福島のご当地ヒーローが、現代を生きる私たちに伝えたいこと
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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第584回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、現在公開中の『ライズ ダルライザー -NEW EDITION-』を掘り起こします。
異色の地方発エンターテインメントが再び東京に上陸した!
福島県白河市の名産である、転んでも起き上がる<ダルマ>をモチーフに、起き上がる<ライズ>という言葉をプラスした名前を持つダルライザーは、2008年に誕生したヒーローです。
身にまとうのは、自分で縫製したお手製のスーツ。特殊能力も圧倒的な能力もないけれど、倒れても倒れても、その経験から“何か”を学び成長し、愛する者を守るために満身創痍で悪に立ち向かう。この異色の等身大ヒーローの活躍を描いた映画が、大きな反響を呼んでいます。
その映画とは、『ライズ ダルライザー NEW EDITION』。2018年2月に都内で限定公開されるや否や、「ご当地ヒーローなんて正直ナメてたが、めちゃ感動した!」「アメコミ映画みたい!!」と、ネットを中心に話題集中。多くの観客が詰めかけた『ライズ -ダルライザー THE MOVIE-』に再編集を施すことによって、愛と感動の本格ヒーロー映画がヴァージョンアップしました。
ダルライザーの産みの親は、原作・プロデューサー・主演を務める和知健明氏。
「もともとダルライザーを始めたのは10年前。自分の地元である福島県白河市の地域活性化のために作りました。きっかけは、自分に子どもが生まれたこと。不景気の波が年々押し寄せて来る昨今、子どもが大きくなったときもこのままだったらどうしよう。もっと町を活気づけたい、そして子どもが安心して暮らせる地元にしたいという思いから、ダルライザーは誕生しました」
各地で開催されるヒーローショーを通じて、地方に活力をという願いと同時に、“普通の人間に何ができるのか”というテーマを発信して来た和知氏。しかしステージだけでは自らのメッセージを伝えられる範囲も限られており、地方衰退の波は年々押し寄せて来ました。さらに2011年は東日本大震災も重なり、大きなダメージを受けることに。
そこで和知氏は、大きなプロジェクトを掲げます。それが、ダルライザーの映画化でした。
「ダルライザーが伝えたいことは『自分で何とかしなさい』ということ。『“独り”で何とかしなさい』、ではなく、『“自分”で何とかしなさい』。それは自分がやりたいことを実現するために、誰かに『力を貸してくれ』と言うことも含まれています。自ら考えて行動する子どもたちが増えてくれれば…、すなわち、転んでも立ち上がって実行し続ける精神を子どもたちに伝えることができたなら、どんな未来がやって来ても大丈夫なんじゃないかと思うんです」
すべての人がヒーローになれる。そう信じて作られた、映画『ライズ ダルライザー NEW EDITION』。ヒーローでありながら、生身の人間。キャストのほとんどは白河市の一般市民。演技もアクションもこなす“スーパー市民”が奏でる物語は、予想を超えたクオリティと熱量で観客を魅了します。
「大切なのは、勝つことではなく負けないこと」。ダルライザーが体現する“あきらめない心”は、様々なことから“立ち上がる(=ライズする)”きっかけを、観る人にもたらしてくれることでしょう。
ライズ ダルライザー -NEW EDITION-
2019年3月9日から池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
原作・プロデューサー:和知健明
監督・脚本:佐藤克則
出演:和知健明、三浦佑介、桃 奈、山口太郎、佐藤みゆき、山﨑さやか、田村 諭、宮尾隆司、赤城哲也、古川義孝、鈴木桂祐、鈴木裕哉、湯本淳人、緑川順子、フスト・ディエゲス、井田國彦
©2018 Dharuriser Planning
公式サイト http://www.dharuriser.com/movie
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/