お帰りなさい! 宇宙からの小型カプセル“本体”がお目見え
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「報道部畑中デスクの独り言」(第101回)では、ニッポン放送報道部畑中デスクが、補給機「こうのとり7号機」とともに放出され、今月11日に無事回収された小型カプセルについて解説する。
国際宇宙ステーションから補給機「こうのとり7号機」とともに放出された小型カプセルが、今月11日に南鳥島沖に無事着水、回収されました。その後、ペイロードと呼ばれる荷物の部分(主に実験サンプル)、それが入っていた断熱容器などが公開され、小欄でもお伝えしました。
そして、ペイロードを保護するカプセル本体も、茨城県つくば市の筑波宇宙センターに到着。27日午前、報道陣に公開されました。
「おかえりなさい、よくやった」
もし、カプセルに声をかけるとしたら…田邊宏太開発チーム長と渡邊泰秀チーム長代理はこのように答えました。ついつい“擬人化”してしまうのですが、その姿には大気圏再突入の苛酷な状況に耐えた疲れとともに、重大な任務を終えた清々しさを感じました。先に到着した実験サンプルの状況も良好だということです。
JAXA=宇宙航空研究開発機構によると、大気圏突入の際、カプセルの表面温度は1,700度から2,000度もの高温になったとみられ、アブレータと呼ばれる熱防護材からは焦げたにおいが漂っていました。アブレータの材質は主にCFRP=炭素繊維強化プラスチック、その表面には耐熱テープも貼られていました。テープが残っていたり、アブレータの表面が露出していたりと、焦げ方も再突入の状態によってまばらであることがわかります。
しかし、それでもアブレータが溶けた厚さは想定の半分程度だったということで、本体の破損や亀裂など構造上の問題はなく、内部を高熱から守ることができたということです。内部の“無傷”の金属部分は鈍い輝きを放っていました。
田邊チーム長は「計画通り。自信を持ってうまくいったと思う。(100点満点で)100点以上をあげたい」と、晴れやかな笑顔を見せました。渡邊チーム長代理はアブレータのにおいについての説明で、「試験のときはこのにおいでご飯を何杯でも食べられる」と笑わせましたが、耐熱対策がいかに今回の成功のカギを握り、担当者がのめり込んでいたかをうかがわせる発言でもあります。
また、着水のときは当然のことながらカプセルは海水に浸かっています。本体の到着そのものは公開の10日前のことでしたが、その間にも腐食は進むので、10日間は腐食防止のために、とにかく細部まで水洗いをしていたことも明かされました。今後、詳細な調査も重要で、それ次第ではありますが、渡邊チーム長代理は現状を見る限り「再利用できるかもしれない」と感じたと言います。リサイクルは技術開発のコストダウンにも寄与するため、今後の重要な要素になるでしょう。
今回の再突入時には「揚力誘導飛行」という方法がとられたことは、小欄でもお伝えしました。ゆりかごのように揺れることで揚力を発生させ、「やわらかくそっと降りてくる」というもので、加速度は弾道飛行の8Gに比べ、半分の4G程度に抑えられると言われていますが、飛行状況の分析ではさらに低く、3.5G以下。これは有人宇宙船並みの加速度だということです。カプセルの無事帰還とともに、驚くべき数値だと思います。今回の実証実験は日本独自の有人宇宙飛行に向けた技術開発につながることが期待されていますが、カプセル本体をみて、期待がさらに膨らんだことは間違いないでしょう。
カプセルが置かれたスペースに、私ども報道陣は一目散に駆け寄り、食い入るように目を凝らしました。そのわきには先日公開された、魔法瓶の技術を取り入れた断熱容器なども改めて並べられていました。われわれは取材という“仕事”として接してはいるのですが、様々な困難を乗り越えて初めて打ち立てた金字塔は、人間を惹きつけるものなのだと改めて感じます。(了)