番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、いったん閉店が決定した「まんがの図書館」の経営を受け継ぎ、新たな企画も始め、再建を軌道に乗せた女性店長のグッとストーリーです。
東京・世田谷区、東急田園都市線・三軒茶屋駅前の商店街にある「まんがの図書館 ガリレオ」。蔵書の数は、都内でも最大級のおよそ4万冊。店内は、マンガ喫茶のような個室や仕切りは一切なく、図書館のように、大きな机を囲んでマンガを読む開放的な造りになっています。
この「ガリレオ」を経営するのは、店長の上関久美子さん。
「実は私、創業者じゃなくて、2年前までここのアルバイトだったんです」
「ガリレオ」は1998年に、大阪のある会社が新規事業として始めましたが、おととし2月、採算が取れないことを理由に閉店が決定。それに待ったをかけたのが上関さんでした。
「『ガリレオは閉店、マンガはぜんぶ廃棄処分にする』と聞かされて、頭が真っ白になっちゃって。『だったら私が経営します!』と手を挙げてしまったんです……」
東京・港区で生まれた上関さん。子供の頃からマンガが大好きで、お小遣いやアルバイト代はすべてマンガに費やして来ました。大学卒業後は会社勤めをしていましたが、2008年、親戚の家が空き家になったため上関さんがそこに住むことになり、三軒茶屋へ引っ越して来ました。
「当時はけっこうバリバリ仕事をこなしていて、マンガが唯一の癒やしだったんです」
ある日、三軒茶屋の街を歩いていて偶然見つけた「ガリレオ」。上関さんは足繁く通うようになり、2014年、ストレスのたまる仕事を辞め「ガリレオ」で週3日、アルバイト生活を始めました。
「家賃はかからなかったので、月8万円のバイト代で納豆ごはんを食べて暮らしてました。大好きなマンガが好きなだけ読めれば、それで満足でしたから……」
それだけに閉店の報せを受け、人生の楽しみを根こそぎ奪われるようなショックを受けた上関さん。なんとか「ガリレオ」を存続させようと、上関さんは会社勤めの経験を活かし、経営改善策をまとめ、本社の会長に直談判。普通なら、アルバイトの分際で……と門前払いされそうなところですが、マンガが好きで「ガリレオ」を始めた会長は、上関さんに逢って話を聞いてくれました。
「なんでもっと早く言って来てくれなかったんだね。……分かった、君に任せよう」
上関さんのマンガに対する情熱に胸を打たれた会長は、資金援助も提案してくれましたが、ここで甘えてはまた経営が危うくなってしまうと、上関さんはあくまで自力で再建する道を選びます。
公的制度を調べて資金を借り、店員を半分に減らし、分煙化を進め、本棚の配置も共通項のあるマンガ家同士を並べたり、おススメ本のコーナーを作ったり、独自の工夫を凝らして行きました。自分の給料が出ない月もありましたが、マンガ原作やシナリオライターの仕事を始め、何とか食いつないで行った上関さん。こういった地道な努力が実り、まだまだ厳しい環境は続いていますが、いまは黒字化を実現しています。
もっと「ガリレオ」の存在を地元の人たちに知ってもらおうと、上関さんがいま力を入れているのが「マンガを通じた地域貢献」です。まず最初に始めたのが世田谷区と協力して、引きこもりがちな人たちに、火曜日の午前中だけ無料で「ガリレオ」を開放するボランティア活動。好きなマンガを読んで気分転換したことをきっかけに、人前に出られるようになり、就職して自立する人たちも現れました。
また、お母さんたちを対象に、子供たちの学習に役立つマンガを紹介する講座をガリレオで毎月開催。上関さんが小学校に出向いて、子供たちに読んでほしいマンガを紹介するワークショップも始めました。
現在、上関さんはとても多忙な毎日を送っていますが、大好きなマンガに囲まれて、人と人とをつなぎ、地域にも貢献できる「ガリレオ」という場は何ものにも代えがたい宝物だ、と上関さんは言います。
「最近、週末に親子連れでいらっしゃるお客さんも増えました。親御さんが子供の頃に読んでいたマンガを棚から取って、お子さんに『読んでごらん』と言っている姿を見ていると、本当に『ガリレオ』を続けていてよかったな、と思いますね……」
「まんがの図書館 ガリレオ」
http://galileo-sancha.net〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋2-14-10 2F
電話:03-3411-6906
営業:年中無休(年末年始除く)
■月~木・日曜 10:00~深夜1:30
■金・土 10:00~翌朝5:00
※3連休の祝前日は翌1:30まで営業します
八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50
番組情報
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