り、その後は精密な自律航行によって着陸することになります。
小欄でもお伝えしましたが、当初、探査機は昨年10月下旬に着陸が予定されていました。しかし、小惑星の表面が予想以上に岩だらけで平らな場所に乏しく、安全な着陸に慎重を期すため、延期されていました。
「徹底的にデコボコ、歯が立たない。リュウグウが牙をむいてきた」(JAXA津田雄一プロジェクトマネージャ 以下、津田プロマネ)
昨年の10月11日、当時の記者会見が大変重苦しい雰囲気だったことを思い出します。
難関を克服するためにこの3カ月間、プロジェクトチームでは様々な検討がなされました。着陸候補地は「L08」という領域のなかで2つに絞られ、最終的に採用されたのは「L08-E1」と呼ばれる場所。他候補地より狭いものの、大きな岩がなく、また検討のために落としたターゲットマーカーと呼ばれる“目印”に近いことから、安全度が高いと判断されました。
しかし、そのため着陸方法を変更。100m四方…「学校の校庭」ほどだった“的の広さ”はぐっと狭まり、わずか6m四方…「四畳半の部屋」ほどになりました。地球から3億km離れた小惑星への着陸に許される誤差は、わずか数m。いかに精密なオペレーションが求められるかということです。
まさに“ピンポイント”の着陸を可能とするために、チームは小惑星の精密な三次元地図を作成。凸凹の地形を再現しました。津田プロマネによると、数多の作業のなか、最も手間がかかったということです。これを基に着陸行程も精密に計算。前述の高度45mに到達した後は受信用のアンテナが地球を向かなくなるため、地球から修正などの指令はできません(実際にはタイムラグの関係で、高度500mが、指令が間に合う最後のタイミング)。したがって事前のプログラムが重要になります。
(リュウグウ着陸直前のはやぶさ2の動きをシミュレーション(JAXA提供))
具体的にはターゲットマーカーを見ながら2~3mの水平移動、さらに着陸する地形に合わせて姿勢を傾け、岩にぶつからないように角度をつける、その姿勢を変えるためにエンジン(スラスタ)をいつ噴射したらいいのか、タイミングも計算します。
さらに万が一、安全に支障があった場合には、探査機自らが判断して危険回避のため、上昇できるようプログラムが設定されます。ちなみに危険回避で上昇した場合は3月4日の週に再度挑戦するバックアップ期間が設けられています。
着陸時間は「タッチダウン」と呼ばれるがごとく、わずか数秒間。これ以上滞在すると探査機が転倒するなどして制御不能に陥るリスクが高まります。このわずかな間に、探査機から延びた「サンプラーホーン」と呼ばれる筒状の装置から弾丸が発射され、舞い上がった砂ぼこりを採取します。実際に採取できるのか、地球上でシミュレーションも行われました。
「リュウグウの攻略の仕方がわかった。クールにやり切るように、チーム全体の“温度”を下げている状況だ」
先週、JAXA東京事務所で開かれた記者会見で、津田プロマネはこのように話しました。つとめて冷静に…緻密な検討の結果、着陸位置は2.7mまでしかずれないというのが現在の解析で、想定の範囲では工学的な意味で成功するということです。
一方で「本当にその通り動いてくれるだろうか。信じている部分と技術者として疑いを持つ部分がある」とも語る津田プロマネ。当日は「ずっと見ながらドキドキしていると思う」と話します。
3カ月の期間を経てまさに「満を持して」…着陸はまもなく。その成否は…来週判明いたします。(了)