台湾次期総統選出馬する頼清徳氏の人物像
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月19日放送)にジャーナリストの有本香が出演。台湾の次期総統選への出馬を表明した頼清徳氏について解説した。
台湾の次期総統選に与党民進党の頼氏が名乗り
来年(2020年)1月に予定されている台湾の次期総統選で与党民進党所属の前行政委員長、頼清徳氏(59)が18日、党内予備選への立候補の届け出を提出した。来月の予備選では再選を目指している蔡英文総統(62)との一騎打ちになる見通しだ。
飯田)蔡さんは21日からオセアニア3ヵ国歴訪、その前に予備選への立候補の手続きを済ませる予定です。
有本)これは面白くなったのではないですか。
飯田)この頼さんはもともと行政委員長、これは首相?
有本)そうです。首相をやったのですけれど、その前に台南の市長を二期やっています。二期全部は勤めていなかったかな。そのとき日本にお越しになったことがあって会見でチラッと拝見しましたけれど、この人はカリスマ性があります。すごく人気があって演説も上手い。国内人気とはあまり関係無いかもしれないですが、英語も上手かったですね。この人ははっきりと台湾独立のために自分は働くということを明言していて、台湾ではかなり人気のある人です。だから逆に、蔡さんがこの人を行政委員長に起用したときは驚いたのですけれど。
台湾の議題~中国との関係と台湾内部の改革
有本)台湾はここのところ蔡英文政権も難渋していますが、外に向かう中国との関係はどうするのか、一方で台湾内部の改革をどこまでやれるかということなのです。既得権に切り込んでいますから、これで蔡英文政権も相当傷を負ってしまったところがあるわけです。台湾も前の国民党時代は公務員天国だったのですよ。そういうものにドンドン切り込んで行っていたから、蔡さんとしては非常に厳しかったと思います。そしてもちろん政権運営、行政そのものに彼女は携わっては来たけれど、自分が直接行政のかじ取りをするのは初めてですからね。そこに長けていない部分とか、蔡さんの真面目さとか、そういうところが少し仇になった数年間だったという感じがします。
頼さんに関しては台南という、台湾では非常に独立志向の強い、政治的にも非常に激しいものを持っているところの出身の政治家ですから、期待できると思います。ただどちらも台湾人に言わせれば、台湾人の政治家なのだということです。
飯田)台湾人の政治家。
有本)ええ。だから、どちらが総統になっても台湾のための政治をしてくれることを期待していると、中立的な人も言っています。
台湾と大阪~共通する改革への戦い
飯田)台湾は去年(2018年)の11月に統一地方選挙があって、そこでは国民党が躍進しました。国民党はどちらかと言うと、昔の経緯はありますが、いまは中国と近くてかなり融和的な政党でもある。
有本)そうですね。去年の統一地方選挙の前に台湾に行って、向こうの政治大学で講演をさせていただいたのですけれど、台湾の選挙は日本よりも少し派手なのですよ。
飯田)激しい感じですよね。
有本)激しくて派手なのですね。大分規制はできたのですが、蔡英文政権に対する失望感のようなものがむしろ国民党をディスる形になってしまったことと、国民党側も統一地方選でいろいろな候補者がいますが、台湾の人たちにどのようにアピールするかを大分工夫していました。
もう1つは、台湾もメディアがかなり中国の影響を受けていますね。蔡さんにとっては非常に厳しい。仮に頼さんが民進党のトップを取ることになった場合、それでもそうとうメディアから攻撃を受けるのではないかと想像します。
先ほど大阪の話に言及しましたが、大阪は地方自治ですよね。台湾はそれなりに、一国を成すような政治手腕が求められるわけです。既得権に切りこむ、肥大してしまった行政をどう改革するかは、ものすごく大事なことです。そして大阪の選挙で言うなら、大阪という日本第2位の都市であるはずのところが、年間5,000憶も国から交付税を受け取っている現実を打破する方向性、またはグランドデザインをきちんと描ける人を選ぶことが大事で、遺恨試合をやるだけが良いわけではないです。大阪の人たちにはそこを考えて選挙をして欲しい。
台湾も内政においては、そういう改革をしなくてはいけないところに来ているのです。それで現政権も苦しんでいる。それと同時に中国との関係を、台湾は将来に向かってどうして行くのか決めなくてはいけません。その場合、日本はこの人達をどう応援するのかということを考えなくてはいけない。
台湾危機の可能性~求められる日本の外交力
飯田)全人代が終わったばかりですけれども、かなり攻撃的と言うか、台湾に対してのメッセージは「1つにするのだ」と、場合によっては武力も辞さないということです。
有本)武力行使を排除しないということは年明けから言っていましたから、そうなのだと思います。しかし、今年の全人代はかなり経済政策について言っていましたね。実際に成長率も6~6.5%という修正をしたわけです。中国も本来、台湾どころの話ではないだろうという感じですが、こういうときほど外に強く出るということはありますよね。
飯田)そして内部の求心力を高めると。
有本)あとは、例えば東アジアで東京オリンピックがある。こういう大きなイベントがあるとき、中国は外に向かって激しいことをやりがちなのです。だから台湾危機は近いのではないかと言われているのですけれども、私はここで日本の外交力が求められると思います。夕刊フジのコラムに数週間前に書きましたが、アメリカの台湾への向かい方も、いまの政権で大分変わって来ています。台湾旅行法というものができて閣僚、トップも含めて台湾に行き交うことを可能にした。これを日本も考えるべきだと思います。
飯田)現政権で政務官レベルまでは行けることに。
有本)ええ。これも2000年代始めには、政務官が台湾に行くとなったら大騒ぎになってやめたこともありましたから、少しずつ進歩しているのですね。しかし、やはり日本と台湾はいろいろな形で政治的にもっと交流するべきだし、特に安全保障に関して、中国に対する向かい方の面でも、もう1歩踏み込むときに来ていると思います。
飯田)台湾側は日本に相当期待していますね。
有本)そうですね。私も、蔡さんは非常に好きな政治家ですけれども、頼さんも大いに期待したいですね。
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